第124話 海賊
イカパーティーの翌日の午後には私達の家。それも豪邸が建っていて驚いたり設置された家具から海の香りがしていたりゲートの出口にできるように魔法をかけたりしつつ一日が過ぎ、ギルバードたちが帰ってくる予定の日になった。
今、私とカトレアちゃんの二人は砂浜に立ち、海賊船を待っている。領民の話を聞くと大きな船が一隻と小さな船が数十隻あると聞いている。
ギルバードの捕縛と領民の救出をしないといけないからすべての船を壊す安易な方法が取れないのが残念だ。楽できないね。
「あの影が船かしら。クラーケンほどではないけど大きいわね」
「そうだね。うーん。男性はメインの船にいるみたいだけど女性はいろんな船にばらけているみたいだね……」
「救出も一苦労ね。私が女性を救出して回るわ。ギルバードの捕獲と男性チームの救出はサクラ。お願いね」
「任せて! 女性が囚われていない船は先に消しておこうか」
そうすればカトレアちゃんもどの船に助けが必要か分かりやすいもんね!
船が近付いてきたため水の魔法を使ってウォーターカッターの要領で人質のいない船を切断していく。中心を真っ二つにした後、船に穴をあけておいたので勝手に沈んでいくだろう。
「えぐいわね……」
カトレアちゃんが引いてる気がするけどそんなことは無いだろう。
「残ってる船に女性が囚われてるからね。後はよろしく!」
「ええ。任せてちょうだい」
カトレアちゃんを連れてショートワープで船のマストの上に立つ。甲板は良い感じに混乱してるようだ。カトレアちゃんが影魔法で気配を消しつつ他の船に行ったのを見送ってから船首に降り立つ。
「貴様は誰だ! 船をつぶしたのは貴様の仕業か?」
さっそく偉そうな男が声をかけてくる。……そういえばギルバードの姿知らないや。
「ギルバードを出しなさい。他の船と同じ運命をたどりたくなければね」
私の正体については無視し、後半の質問に暗に答える。にやりと笑ってやれば船員たちのこめかみに血管が浮き出ているようだ。……あれ? 私の方が悪者っぽい?
「そいつは殺すなよ? 生きたまま可愛がってやる」
質問してきた人が命令を下す。この男がギルバードでいいのかな? ギルバード(仮)以外の動き出した人達の体の表面を凍結させて動けなくする。もちろん魔法が使えないように魔素は不活化させている。
「お前らどうした! 小娘一人さっさと捕らえろ!」
「はぁ。貴方たちに気付かれずに船を多数沈めてここに顔を出してあげたのに相手の力量も量れないのかしら? 無能が上に立つと下は苦労するわね」
「誰が無能だと? 貴様! この俺様をギルバードだと知った上での発言か!!」
馬鹿にして煽るとあっさりと名前を自白してくれた。煽り耐性低くない?
「ふっ。ごめんなさいね。井の中の蛙だったとは思わなかったわ。どうするあなた達。この無能の下で一緒に破滅の道を歩むか、諦めて捕まって今までの罪を償うか。好きな方を選んでいいわよ。私としてはどちらでも構わないし」
船員に向かって質問を投げかけつつ魔法を解く。魔法の不意打ちができない以上解放したところで敵じゃないからね。すると一部の側近らしきもの以外は武器を捨て降伏した。
ギルバードはその様子を見て怒りに震えている。
「お前たち。覚えておけよ。あの小娘を始末したら次はお前らだからな」
地を這うような声を出しているけど関係ない。さっさと捕まえて終わりにしようか。
残った側近たちが攻撃してきたので全員氷華で切って捨てる。つまらぬものを切ってしまったね。
「な、な、俺の側近はここらで一番の腕前なんだぞ……それをこうも容易く倒すとは……」
「言ったでしょう? 相手の力量も量れない愚かなギルバードさん? 大人しくお縄についてもらうわよ?」
「何が目的だ。金か? 女……いや男か? なんでも用意する。俺の下についぎゃーー」
「うるさいわ。さっさと黙って」
イラっとして氷華で少し撫でたら悲鳴を上げ始めたから。意識を刈り取った。尋問は後で良いよね。
「さて、降伏したみなさんは抵抗しませんよね?」
ニッコリと笑いかけると全員首が取れるんじゃないかと思うほど首を縦に振ったため攻撃はせずに縄で腕を縛る。
「もう終わっちゃったか」
「ドゥーグさん!? どうしてこんな危険な場所に!?」
「微力ながら僕も助けになるかと思ったんだけどね。もう終わってるとはさすがサクラさんだ。何か手伝うことはあるかい?」
「では捕虜の運搬と人質の救出をお願いします。領主様の方がみんなも安心するでしょう」
「そうだね。カトレアさんはどこだい?」
カトレアちゃんは……ちょうど来たね。
「さすがサクラ。早いわね。ドゥーグさんもいらしていたんですね」
「お、カトレアさんもありがとう。女性たちを保護してくれたのかい?」
「ええ。船員も全員戦意を喪失しているし後は領主様の好きにしてください」
無事にギルバードを含む船員を捕獲し、人質も救出して領主様に引き渡した私達は港町へと戻った。
領民たちの熱烈な歓迎を受けつつ帰還し、家族と離れ離れになっていた人質達は家族と合流でき、その日の夜は再度盛大なイカパーティーが開催された。家族と合流できた嬉しさからかギルバードの支配から解放された嬉しさからかパーティーは三日三晩続き、私達が渡したクラーケンは全て領民達の胃の中へと納まった。
……みんなイカ食べ過ぎじゃない? 私はさすがに飽きたよ?
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