第127話 マジュリーとリヴィ
謎の神殿で
「ちょっと落ち着いて。話を聞いてくれる?」
「問答無用!」
槍に水を纏ってマジュリーが攻撃を仕掛けてくる。あれ? マジュリーって補助や回復専門で攻撃に参加してなかったよね?
「待って待って。リヴィ! マジュリーを止めて!」
私から攻撃する訳にはいかないからマジュリーの
「へぶっ」
「…………」
「…………」
「…………見ないで」
私の前まできたマジュリーが目の前で転んだ……。顔を真っ赤にしてプルプル震えている。ドジっ子かな? じゃなくて。
「大丈夫?」
とりあえず光の魔法でマジュリーの怪我を治す。いや、怪我はしてないんだけどね? 目の前で転ばれたから気持ちの問題で……。
「あ、ありがとう。あなたの事を誤解してたみたいね。ちなみに今のはあなたの人間性を確認するためにわざと転んだだけで足がもつれちゃったわけじゃないからね!」
涙目になりながらめっちゃ早口で言い訳してる。
「なるほどポンか」
「誰がポンコツよ!」
「自覚あるのね……」
ボンコツじゃないのに……。ってガックシしてるけどあなたはポンです。なんて思いつつも口には出さず、敵意の消えたマジュリーと改めて話を聞く……前に現実に戻ってきて貰わないと。
「マジュリー。マジュリー。戻っておいで」
「うぅ。もういや。早くアイリちゃんに会いたい」
「ほらポン! 早く戻ってきなさい!」
「誰がポンよ! はっ!」
なるほど。マジュリーの扱い方が分かったね。そしてやっと現実に戻ってきてくれた。
「マジュリー。リヴィとは契約してないの?」
「リヴィ? 契約してるわ……じゃなくて神霊は人前に姿を見せないんだからね!」
リヴィの事を隠そうとしてるけど隠せてないね……。
「そっか。先に自己紹介した方が良さそうだね。私はサクラ。セレスのパートナーだよ。こっちはカトレア。私の一番の親友」
リヴィの気配がする場所が一瞬揺れる。リヴィに向かって手を振ると諦めたらしくため息をつきつつ青色の猫姿を見せてくれた。
「私の場所が分かるってことは嘘じゃ無さそうね。初めまして。セレスは今どこにいるの?」
「セレスは旅に出てるよ。詳しい話はオリディア様に聞いて欲しいかな」
「お母様の名前まで……。あなた何者?」
「ただのエルフだよ」
カトレアちゃんが抗議してるけど無視しよう。私はいたって普通のエルフです!
「それで? 私に用があるの?」
「いや? クラーケンに襲われて迷子になったら二人に出会しただけで何か用がある訳じゃないよ」
「ならなんで呼んだのよ」
なんでって聞かれると……。
「せっかくマジュリーと会ったからリヴィにも会いたいと思って」
「リヴィはあげません!!」
「ぐえっ」
マジュリーが突然リヴィを抱きしめる。今リヴィから聞こえちゃいけない声が聞こえてきたんだけど……。
「取らないわよ。それよりも近くの街まで出る方法はないかしら。乗ってた車もクラーケンに持ってかれて帰る方法が無いのよ」
私達に任せると話が進まないと判断したカトレアちゃんが話を進める。
「街ならマジュリーに案内させるわ。話を聞かずに人に武器を向けた罰よ」
「そんな……」
ショックを受けてるところ悪いけど一つだけ確認したい。
「マジュリーは方向音痴じゃないよね?」
「もちろん!」
「…………」
元気よく返事をしたのはマジュリー。何も言わずにそっと顔を背けたのはリヴィだ。
「…………リヴィに案内して欲しいな」
「仕方ないわね。代わりにあなたの秘密を話しなさい」
「秘密?」
「魂が変なこと。それからなんで私がマジュリーと契約してると知っているのか」
あぁ、カトレアちゃんもセレスも私の前世について知っていたから気にして無かったし、マジュリーはポンだからなにも理解してなさそうだけど普通は気になるよね。
「いいよ。隠してることでも無いし。実は……。」
―――
「なるほどね。驚きではあるけど理解したわ」
一通り説明すると驚きつつも納得してくれた。マジュリーは話に付いて来れなかったのか船を漕いでいる。
「今日はもう帰る時間だし早速案内するわ。マジュリー起きなさい」
「はっ! 寝てないよ! 起きてるよ!」
……ポンじゃなくてアホの子かもしれない。
そのまま神殿の外に出て、空気のある領域を出ようとしたところで一つの問題に直面した。
「二人は海の中で呼吸できるの?」
「「あ!」」
まさかマジュリーに指摘されるとは……。
どうしようかな? 雷魔法で水を電気分解して酸素と水素を作り、水素だけアイテムボックスに取り出せばいけるかな?
「ちょっと待ってね」
空の魔法で私達の周囲の空間を切り取り空気のスペースを確保する。酸素濃度が濃くなるとそれはそれで毒になるから水から酸素を取り出す量を調整する練習を少しして……。いや、天の魔法で自動調整にした方が楽かな? あと海の中は真っ暗だから光の魔法で光源を作って…………よし。これで大丈夫だろう。
「準備できた……よ?」
水中での移動に目処がつき三人の方を向くとカトレアちゃんはため息をつき、リヴィは目をまん丸にしてマジュリーは……ぼーっとしてるだけかな?
「何今の? ……いえ、さすがセレスの契約者って所かしら。考えるだけ無駄ね」
リヴィが思考を放棄した。どうしたんだろう?
「サクラは気にしなくていいわ」
「分かった」
カトレアちゃんが言うなら気にしなくて大丈夫なのだろう。
移動の準備を終えた私達はリヴィの案内に従って真っ暗な海へと出発するのであった。
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