第115話 母との再会

 私がサクラに救われて約半年の月日が流れた。サクラは無事に学園を卒業し、ここ最近は天の適正の極致である魔素の支配ニブルヘイム・真を物にするための練習をしていた。超級適正以外は直ぐに扱えるようになったみたいだけど、空と時の適正には苦戦してるみたいだ。アービシアを倒すためにはまだまだ強くなる必要があるけど、十年かけてゆっくり二つの超級適正も使えるようになれば良いと思う。


 私はサクラに鎮魂歌レクイエムの事を話した。サクラが卒業し、故郷へと帰ったら過去の世界の私を鎮めて回る旅にでることも。最初はついて来ようとしていたけど私から断った。サクラであっても龍馬との逢瀬の邪魔はさせないよ? サクラはモフモフが~。と寂しがっていたが頑張ってと応援してくれた。そして、カティと二人で世界を見る旅に出る予定だと教えてくれた。いつになるかは分からないけど、しばらく故郷でのんびりした後に旅に出るらしい。……エルフの言うのんびりって十年単位だよね? 世界一周旅行が対アービシアの旅にならないといいけど……。サクラっていわゆるトラブルに愛されてると思うんだよね。……気にしないことにしよう! サクラなら大丈夫だよね? だってサクラだもん!


 そして私に嬉しい変化が一つ! なんと! 怠惰の大罪ベルフェゴールのスキルが消失したおかげで成長できることになりました! いぇい!! ここ半年ですでに体の大きさは一回り大きくなり、まだまだ成長できそう。これで龍馬が私を好きになってもロリコンだなんて言われないよ! どこかのレオンが中身は成長してないけどなとか言われた気がするけど無視だ無視。ちゃんと中身も成長してるもんね!


 サクラが退寮する日となり時間の余ったサクラを真実の遺跡に誘う。せっかくだしエピゴーネンの鏡のご褒美を受け取りに行こう! いや、ここ半年の間忘れてたわけじゃないよ? ほんとだよ?


 サクラに空の適正の魔法であるゲートを使ってもらい試練の間へ出る。ここはいろいろと思い出深い場所になったね。私が過去の世界の記憶を思い出し、サクラが死にかけた場所。そして、サクラと本気で戦って救われた場所。……今のサクラの故郷も見てみたかったけど、ここから出発しようかな。思い出深いこの場所の方が最後迷わずに帰ってこれると思う。


 昔……といってもつい最近の事だけど、を思い出しつつもサクラをエピゴーネンの鏡の場所まで案内する。さて、サクラは驚いてくれるかな?


「この先に私の母さま創造神がいるよ。」


 息を飲むサクラを見て思わず笑う。良い反応だね!


「エピゴーネンの鏡?」

「そうだよ」

「え? もう壊れたんじゃ……」

「え?」


 エピゴーネンは母さまの創った鏡なんだから壊れるわけ……あ! そういえば一度誤魔化すために嘘ついたんだった!! 危ない。忘れていたよ。


「そうだったね。壊したよ? でも、エピゴーネンの鏡は私達の母さま創造神に会うための試練として母さま創造神が設置したものだからね。自然と修復するんだ」


 苦しくなかったかな? サクラを見ると納得している。良かった。でもサクラが違和感を覚える前に他の事を考えさせよう。


「エピゴーネンの鏡の試練を突破するには二通りのパターンがあるけどサクラは分かる?」


 サクラは少し考え込む。でもそれも一瞬で直ぐに答えが出てくる。


「複製体との戦いを避けて鏡に触れるか、複製体を倒した後に触れるか。の二通りかな?」

「そうたね。複製体を倒さなかった場合、母さまに会うことはできるけど話すことはできない。試練を突破した人に必要な記憶や知識を授けるんだ。私の場合は、他の世界線の私達の記憶だね」


 久しぶりに過去の世界を思い出す。押しつぶされるわけにはいかないけど忘れちゃいけないね。するとサクラが頭を撫でてくれた。えへへ。


 試練のご褒美について説明をしていると母さまの話になった。……そういえばどんな人か話したこと無かったね。……ま、会えば分かるよ。うん。サクラが急に不安な顔をし始めたけど安心して欲しい。優しいひとだから。……ね?


 ご褒美の話が出てきたのに複製体が出てきてないことに気付いたサクラが複製体をどうしたのか聞いてきた。ふっふっふ。良く聞いてくれたね! 実は!


「ああ、それで私と戦う前、先に遺跡に来たんだね」


 えへへ。ばれちゃったか。


「サクラは私の魂の一部を持ってるから私が試練を突破してもサクラが報酬を受け取れると思ったんだ」


 思ったというよりはヴィヴィとレオナから聞いた話なんだけどね! 二人がかりでも大丈夫だったって! うにゃぁあ! ほっぺ引っ張られた! 痛い!


「私への置き土産って? そもそもこの仕掛けに気付かないかもしれないし、ショックでここに足を運ばない可能性だってあったんだよ? それに、死ぬ前提で動くんじゃありません!」

いひゃいいひゃいいたいいたいひゃってだって死ぬ以外に魔王化を防げるなんて思ってもなかったんだもん! それにサクラなら大丈夫! 最初は悲しんでも直ぐに立ち直れるって信じてたから!」

「そう……」


 サクラはちょっと不満げな顔をしてる。私も相談していればもっと早くに解決策が見つかったかもしれないと思うと恥ずかしい。誤魔化すように鏡を触れるようにサクラを促す。さて! ご褒美の時間だよ!


 サクラと共に鏡に触れると母さまが現れる。そしてそのまま私に飛びついてきた。


「やっと呼んでくれたー! セレスちゃん久しぶりー!」


 今日もハグが激しい。サクラがポカーンと口を開けてるよ。


「サクラちゃんもやっと会えたわね! ずっと見てたのよ? きゃー! 本物だと向こう神界から見るより百倍可愛い! 祝福の時は一瞬しか下界に降りられないからしっかりと見る時間取れなかったし!」


 そのままサクラを捕まえて母さまはサクラを撫で続ける。……そりゃあ母さま神様にそういう反応されたら困るよね?


「お母さま、「ママと言いなさい!」……ママ、サクラが困ってるよ」


 もうママっていう年じゃないんだけど……。母さまをどうするか考えてると処理落ちしていたサクラが帰ってきた。


「イメージとまったく違った!」


 うんうん。分かるよ。その気持ち。

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