アフターシナリオ ~獣人国編~
第145話 新大陸へ
クラーケンを倒し、ゲートを使って港町に戻った後、船に乗って海の上を渡っているのは私ことサクラ・トレイルである。
「姐さん! 飲み物は要りますかい?」
「姐さん! 団扇で扇ぎますかい?」
「飲み物は貰おうかな。団扇は必要ないよ」
「了解しました姐さん!」
「何かあったら何時でも言ってくだせえ姐さん!」
そう。既にお察しの人もいるかもしれないが私とカトレアちゃんの二人は元海賊達の船に乗っている。ギルバートはドゥーグさんの所に捕らえられたままだが一部の海賊達はギルバートに脅迫されていただけ、捕虜にも優しく対応していたということで情状酌量の余地ありとして今はドゥーグさんの元で働いている。流石に普通の対応は民の不満が出てしまうため生きていくために必要最低限の報酬しか渡してないみたいだけどね。
そして慕われているというより崇拝されている私達……。どうやらギルバートの支配から助けてくれた圧倒的強者ということで女神様的存在として扱われている。オリディア様の本性を知ってる私からするとそこまで嬉しく思えないのが不思議だ。
「それにしても魔動車はどこに行ったのかしら」
「海底で大破しちゃったかもね」
クラーケンに掴まれた挙句海底深くまで引きずり込まれたら流石に耐えきれないと思う。
「また今度ハカセに頼んで新しい車を作ってもらうかな」
「ハカセに頼むって今度は空でも飛べるようにするつもり?」
「お! いいね! どうせ私くらいしか使えないし海底でも宇宙でも使えるようにして開発しちゃおう!」
カトレアちゃんナイスだね! 空を飛べればカトレアちゃんと一緒に空島と遊びに行けるね! カトレアちゃんが頭を抱えてるけど大丈夫かな? なになに? 冗談のつもりだった? ま、ドンマイ!
そのまま新しい車の構図を考えながら至れり尽くせりの船旅を続ける。カトレアちゃんは暇潰しにと釣りを始めた。大物が釣れるかな?
―――
しばらく海を進み、アニエス王国のある大陸がうっすらと見えてきた頃、私の車の図案が完成した。結構集中して作業をしたね。後はハカセに任せれば良い感じに修正してから作ってくれるだろう。
図案をアイテムボックスにしまって一息つこうとするとカトレアちゃんが飲み物を持ってきてくれた。
「お疲れ様」
「ありがとう。どう? いっぱい釣れた?」
「ふっふっふ。大量に釣れたわ!」
ドヤ顔のカトレアちゃん可愛い! じゃなくて釣果を確認すると船の一角にお魚が山盛りになっている……。
「いっぱい釣ったね……」
「ええ、
「えぇ?」
そういえば海の魔物ってどんな生き物なんだろう。私はクラーケンとクジラしかあったことないな。
カトレアちゃんの釣った魚の山を見てみると体が毒々しい魚や棘だらけの魚、牙の鋭い魚など地球ではありえない魚が多数混ざっている。
「これが魔物達?」
「違うわよ? その魚達は珍味で人気なの。攻撃手段を持つ魚は美味しいって決まりがあるのよ」
もしかして美味しくて狙われるから自衛できるように進化したのかもね。
「じゃあ魔物は?」
「美味しくないから燃やして捨てたわよ」
「さいですか……」
気付かぬ間にカトレアちゃんがたくましくなっていた件。妹が巣立ったみたいで少し寂しい。
「姐さんの白い炎綺麗でしたぜ!」
「姐さんごっつ強かったですぜ!」
ほんと下っ端キャラみたいな話し方するよね……。カトレアちゃんは焔魔法を使いこなしてるようでなによりです。
何はともあれ無事に大陸に到着した。
「止まれ! 海賊船め! 正面からくるとはいい度胸だ!」
無事に……。
「全員取り抑えろ! 女子供も容赦するな!」
無事に……?
「やめてくれー」
「俺たちはもう足を洗ったんだー!」
「姐さーん! お助けをー!」
「どちらが海賊よ!」
どうやら新大陸は最初から波乱に満ちているようだった。
―――
あっさりと捕まり牢屋に入れられた。でも全員モフモフだったから私は幸せだ。
「なんで抵抗しなかったんですか姐さん!」
「脱獄しますか? 姐さん」
「抵抗したら本当の犯罪者になるでしょう? 脱獄も一緒よ」
船員達がアウトローな思考をする中カトレアちゃんが宥める。
「しばらくすれば出して貰えるんじゃない? ライアスとレオンに話が伝わったら出してくれるでしょ」
「気楽過ぎですよ姐さん!」
「そうですよ姐さん! 途中で揉み消されて独断で罰を与えられるんです!」
「心配しすぎだよ……」
「姐さんが楽観的過ぎるんです!」
わいわいとみんなとお話していると外から人が入ってくる気配がする。
「お前は何をしてるんだ……」
「あ! 久しぶり! 王様がわざわざこんな所まで来て大丈夫なの?」
「もっと早く来ると思ってたからな。何かあったのかと思って向かいに来た。まさか牢屋の中にいるとは思わなかったけどな。それと聞きたいことが山ほどあるんですよ。教えてもらえますよね?
「桜庭先輩?」
「あんたのことだよ! 忘れたのか! 自分の前世だろうが!」
「あっはっは。覚えてるよ」
少し話しただけなのに疲れたようにため息をついてるのはライアス・アルパイン。学生時代の同級生で私と同じ日本の記憶を持つ獣王国の新しい王様だった。
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