第141話 カトレアの戦い 3<カトレア視点>
ズルいズルいズルい……。
頭の中にずっと同じ言葉が駆け巡る。そんなことを思いたい訳じゃないのに、私が私じゃ無いみたいに嫉妬の感情が私の心を支配する。
サクラと隣に立てるのがズルい。サクラに頼られるのがズルい。期待されて期待に答えられるのがズルい。サクラに認められているのがズルい。背中を預けられるのがズルい。
頭がふわふわする。上手く考えが纏まらないわね。
―――
しばらくして視界が開ける。ここはどこだったかしら。サクラはいないの?
もやもやした頭のまま部屋を出て廊下適当に散策する。サクラはどこにいるのかしら。早く遊びましょう? 他の人と遊んでいたら嫌よ? 私を悲しませないでね?
「カトレアさん? もう大丈夫なんですか?」
「…………」
声をかけてきたこの子は……アイリちゃんね? 私のサクラにちょっかいをかけようとした悪い子よ。私の中の嫉妬心が強くなる。力が強くなった気がするわ。
「カトレアさん? え? その姿は? へ? 狐? きゃっ」
火の魔法を使って当てようとしたけど少し狙いが逸れてしまった。失敗したわ。悪い子は消さないといけないのに……。
「貴様! 妹姫様に何をしている!」
沢山の邪魔者が来た。さっさと排除しないと……。この人達は悪くないのに? いえ、悪い子を消す邪魔をする人は同罪だよね? いつものように突進して残った相手を攻撃すればいいわよね。あれ? 私が突進したところで大したダメージにはならないわ? 悩んでいる間に捕らえられてしまった。どうしましょう。……はっ! このままで平気ね! きっとサクラが助けてくれるわ。楽しみね。
王の間まで連行され、ジーベットさんの前で跪かされる。あら? ジーベットさんも悪い子を庇うのね?
ジーベットさんとアイリちゃんを睨みつけているとサクラがやってきた。さあサクラ! 私の事を助けてね!
…………? なかなか助けてくれないわね。しかも私よりも先にジーベットさんと話すなんてなんのつもり?
サクラはジーベットさんと少しお話した後に私の方を向いた。やった! やっぱりサクラの相手は私よね! 一緒に悪い子をやっつけましょう!
なんで? なんでよ! なんで私じゃなくてそこの
ふふふ。さすがサクラね。目が合っただけで力が湧いてくるわ。私を取り押さえてる人を振り払い元凶の毛玉を攻撃する。サシの勝負なら
しばらく毛玉とお魚の二人と戦う。お魚の歌を聞くと少し動きにくくなるわね。でも負けないわよ。サクラも
ぞわっ
サクラ? 嫌な予感がしてそちらを見るとサクラが近付いてきていた。共闘してくれる……雰囲気じゃないわね。何かその手つきに見覚えがあるような? 頭の中で危険信号が点滅する。あの手はやばい。何かわからないけどとりあえずやばい。じりじりと下がる私と歩調に合わせて近付いてくるサクラ。積極的なことは嬉しいのだけど時と場所を選んでほしいの。ね?
とんっ
いつのまにか壁際まで下がっていたらしい。これ以上後ろに下がることが出来ない……。それでも近付いてくるサクラを見て冷や汗が出てくる。
「ぅひゃん」
サクラが私の尻尾の内の一本に思い切り抱き着いてきた。ちょっと! 尻尾は敏感なんだから止めて頂戴! ここで突然脳裏に過ったのは止めてと言っても終わらないモフモフ地獄に気持ちよさに腰が抜けた記憶。学園にいた時にも同じことがあったわね。……不味くない? このままじゃ私は人前であられもない姿に?
「サクラ。やめぅひゃう」
「あ、正気に戻った?」
「戻ったから。戻ったから止めて。人前だから」
「なら部屋に戻ったらモフモフさせてくれるんだね?」
「いいわよ。分かったからとにかく止めて頂戴」
「やったー! 狐状態のカトレアゲットだぜ!」
とんでもないことを約束させられた気がするけどうまく頭が働かないわ。
「あれ? サクラ縮んだの? だから拾い食いはダメだっていったでしょう?」
いつかはやると思っていたけど変なものを食べちゃったのね。
「カトレア。逆! 逆! 私が縮んだんじゃなくてカトレアが大きくなったの!」
「大きくなったどころじゃないけどね……」
私が大きくなった? 確かにリヴィ様も小さくなってるしサクラの勘違いじゃなさそうね。
「そういえば話しにくい気がするわ」
「本当にカトレアなのね。巨大な狐にしか見えないわ……」
「え? 巨大な狐?」
マジュリーの言葉に驚いて見渡すと一斉に全員が頷く。
え? 私本物の狐になっちゃったの?
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