第128話 人魚の鱗
リヴィの後に続いて海底を進む。襲ってくる魔物達は数が少ない代わりに深海ならではの進化なのか皮膚が靱やかで打撃も斬撃も効きにくかったため魔法で対処していく。しばらく進んでいくと前方に光が見え始めた。
「リヴィ。あの光は?」
「海底王国から出てる光よあの中であればサクラのヘンテコ……変……規格外な魔法が無くても呼吸ができるわ」
神霊からも規格外と言われる私は一体なにものなんだろう……。セレスみたいな神霊の方が余程ぶっ飛んでると思うんだけど。
「サクラもセレスも大差無いわよ」
私が納得してないことに気付いたカトレアちゃんがツッコミをしてくる。うーん。セレスに追いついてきてると考えればいいかな?
「ここまで来れば十分でしょう。私は姿を隠すわ。あとはマジュリーについて行きなさい」
そう言うと姿を消すリヴィ。あぁ犬掻きならぬ猫掻きしているリヴィも可愛かったのに……。
「リヴィありがとう。そしてマジュリーはどこに行こうとしてるの!」
リヴィの案内が無くなり早速光が見える方向の反対側に進み始めたマジュリーを止める。
「え? ちょっと眩しかっただけよ? 間違えたわけじゃないからね? ちゃんと方向分かってたからね?」
「あー。はいはい。そういうことにしてあげるから真っ直ぐ進んでください」
「ちょっと! 信じてないでしょう! 本当だからね!」
信じられる要素はないよね? とりあえずマジュリーの背中を押しつつ海底王国に向かう。半球状に広がる空気のある空間に入り、私は魔法を解除する。すると門番らしき男性が二人こちらに向かってきた。
「あなた達は? おや? マジュリー様を連れてきてくださったのですね! ありがとうございます!」
マジュリーが帰ってきて喜んでいる……。もしやアイリちゃんのところにいなくなったのってただの迷子? ずっと神殿にいたって事はないよね? リヴィがいるから方向音痴でも……ダメだ。リヴィが人前に姿を現さない以上。直前まで案内しても迷子になるのか。神殿にずっといた可能性が高そうだね。
「マジュリー様お帰りなさいませ。十年ぶりでしょうか。アイリ様との地上での生活はいかがでしたか? ところでアイリ様がお見えにならないようですが……」
んんんんん? どういうことかな? マジュリーを見ると気まずそうにモジモジしている。何となく全体像が見えてきそうだぞ?
「えっと、マジュリーとアイリちゃんのご両親は今どちらに?」
「陛下と妃殿下ですか? 宮殿にいらっしゃいますが……。なにか御用でしたか?」
なるほどなるほど。…………マジュリーのおバカ!!
「いえ、特に用事があるわけではないんですが……。アイリちゃんは今ドゥーグさんと一緒にいます。……ドゥーグさんは分かりますか?」
「ドゥーグ様の所に。では安心できますね。一応証拠のようなものはお持ちか確認したいのですがよろしいですか?」
証拠……。ドゥーグさんに貰った真珠とアイリちゃんから貰ったお守りを見せればいいかな?
「これらでも大丈夫ですか? 真珠はドゥーグさんから、鱗でできたお守りはアイリちゃんから貰ったのですが……」
「…………」
返事が帰ってこないので門番さんを見てみると口をあんぐり開けて目を見開いている。
「そ、そんな……。アイリちゃんが……」
絶望した声を出すマジュリーにびっくりする。
「アイリちゃんは生きて「アイリちゃんの初めてが奪われた!」いいかたぁ!」
マジュリーが突然変なことを言い出したため思わず大声を出してしまった。初めてを奪うって何言ってるの?
「あ、えっと……」
「サクラです」
「ありがとうございます。サクラ様は人魚の風習をご存知ないのですね。いえ、魚人族以外には縁のないことなので無理もありませんが……。そのお守りに使われているのはアイリ様の鱗なんです。それも初めて生え変わった時に抜けた鱗が使われています」
アイリちゃんの鱗? そっかマジュリーの妹ってことはアイリちゃんも人魚だったのか。……食べたら不老不死に、いやそれは人魚の肉か。鱗は食べたら人魚になるんだっけ?
「生え変わりで抜けた鱗は大変希少なもので基本的に家族か心を許した友人に渡されます。しかし、一番最初に抜けた鱗は特別な魔力が込められていて人に渡すことは基本的にしません。するとしたら愛した人か命の恩人か……。どちらにしろ特別な事なのです」
「アイリちゃんからはなにも聞いてないよ!!?」
アイリちゃん! 会ったばかりの私に渡していいものじゃないでしょう! それともまだ幼かったからなにも知らずに渡して来たのかな?
「あ、もしかしてマジュリーが問答無用で攻撃してきたのって……」
「サクラからアイリちゃんの魔力を感じたからよ……。まさか恋仲だったとは……。私は認めませんからね!」
「サクラ!? まさかのロリコンだったの!?」
「違うよ!? カトレアも変なこと言わないでね!? アイリちゃんも知らなかっただけじゃない?」
「なに? 私のアイリちゃんに不満があるわけ?」
私、知ってる! これめんどくさいやつだ!
「えっと、そうじゃなくてね?」
「つーん」
口でつーんって言う人がどこにいるんだ! ……放っておこう。
「サクラ。鼻の下が伸びてるわよ?」
「伸びてないよ!? ややこしくなるから適当なこと言わないでね?」
あれ? いつの間に私がツッコミ役になったの? ……あ、いつもの事だったか。
「違うわよ」
「むぅ」
いつもの様子に戻ったカトレアちゃんにツッコミをされた。納得いかないけどカトレアちゃんが正気に戻ってくれたから良しとしよう。
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