第143話 リベンジマッチ
狐状態のカトレアちゃんをモフモフしてつやっつやになっている私はサクラ・トレイルである。今日はカトレアちゃんが部屋でぐったりしているので放置して外であるものを探している。
「お散歩デートですね!」
「そうだね。外の魚がもっと小さければ水族館みたいでもっと良かったんだけど……」
今一緒にいるのはアイリちゃんだ。手をつないで二人で歩いている。子供ができたらこんな感じになるのだろうか? 娘にデートと言われて一緒に散歩するのも楽しそうだ。……結婚もしてないのに娘ができるわけないけどね。
「で、何を探してるんですか?」
「んー、壊れた車だよ」
「車? あぁ、サクラさん達が乗ってたやつですね。乗ってここまで来たのでは?」
「それがクラーケンの成体に持ってかれちゃってね。私とカトレアは皮肉なことに敵に助けられたんだけど車だけ離れ離れになっちゃったんだ」
嫉妬の欠片にいざなわれていなかったら死んでたかもしれないよね。死ぬ気はないけど。
「それって見つけたら戦闘になるやつですか?」
「ならないやつですよ?」
アイリちゃんは私の事を戦闘狂と勘違いしてない? アイリちゃんのいる場所で喧嘩を吹っ掛けるわけないでしょう?
「今日はクラーケンの居場所を探るだけだよ。退治するのは明日出発した後だね。試したいこともあるし……」
「試したいこと? カトレアさんみたいな変身ですか?」
「似たようなものだね」
精神世界で自由に動く練習はさすがにできないから別の方法に応用するつもりだ。今のところ考えているのは二つだね。
その後、お話しつつアイリちゃんとのお散歩デートを楽しんだが、クラーケンの居場所を見つけ、暴れてもドメーア王国に被害の出ない場所だと分かったため散策は終了した。
部屋に戻ったらカトレアちゃんが膨れていたけどモフモフしたら泣いて許してくれた。今度はやりすぎ無かったよ?
―――
次の日、三日ほどお世話になったドメーア国を出る。とても濃い三日間だったね……。
「いつでも歌を歌ってあげるからね」
「楽しみにしてるよ」
一昨日、昨日とマジュリーがコンサートみたいに歌を聞かせてくれたけどめちゃくちゃ上手だった。天才って凄いよね。
「またデートしようね」
「「サクラ!?」」
「そうだね。また一緒にお散歩でもしようか」
アイリちゃんの言葉にカトレアちゃんとマジュリーの二人がぐりんとこちらに顔を向けた。ちょっと動きが怖かったよ……。子供の言葉を本気にするなんて二人も初心なのかな?
「むぅ」
「どうしたの?」
「なんでもないよ」
ちょっと膨れていたアイリちゃんだったけど手招きをしてきたので少しかがんでアイリちゃんの所に近付く。
「クラーケンの討伐頑張ってね」
ちゅっ
「ひゃっ」
アイリちゃんが私の耳元で応援した後に軽く耳にキスをしてきた。ちょっとくすぐったいね。
「「ぐぬぬぬぬ」」
歯噛みしているカトレアちゃんとマジュリーをみて首を傾げる。子供相手なのに二人ともどうしたの?
「ふふん」
アイリちゃんはカトレアちゃんに向かって勝ち誇った笑みを浮かべた後マジュリーの手を掴んで宮殿の中に入っていった。
「サクラ」
「ど、どうしたの?」
「後でお話があるわ。聞いてくれるわよね?」
「う、うん」
ニッコリと目が笑っていない笑顔で宣言された私に頷く以外の選択肢は無い。
「あ、あはは。アイリがごめんね。二人とも気を付けていってらっしゃい」
「「お邪魔しました。行ってきます!」」
ジーベットさんやアクレア様に別れを告げ、門番さん達にも挨拶してから宮殿を出る。アイリちゃんは子供でも注意しないとダメだとか油断しちゃダメだとか王都を歩く間にカトレアちゃんに注意されつつ王都を出る。
「そういえばゲートで戻るなら宮殿内でも良かったんじゃないの?」
私がカトレアちゃんの注意を聞き流しているとカトレアちゃんはため息を吐いてから聞いてきた。
「それでもいいんだけど借りは返したくてね。それに魔動車も回収したいし」
「私も頑張るからね」
「カトレアが戦闘狂になった!?」
「なってないわよ!」
さあ、狩りの時間だ!
―――
すでに昨日の内にクラーケンの居場所は分かっているのでクラーケンの元に向かって海底を進む。私は結界と風魔法、雷魔法で空気を作りつつも狐の姿になったカトレアちゃんの背に乗っているためモフモフで快適だ。
少し進むと前方の山が動き始める。
「カトレアいくよ!」
「ええ!」
私が氷華を抜いて氷華の周りに外皮を作る。今までの氷で作った刀身と違い、魔法体であり実体でもある外皮であれば武器を如意棒のように扱うことが出来る。
振りぬく瞬間だけ外皮を拡張してクラーケンを切り刻む。氷で大きさを補強していた時は居合切りができなかったが大きさを自在に変えられる今なら居合切りも連撃も可能だ。
「インフェルノ」
私がクラーケンを切ってヘイトを貯めているとカトレアちゃんが炎魔法? を使った。なにあれ、炎が白いんだけど!?
カトレアちゃんの作った炎は水の中でも消えることなくクラーケンを炙る。私が離れると炎の勢いが増し、私が呆然としている間にクラーケンは黒焦げになった。
「今の何?」
「私の新しい魔法よ!」
どんな魔法なのかが知りたかったのだけど……満面の笑みでブイサインをするカトレアちゃんが可愛いからどうでもいいよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます