第130話 宮殿前の一幕
マジュリーと共に宮殿の正面まで行くと二人組の門番さんに止められたのは私ことサクラ・トレイルである。ま、当然だよね。
「何者だ! ここは宮殿。許可なく立ち入ることは許されていない」
「ですよね! では帰ります! ぐぇ」
Uターンして帰ろうとしたらマジュリーに服を掴まれて首が締まった。変な声出たよ……。
「あなた達! 私の顔に見覚えはないの?」
マジュリーが自信満々に門番さんに声をかける。しかし、門番達は顔を見合わせると首を横に振る。
「知らんな。不審者を中に入れることはできない。丁寧に接している内におかえり願いたい」
「なによー! 私パパの娘よ!? 一応この国の姫なんだけど?」
マジュリーが騒いでるけど門番達は眉を顰めるだけだ。そもそも向こうからすればパパって誰だって話だよね。
「マジュリー……。私達に嘘ついていたの?」
「そんなわけ無いじゃない! リヴィもいるし門番さんも私のこと知っていたでしょう?」
「我々は知らないと言ってるはずだが?」
ドメーア前にいた門番さんと混ざっていて宮殿前の門番さんが困惑してるね。
うん。私とカトレアちゃんはマジュリーが本物のお姫様だって知ってるよ? でも弄りたくなっちゃって。
「あ! サクラ笑ってるわね! バカにしてるでしょう!」
「いーや。バカにはしてないよ。面白がってるだけだし」
「そう。なら良い……わけないでしょうバカ!」
打てば響くの面白いね。今までいなかったタイプだ。でもそろそろ真面目にしないと怒られちゃうかな? ……門番達が。
「いつまでも巫山戯てるなら力づくで追い出すぞ!」
門番達も痺れを切らしてきたから手を貸そうかな。そうしないと力づくで追い出した後でマジュリーの正体を知った時の門番達が可哀想だ。
「あー、門番さん達は宮殿に勤務し始めたのいつから?」
「なんだ? 五年前からだが……」
「この子マジュリーっていって十年前から地上に勉強? 遊び? に行ってたこの国の姫なの。顔を知らなくても仕方ないけど陛下から聞いてない? 娘二人に旅させてるとか何とか」
私の言葉に顔を見合わせてから考え出す二人。少しして片方が話し出す。
「そう言えば勤務してすぐの頃に聞いたことがあるな。娘二人に地上を見せていると。あくまで噂程度の話だったが……」
「いや、どちらにしろ話にならん。人魚の娘は一人だけだ。人数も種族も合っていない」
「あなたが言ってることはもっともだけど私達は騙すために来たわけじゃないから合っていなくて良いのよ。妹のアイリちゃんはまだ地上にいるわ。私とサクラの二人は方向音痴のマジュリーを連れてきただけよ」
「うん? そうなると辻褄は合うが……」
うーん。二人とも頑固だね。二人で話し合いを始めたが今一歩足りないみたいだ。門番としてはそれくらいがちょうど良いのかもしれないけどどうにかして説得できないかな? 悩んでいるとカトレアちゃんが小声で話しかけてきた。
「サクラ。ドゥーグさんの真珠を見せたら信頼を得られないかしら」
「なるほど。試してみる価値はありそうだね」
早速カトレアちゃんのアドバイスに従ってドゥーグさんから貰った真珠を見せる。
「あの。これで信じて貰えますか?」
「それは! ドゥーグ先生の! ……分かりました。流石に何も知らない我々が通すわけには行かないので先輩を呼んできます。十年以上前から勤務してる人ならマジュリー様を知ってる可能性が高いんですよね?」
「そうね。それで頼むわ」
良かった。対応もかなり優しくなったね。……ドゥーグさんは何者なんだろう。気になるけど無事に中に入れそうだから……あれ? 必死になって中に入る必要なかったんじゃ……。なんでこんな流れになったのかな?
「サクラは単純だからしかたないわ」
「どういうこと?」
「気にしなくていいわよ」
「そっか」
カトレアちゃんが言うなら大丈夫だろう。
しばらく待っていると先輩を呼びに行った門番さんがガチガチになりつつ偉そうな人を連れてきた。近衛兵とかかな?
「パパ!」
「マジュリー!」
パパ? ……国王が来たの? 門番二人を見ると冷や汗たっぷりで顔が白くなっている。マジュリーは全く気にしてなさそうだけど本物の姫を疑ったことに血の気が引いているみたい。
「門番さん。あなた達は自分の仕事をしっかりとしただけ。それはマジュリーも分かってると思うよ。だから心配しなくても大丈夫。だよね? マジュリー?」
「ん? そうそう。大丈夫よ」
……。話を聞かずに返事したな? どちらにしろ言質は取れたからいいよね。
「ということで言質も取れたのでご安心ください」
「むしろ別の理由で安心できなくなったな」
「あはは……」
迂闊に言質取らせる姫だと安心できないよね……。でも門番達の顔色も元に戻ったから良しとしよう。後でマジュリーにはお説教しないと。どう説教するか考えていると国王とマジュリーの話し合いが終わったらしくこちらにやって来た。
「サクラさん。カトレアさん。娘を連れてきて下さりありがとうございます。宿をお探しだとか。ぜひ
「えっと、ありがとうございます? ですが「そうかそうか! マジュリーのお友達が来てくれるなんて嬉しいね」……」
断って魚涙停に泊まろうと思ってたけどめちゃくちゃニコニコしてる国王様を見ると断りにくい。カトレアちゃんを見ると首を横に振っている。ふぅ。せっかくだし断るのは諦めて竜宮城もどきの宮殿を楽しむとしますか!
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