第152話 嫉妬対傲慢 決闘<カトレア視点>
訓練場に移動し傲慢な鳥男と相対するのは私、カトレアよ。
サクラが心配そうに見ているけど安心して欲しいわね。絶対にサクラは渡しはしないわ!
天井は空いており、戦うためのスペースの周りを観客席が覆っている。サクラが前に教えてくれたコロッセオに似てるわね。
今はここにいるのは私達に加え、観客席に数人の騎士達がいるわ。自主練習中だったのに鳥男が追い払ってしまったのは申し訳なかったわ。
「では、立会人は俺、ライアスとサクラの二人だ。敗北条件は気絶するか俺達が続行不可能と判断した時、そして降参した場合だ。ただし相手を殺すのは禁止な」
「えー、ローレンが勝った時はアニエス王国の王位を継承し、カトレアが勝った時はローレンは私の事を諦める。……釣り合ってない気もするけど本人達が納得してるので問題なしと言うことで」
サクラが何を賭けているか宣言した途端にザワつく観客席。何人かの騎士が急いでどこかへ走っていったわね。伝令かしら?
「異論は?」
「ない」
「ありません」
「開始!」
ライアスの合図と共に剣を構えて突っ込んでくる鳥男。動きが単調ね。
鳥男の袈裟斬りを斜めに移動しつつ躱して後ろに回り込み、片手を大狐化して背中を殴る。
「少しはやるようだ。だが甘い!」
鳥男は殴られた方向に沿って飛び私の攻撃の威力を殺し、振り向きざまに片手をを振るう。
鳥男の腕の動きに追従して羽が動くと羽根が飛び出て棘のように襲ってくる。
飛んできた羽根を火の魔法で燃やして燃やしきれなかった幾つかは叩き落とした。
「飛ばれたら厄介ね」
もし空を飛んで距離を取りつつ羽根を飛ばしてきたらこちらの攻撃手段が減って大変になるわね。鳥男が
「ダークノヴァ」
「!」
鳥男に魔力が集まるのを感じて横に避けると背後の自慢が黒い炎に包まれた。
「殺す気? 失格になるわよ?」
「俺様がルールを理解していないわけがあるまい! 貴様の降参と引き換えに火を消すつもりだったわ!」
何言ってるのかしら。そんな状況になっても降参する訳無いじゃない。それにしても……私の大狐化を見ているのはずなのに模倣して来ないわね。なんでかしら。
疑問は一先ず横に置いてこちらから攻撃を仕掛ける。狙いは鳥男の羽だ。飛べないようにして機動力を削ごう。影魔法で鳥男の影から槍を作り羽を狙う。
「狙いはいいが残念ながらバレバレだ!」
私の狙いはあっさりとバレ、余裕で躱されてしまう。一々腹が立つ男ね。
「ダークノヴァ」
「シャドーランス」
今度は影の槍を私の目の前に作って身代わりにする。私の焔魔法と同じで視界内にしか炎を作れないみたいね。
「馬鹿の一つ覚えじゃないんだからもっと他の攻撃しなさいな」
「うるさいぞ! ダークノヴァ」
回避の仕方がわかった以上この魔法に苦戦することはない。サクラと模擬戦すると一度使った魔法は全て対処されるから私も頑張って真似てるのよ。制限さえ分かればこっちのもの。だったかしら? ダークノヴァだと目に見えない範囲を起点に出来ないのが制限ね。そろそろこちらから攻撃しましょう。
「狐火」
「!」
使ったのは唯の火の適正があれば誰でも使える基礎の基礎、ファイアボールよ。ただし、闇魔法の幻影で大量に見せかけているけどね。
大量の火の玉と幻影を鳥男に向けて放つ。サクラが狐なら化かすの得意でしょうとか言って教えてくれた魔法。正直全て本物のファイアボールにした方が良いと思っていたけど実戦で使うと幻影を混ぜる意味が分かってくる。本当にあの子の頭の中はどうなってるのかしら。
「くっ」
先に幻影に触れたことで油断した鳥男に本物のファイアボールが当たる。すると全て本物だと思って対応する必要が出てくるため体力を無駄に消費していく。そして少しでも休もうとすると本物のファイアボールに当たるため余裕を持てない。
「くそっ! ダークノヴァ!」
「模倣しないのね」
私の言葉に顔を険しくする鳥男。これは当たりかしら?
「もしかしてダークノヴァ以外の魔法を使えないんじゃない?」
「なっ!?」
私の発言にライアスが驚いた声を出す。サクラは頷いているから既に予想していたみたいね。
「だからどうした! この忌わしい欠片のせいで俺様の持っていた魔法が使えなくなっていたとしても些細なことよ! 俺様は最強の男だからな!」
元々持っていた魔法まで使えないなんて……。でもこれで焔魔法を隠しておく必要は無くなった。
「ダークノヴァ」
「焔」
鳥男のダークノヴァと私の焔魔法が互いに燃やし合う。白と黒の炎が混ざって勾玉みたいね。しばらくして混ざりあった炎は消滅し、次の瞬間大爆発を起こした。
「フレイムウォール、シャドーガード」
咄嗟に炎の壁と影の盾を作って衝撃に備えた。一方の鳥男はまともに食らったのか後ろに吹き飛んでいった。
「勝負あり。かな?」
「だな、これ以上は怪我で済まなそうだ」
サクラとライアスが鳥男を続行不可能と判断し私の勝利となる。中途半端というか不完全燃焼で終わっちゃったわね。
サクラが駆け寄ってきて労ってくれる。カッコよかっただの凄かっただのサクラの褒め言葉を受け取りつつライアスに気になったことを聞く。
「本当にあの鳥男がアニエス王国最強なの?」
「魔法が使えないなら最強とは言えないな。ローレンの売りは早さと立体的な動きだ。魔法の補助を受けていたと思う」
なるほど、本調子から程遠かったということね。それならあっけなかったのも納得……でもなんで喧嘩を吹っ掛けてきたのかしら?
「
突然サクラが魔法を使ったことに驚き文句を言う前に視界が真っ白になった。
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