第121話 領主の救出

 カトレアちゃんと部屋に戻り酒場のマスターから教えてもらった情報を整理するのは私ことサクラ・トレイルである。


「領主様呪われてるのかな?」

「それか毒でも盛られたのかも知れないわね」


 まあ、どちらにしても私が光魔法で助ければいいだけか。


「それでも領主様が悪い人じゃなさそうで良かったわ」

「そうだね。助ければその後も動きやすそうだし明日領主様、明後日クラーケン、ギルバードたちが帰ってきたら海賊退治だね」


 あとは……捕まってる人たちの居場所が気になるね。普通に考えると船の中だけど町一つ分の人数が乗れる大きさだとは思えないよね。それとも船の数が多いのかな?


「今日は早めに寝ましょうか」

「そうだね。明日以降に備えようか」


 思ったよりも強行軍になりそうな気配を感じつつ私は眠りについた。


 ―――


 次の日、起きると早速準備をして領主の屋敷へ向かう。屋敷の前にはガラの悪いチンピラたちがたむろしていた。


「あのチンピラたちって……」

「十中八九ギルバードの手先だよね。この調子だと中にもいそうだね。何かあった時にすぐギルバードと連絡ができるように手配されていそうだね」


 うーん。どうしようか……。領主の相手をしている間にギルバートに来られたらいやだな。何か手は……。あっ! ギルバードを呼ばれても一日で到着することは無いよね。つまり暴れて見つかってもさっさと領主様を助けてしまえば問題なし。多少警戒されるかもしれないけど今の私達・・にとっては誤差だろう。


「おうおう、姉ちゃんたち。上玉じゃねえか。こんなところになんのようだ? 自ら攫われにきたのか~?」

「俺そっちのちびちゃんで、ケモいのはお前に譲るよ」

「このロリコンが。ま、ありがたく狐の嬢ちゃんは俺がもらうかひでb」


 門の前に立った瞬間に下衆なことを言い出したチンピラをとりあえず殴った。これで一人。


「は? こんな嬢ちゃんにやられるとか油断しすぎだあべs」


 カトレアちゃんも一人殴り倒して二人目。氷華を抜いた私と火を纏わせた手で殴るカトレアちゃんの二人でそのまま庭先にいたチンピラを一掃する。


「弱いわね」

「うーん。カトレアが強くなったんだと思うよ?」

「そうかしら」


 カトレアちゃんはすまし顔をしつつも尻尾がパタパタ揺れている。いやー、いくつになっても可愛いね。ちなみにカトレアちゃんは学園を卒業して私が故郷でまったりしてる間に母に弟子入りしていた。私は猛反対したけどカトレアちゃんは意見を変えず何度も死にかけながら強くなってきたのだ。


「……やっと一緒にサクラと戦えるわ」

「どうしたの? 早く中に入ろう?」

「ええ」


 私が屋敷の玄関についてもカトレアちゃんがまだ余韻に浸っていたため呼ぶと直ぐにやってきた。


 警戒しつつ扉を開けると誰もいない? いや、魔力感知で人が隠れているのは分かるけど領主様らしき反応がある二階の部屋に集まってる。……とりあえず侵入のチャンスかな? 中に一歩踏み込む。


「サクラ待って!」

「っ!」


 カトレアちゃんの声に飛びのくと地面に穴が開いている。落とし穴!! 上ばかり気にしていたから気付かなかった……。


「カトレアありがとう」

「まったく。注意しなさいよ」


 カトレアちゃんにお礼を言ってから魔力感知を地下にも広げる。罠を避けていける最短ルートは……よし!


「カトレア。罠避けつつ行くからついてきて」

「……うっかりで罠にはまらないでよ?」


 引っかかりかけたばかりで反論ができない……。気を取り直して屋敷の中を進む。その後は特に障害もなく人が大勢いる部屋に辿り着いた。カトレアちゃんと頷きあい、ドアをけ破って中に入る。


「えっ?」


 中に入るとタコの足が部屋一面に広がり、中にいるガラの悪そうな人たちが捕まっている阿鼻叫喚の光景が広がっていた……。


「なにこれ!!?」

「うっ」


 絶叫した私と口を押えてトイレに駆け込んだカトレアちゃんは悪くないと思う……。


 ―――


「あっはっは。すまないね。いやー礼を言うよ。君たちのおかげで目が覚ますことができたよ」

「???」


 一度退室し、カトレアちゃんのSAN値チェックを終えてから気合を入れて部屋に入ると高そうな壺の中からタコが顔を出して笑顔で迎え入れてくれた。なにもの?


「自己紹介が遅れたね。僕はドゥーグ。タコの魚人族さ。この町で領主をやってるよ」

「サクラです」

「カトレアです。よろしくお願いします」


 なんかずっと触手がうにょうにょしてるな……。SAN値がゴリゴリ削れそうな見た目しているのに優しそうな人だな。


「変な商人から壺を買ってね。ほら僕って壺好きでしょ? 中に入ったら外に出れなくなっちゃったんだ」


 えぇ、蛸壺漁じゃないんだから……。変な商人なんて怪しい人から買った壺に入っちゃダメでしょう……。


「なんでそんな怪しい壺にはいるのよ!」


 カトレアちゃんも思わず突っ込んでるね。あれ? 私達が壺から解放するタイミングなんてあったかな?


「サクラさんの魔力で壺の封印が解けたみたいだね。どうやったのかは分からなかったけどありがとう」


 触手を一本前に出してきた。握手……かな? おそるおそる触手を握ると少しぬめっとした……。ドゥーグさんがニコニコしてるから良いか……。あとでお風呂入ろう。


「いつ壺の封印解いたの?」

「さぁ……」


 カトレアちゃんが小声で聞いてきたけど心当たりはな……あ!


「それって昨日のことですか?」

「たぶんそうだね。封印が解けてからひと眠りできたし」

「……封印を解かれた後に寝ないでください」


 昨日この町に着いたときに一通り町の中を魔力感知で危険が無いか確認した時に変な魔力を見つけて天の魔法でほどいたんだよね……。まさか領主様が封印されていた壺だったとは……。今思うと変な魔力があった位置はここだったね。


 さて、領主様にお話を聞きますか!

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