第154話 レーザービーム

 敵からも呆れた目線を向けられている私はサクラ・トレイル。そんな目で見られても負けないからね!


「サクラ……後で罰ね」

「なんでよ!?」


 酷い! わざとフラグを立てたのは私だけどフラグ立てなくても倒せてなかったはずなのに!


「無駄なこと言うからだ」

「フザケテないでサッサとカカッテキタラどうダ?」


 私達が話をしてる間に攻撃もできるのにわざわざ声をかけてくるなんて、なんて良い子なんだ!


「殺しに来てる時点で良い子ではないと思うわ」

「正面から戦っても余裕だとなめられてるだけだぞ」

「し、知ってるし」


 心の中のおふざけにまで突っ込まなくていいのに……。気を取り直して氷華を構える。さて、傲慢の欠片はファイアボールを模倣したかな? その場合、狐火、焔魔法のどちらかを捨てると思うけどね。


「ファイアボール」

「よし!」


 豊穣の神デメテルで創ったエリクサー替わりの木の実を食べて回復した傲慢の欠片が打ってきたファイアボールを氷華ではじく。これで予測は合っていたね。今傲慢の欠片が使ったファイアボールは火の適正の持ち主ならだれでも使える初歩中の初歩の魔法だ。私が天の魔法でこっそりと強化したに過ぎない。傲慢の欠片は天の魔法に気付かずファイアボールだけ模倣したため威力の無い魔法しかコピーできなかったのだろう。


「魔法解禁だね」

「そんな器用な真似できるのはお前くらいだよ」

「いやー、それほどでもあるよ!」


 ライアスが珍しく褒めてくれたから素直に受け取る。レオンも姿を消した状態で認識される前に魔法を使えば模倣されないと思うし活路は見えたかな。


「カトレア、ライアスはファイアボールを中心に攻撃、レオンは作戦通りに!」

「「了解!」」


 氷華に魔力を込めて傲慢の欠片に切りかかる。これは魔法じゃないから模倣できないはず……。天の魔法で強化・・することなく氷華の純粋な凍結能力で周辺の空気を凍らせていく。


「オマエよわいのにシツコイ」

「強かったらステータス奪う気でしょう?」

「オマエにそんなカチはナイ」


 力を調整しているとはいえ好き勝手言われるとむかつくね! 内心怒りつつも冷静に劣勢に見せかける。ステータスを奪う価値がないと断言された以上少しくらいなら出力上げてもいいかな?

 少しだけ盛り返し、氷を作りつつ攻撃していく。


「ファイアボール」

「チッ。ウットウシイぞ!」


 外ではライアスとカトレアちゃんの二人が私の指示通りにファイアボールを使っていく。少しでもダメージを稼がないといけないからね。私は傲慢の欠片が回復する時間を与えないように時間稼ぎをしてライアスとカトレアちゃんがダメージを与えていくとしびれを切らした傲慢の欠片が魔法を使う。


怠惰の罪アケーディア

「うっ」


 突如強烈な眠気が私を襲う。ライアスとカトレアちゃんの二人が効果の範囲外によけているのを確認し、合図を出した私はそのまま眠気に体を預けた。


 ―――


「ラ、サクラ。そろそろ起きなさい」

「ん。もう終わった?」

「ああ、傲慢の欠片は消滅したぞ。残滓も残ってないだろう」


 カトレアちゃんの呼びかけに目を覚ますと訓練場の壁が一部崩壊していた。やりすぎちゃったかな。


「サクラ。ここまで威力があがるなんて聞いてないぞ!」

「いやー、倒すためにどこまで威力上げればいいか分からなかったから……てへ?」


 壁を崩壊させた張本人であるレオンに怒られた。壊したのレオンなのに……。


「そういえばローレライは?」

「ローレンな。決闘の時正しく名前を言っていただろうが」

「あれは呼ばれた名前が違うから無効とか言われないようにするためだし……」


 ちゃんと本名は分かってるよ? ただ出会い頭の対応が最悪だったからちょっとした仕返しをしているだけじゃないか。


「一応無事だ。一週間もすれば復帰できるだろう」

「そっか」


 ライアスの指差した方向を見たら焦げて毛先がチリチリ担っている鳥男が伸びていた。結構重症なのに一週間で復帰できるのか。さすが自称最強。


「それにしてもどうやったんだ? 言われた通りの位置にレーザー打ち込んだら派手に吹き飛んで驚いたぞ」

「光を共振させただけだよ」


 もともとこの世界の光魔法で使っているレーザーは光を収束させて放つだけだ。私は氷で作った鏡を用いた共振経路を作り傲慢の欠片の立ち位置の微調整をした。レオンのレーザーが共振経路で増幅されていき威力の増した一撃が傲慢の欠片を吹き飛ばしたのだ。ただの光魔法だと鳥男の体だけが蒸発する可能性があったから氷の中を通過するときに破邪……聖属性を付与してみた。最後眠らされたのは想定外だったから少し焦ったけど無事に調整を終えることが出来て良かった。


「あれか? レーザー光ってやつ。原理知らんのだが」

「私も詳しくは知らないよ。魔法の世界だからなんとなくでもできるかなって」

「「……」」

「?」


 みんな急に黙ってどうしたんだろう。

 三人が一か所に集まってコソコソお話をして頷きあってからカトレアちゃんがこちらを向いて手を腰に当てる。そのまま大きく息をすって……。


「失敗したらどうする気だったのよ!」

「うるさっ!?」


 耳がキーンとした! 爆撃じゃないよね!?


「サクラ? 初めての試みならできるとは限らなかったでしょう? そういう大事なことは先に言っておきなさい」

「あはは、ごめんなさい」


 うんうん。報連相は大事だね。


「反省しているのかしら」

「してるわけないだろ」


 私が頷いていると三人がため息を吐く。私の扱いが酷くない?


「自業自得よ」

「部屋に戻っていてくれ。少し休憩したら迎えを寄こす」


 私が膨れていると三人が私の事を置いて訓練場を後にする。観客席にいた騎士達がてんやわんやで動いて鳥男のことを回収していくのを見送った私は一人寂しく部屋に戻るのであった。ぐすん。

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