第142話 置き土産
無事にカトレアちゃんが正気を取り戻し、後日部屋の中で狐状態のカトレアちゃんをモフモフする許可を得たのは私ことサクラ・トレイルである。いやー、楽しみだなぁ。
嫉妬の欠片の気配も消え、カトレアちゃんの尻尾も一本に戻った。残念、モフモフが減ってしまった。今度は嫉妬の欠片が逃がさないように感知をし続けていたからちゃんと消滅したと思う。……最後の力を振り絞ってカトレアちゃんにとりついていたのかな?
「どうしよう。元に戻れないんだけど……」
私が嫉妬の欠片について考えているとカトレアちゃんが悲痛な声を出す。私なら元に戻せるかな?
「ちょっと待ってね」
「分かったわ」
カトレアちゃんに何が起きてるか天の適正を用いて診断する。うーん。体が魔力で構成されてるのかな? カトレアちゃんの体の外側が魔力で作られた外皮に覆われている感じだね。神経伝達も魔力を介して行ってるから違和感なく知覚ができているんだと思う。なら魔力を操作して外皮を体の内側に引っ込めれば元に戻せそうだね。
「カトレア。感覚をしっかり覚えてね」
「覚える必要があるの?」
「また狐になってモフモフさせてもらうんだから。約束したよね?」
「へ? ……あの時の!? ちょっと卑怯よ?」
「ふっふっふ。言質はもう貰ってるからね。それに狐状態になったら戦闘で素早さだけじゃなくてパワーもある前衛ができるようになると思うよ?」
前衛よりも後衛にいて欲しいけど外皮が魔力でできていればより安全になるし覚えて損は無いと思う。度々モフモフさせてもらうけどね。だってカトレアちゃんのモフモフが全身にあるんだよ? 我慢なんてできるだろうか。いやできまい(反語)。カトレアちゃんのモフモフは全てを導くのだ!
「分かったわよ。頑張って覚えるから元に戻してちょうだい。なんだか落ち着かないわ」
「はーい。えいっ!」
カトレアちゃんの魔力を天の魔法で操って傷つけないように注意しつつ引っ込めていく。便利そうだし私も覚えよう。ただ精神だけで動く練習が必要そうだね? カトレアちゃんはいつの間に精神体で動く方法を習得したのだろうか。
少ししてカトレアちゃんが元の姿に戻った。少し大変だったね。
「どう? 今度は自分の意思で変身できそう?」
「ええ。覚えたくなかったけど変身の仕方を覚えたわ。ほら。片手だけとかもできるわよ」
そういってカトレアちゃんは右手だけ狐の手にして見せてくれた。み、魅惑の肉球が! はぁはぁ。
「ちょっと。女の子がしちゃダメな顔をしてるわよ」
「あぁ、肉球が……」
肉球に寄せられてふらふらと近付いて行ったのに元の手に戻されてしまった。残念。
「サクラさん、カトレアさん。もう大丈夫かい?」
「はい! 大丈夫です!」
ジーベットさん達の事を思いっきり忘れていた。少し気まずい……じゃなくてどうしよう。正気じゃなかったとはいえカトレアちゃん文字通り王族に牙を向いたよね? 二度と海底王国に入れないとかあるかな?
「リーヴィア様の協力ありがとう。幸い怪我人もいないみたいだから今回暴れた件は不問にするよ。ただし、その代わりにサクラさんの活躍に対するお礼もなしにするね。さすがにお咎めなしどころか報酬まであげると国民に顔向けできないからさ」
「いえ、寛大な対応ありがとうございます」
許してくれたジーベットさんにカトレアちゃんと一緒に頭を下げる。カトレアちゃんがばつの悪そうな顔をしているけど私にとっては報酬なんてどうでもいい。なぜなら! これから!! モフモフが待っているから!!! むしろカトレアちゃんが断りづらくなるからナイスな対応だよね!
「アイリちゃん、リヴィ様、マジュリー、ごめんなさい。正気じゃなかったとはいえ攻撃するなんて」
「いいですよ。無意識の内に私から攻撃を逸らしてくれたじゃないですか」
「もともと私達が取り逃がしたアレが原因みたいだし気にしないわ。むしろ私達こそごめんなさい。カトレアには悪いことをしたわ」
「うんうん。全員怪我一つ無かったし問題なしだよ!」
私が妄想にふけっている間にカトレアちゃんがみんなに謝罪している。無事に許してもらえたみたいだし良かったね。
「サクラさんとカトレアさんはもう一泊していきますか? もう夜遅いので今から出ていくわけにも行かないと思いますし」
「そうですね。朝からいろいろあって大変だったので今日はゆっくりして明日発とうと思います」
「分かりました。今日は神殿が役目を終えた記念に夜の食事は豪勢なものにしましょう」
「やった! あ」
豪勢なご飯と聞いてアイリちゃんが小さく喜びの声をあげる。親娘仲も良好みたいで良かった。
お祭りのような食事を終えて部屋に戻る。ふっふっふ。これからが今日の本番だよ!
「サクラ? 目が怖いんだけど……手加減してよ?」
恐る恐る上目遣いでお願いしてくるカトレアちゃんにぐっとくる。
「分かったよ。遠慮なくモフるね!」
「何も分かってないんだけど!?」
そう言いつつも狐状態になってくれるカトレアちゃんが可愛い。カトレアちゃんの周囲に魔力があふれ出して外皮のように狐の姿を形作る。
「モフモフだー!!」
狐の姿になったカトレアちゃんを見てテンションが天元突破した私は次の日までカトレアちゃんをモフモフし続けた。
カトレアちゃんがどうなったかって? ……出発が次の日に延びたとだけ言っておくよ。あはははは……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます