第108話 告白
<レオンハルト視点>
帰っていいかな? 今、俺ことレオンは目の前でセレスとヴィーが固い握手……固く肉球を押し付けあっている二人を見てため息を吐く。さっきまで言い合いしていたとは思えないな……。
「そうなのね。今度サクラに会わせなさい! レオナとも仲良くできると思うわ」
「うんうん。できれば私達が魔国にいる間に来て欲しいな」
「そうねぇ。どれくらい魔国にいるのかしら?」
「んー? 二年くらい?」
「待て待て待て待て!」
こいつら。いろいろと忘れてないか? 魔国をさっさと出た方が良いって言ったのはヴィーだし、セレスはセレスで魔国の王が魔王と無関係だと分かったらすぐに帰って魔王を探さないといけないことを忘れてるな?
「なにか文句でもあるわけ?」
「そんなことないよね? 二年なんてあっという間だし魔王探しもその後でいいよ!」
あ、圧が強い。俺の妹達は俺が兄だって忘れてないか? というかセレス! ライアスとサクラが言うには魔王がいつ現れてもおかしくないのに二年も待てるわけないだろうが!! こらっ。膨れてもダメなものはダメだ! さっさと宿に戻ってライアス達に報告しに行くぞ。あ? ちょっと待てだ?
「…………はぁ。本題は何だ。さっさと入れ」
知ってるか? 兄は妹に弱いんだ。話くらい聞いてやる。だからそんな泣きそうな顔をするな。突然セレスが真剣な、それでいて泣きそうな顔になったのを見た俺はヴィーと顔を見合わせてから優しくセレスの話を促した。
―――
<セレシア視点>
あ、危なかった。ヴィヴィとの言い合いについつい力が入って当初の予定を忘れちゃったよ。それにしてもレオナか……。今度会ってみたいね。サクラ程ではないけど良い子みたいだし! さて、レオンとヴィヴィを引き留めたことだし、本題に入ろう。……うん。二人には全て話そう。ローズとも約束したもんね。最後の最後まで私が暴走せずに生き延びる方法を探すって……。私一人だと解決策が思い浮かばないけど、三人寄れば文殊の知恵って言うってサクラが言ってた!
「あのね。これはレオナにもライアスにも……他の
「は? それは「聞いてから判断するわ。確約はできない」」
「おい、口をはさむな。分かったよ。俺も百歩譲って聞いてから判断する」
「……分かった。それでいいよ」
私達神霊は仲がいい。数百年連絡を取らないとか普通にあるけど母さまから生まれた私達にとって同じくらい長生きしてるのは母さまと兄弟しかいないから。そして、契約者をとても大切にしている。これは私達の本能みたいなものだ。私達の魂の欠片を持っているからか、一緒にいると落ち着く。これはおそらく私達の中にある怠惰の欠片のようなものが契約者の中の魂の欠片によって抑制されるのだと思っている。憶測でしかないけどね。
何が言いたいかっていうと、私達神霊は基本的にお互い、もしくは契約者に対して隠し事をしないことが多い。もちろん例外は多々あるけどね。
ローズに話をしたように一から話をする。世界が繰り返されていること。私が魔王だということ。サクラが死ぬことが引き金だと考えていること。アービシアが母さまの弟で私達の敵だということ。サクラに殺してもらうために魔国でサクラを鍛えたいこと。でも、死なないで暴走を抑える方法も模索したいこと。
「「…………」」
すべてを話すとさすがの二人も絶句していた。先に立ち直ったのはヴィヴィだ。
「分かったわ。黙っててあげる。暴走しない方法も一緒に考えるわ」
「ありがとう」
レオンは少し黙っている。沈黙が少し怖い。
「れ、レオン?」
「……ふぅーーーー。分かった。飲み込んだ。一つ聞かせてくれ。サクラは知らないのか?」
「うん。サクラにもまだいうつもりは無いよ。もしそれでサクラが鍛えるのを止めちゃったら私が死ぬ以外で暴走を抑えられる方法が見つからなかったら世界が滅ぶから……」
「そうか……それでライアスや今度会う可能性があるレオナにも黙っていて欲しいんだな?」
「うん」
一先ず納得してくれたかな?
「セレス。猶予はどれくらいあるのかしら?」
「ゆうよ?」
途端にあきれ顔になるヴィヴィとレオン。なんで呆れてるの?
「暴走するまでどれくらいなのよ。サクラが死ぬ以外で暴走することは無かった?」
「サクラが死んだらって考えはセレスの予想だろ? まあ、聞いた限りだと間違ってないと思うけどな。他にも要因があるかもしれないからな」
そっか。サクラが死ななくても私が暴走する可能性があるのか……。ちょっと怖いけど確かめよう……
「二年……みたい。二年経つとスキルの暴走が始まるって……」
「そうなのね。ところでどうして他の兄弟には伝えないのかしら?」
意外と淡泊だね!? いや、悲壮感漂わせるヴィヴィなんて想像もつかないけどさ。
「一つ目の理由は場所かな。みんないる場所は遠いし、突然契約者達が集まってきたらサクラも怪しむでしょう? それに契約者の元を長期間離れる理由に魔王の名前も使えなくなるなら一人で向かってくることもできないと思うし……」
「ジークは? 王都にいるだろ?」
「ジークは防衛担当でしょ。ジークの許可なく持ち場を離れたら疑われてばれちゃうよ」
「そうか。ま、一応セレスの問題だからな。判断は任せるよ」
「ありがとう」
少しの間三人で話し合う。結局良い案は出てこなかったが、定期的に三人で話し合うこと、サクラとライアスの目的である
大まかなことを決め終えるとすでに太陽が昇ってきていた。
「あら。もうこんな時間なのね。レオナも寝る時間だし私はもう戻るわ。またね」
「いろいろとありがとう。またね」
ヴィヴィが帰り、レオンと二人になる。
「セレス。いつから知ってたんだ?」
「遺跡だよ。知らずにエピゴーネンの鏡に触ったんだ」
宿までの帰り道レオンにいろいろと質問される。
「なんで俺達に話さなかった」
「ごめん。そこまで余裕が無かったんだ……」
「余裕?」
「実は最初、誰にも話すつもりはなかったんだ。私は黙ってサクラを鍛えた後に殺されるつもりだったし……。でも、ローズがエピゴーネンの遺跡に触れていたせいで過去の世界の記憶を持ってて私が魔王だってばれたの……」
「そうか…………はぁ!!?」
突然の大声に耳が痛くなる。どうしたのさ?
「どうしたの? じゃないよ……。それでローズはなんだって?」
「私がサクラに殺されようと考えてるって話をしたら死なないように考えなさいって。生きるのを諦めるなって言われたの。だから私は二人に相談したんだよ」
「はぁ。さすがサクラの母というべきか……。俺も鏡に触れた方がいいかもな?」
「さあ? レオンがもらえる真実が過去の世界とは限らないよ?」
「そういやそうだったな」
二年後の期限までにスキルを抑える方法を探さないと……。今日……もう昨日か。昨日の報告でサクラとライアスは毎日開催される魔族との闘技大会に参加するって言っていたから実践を通して鍛えられるだろうし、後は暴走までの期限の見切りを間違えないことを注意しつつ頑張ろう。
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