第103話 祝福
目が覚めたサクラは一瞬キョトンとした後、悔しそうな表情を見せた。そのまま私の羽に顔を埋めて……。くすぐったい!! 思わずビクッとした! 起こしちゃった? じゃないよ。私は元々起きてたよ?
「サクラおはよう」
「おはよう。セレスには勝てなかったよ……」
「いや、正直俺はドン引きしてるぞ」
「ちょっと人間離れし過ぎなの」
外野がうるさいけど試練に失敗したと思ってしょんぼりしてるサクラに合格した事を教えてあげないとね!
「おめでとう! 試練は合格だよ!」
「……へ? 負けちゃったのに?」
「勝負に勝てなんて一言も言ってなかったろ?」
「あ……」
むぅ。私が言おうと思ってたのに……! 私が不貞腐れているとレオンとジークがサクラを褒めている。……私も褒めたいけどここで満足されちゃうとサクラが
「うんうん。さすがサクラだね! このまま強くなっていければ魔王にも勝てるかも」
「それでも“かも”なんだね……」
あ、あれ? あげて落としたみたいになっちゃった? んむむ。さっさと次に進もう。
「試練も合格だしこれから祝福を授けるよ! ついてきて!」
私達神霊が祝福を授けるために作った特別な場所にサクラを案内する。この空間に入れるのは私達神霊が祝福を授ける事を認めた契約者だけだ。ただし、白の魔法がかけられている空間だから今までの契約者は中に入った瞬間廃人となり、その後死んでしまっている。
サクラは一人ほのぼのとしているけど私達三人にとっては緊張が凄い。
「セレス。何か話しかけないのか? 考えたくないがあの空間に入った瞬間に……」
「大丈夫。絶対に平気だから」
レオンが念を押してくる。ちょっとしつこいと思うけどレオンの気持ちは分かるから怒ったりはしない。今まで祝福を授けようとしていた神霊達も私と同じ事を言っていたからね。
とうとう祝福を授けるための空間……祝福の庭に辿り着いた。祝福の庭は私達神霊を祀る特別なモノが集まっている。中の配置は祝福をする神霊によって代わり、今回は新樹が中心にある。レオンを祀る神光やジークを祀る神土……神土ってなんだろうね。とにかく特別なモノしか無いこの空間は幻想的に煌めく。
祝福の庭の中に入り一瞬立ち止まったサクラは幻想的な風景に目を奪われている。その様子を見てレオンとジークがホッと一息吐いた。
「平気だったな」
「そう言ったでしょ?」
「何時でも戦闘形態に入る準備はしてたのに意味なかったの」
酷い! そこまで信用ないなんて! 一人膨れているとサクラがボソッ呟くのが耳に入った。
「桜……」
神樹の名前。そういえばついてなかったね。セレシア様の木とか、神霊様の木、はたまた神樹としか言われてこなかった。そっか日本では桜っていうのか。サクラや龍馬と同じ名前だね……。ライアスが簡単に説間しているけど、この世界に神樹……サクラは三本しかない。一本はここ、祝福を授ける為に私が創った一本。一本はエルフの国。私が最初のエンシェントエルフを創る時に媒体として作った。最後の一本は私の生まれた場所にある。先の二本は私が作った模造樹みたいな物だけど最後の一本は母さまが創った本物だ。今度サクラにも見て欲しい……。私も一度龍馬と一緒に見に帰りたいな……。
「サクラ。おめでとう。レオンハルト・R・シャオローナが試練の合格を見届けた」
「さすがだったの。ジークハルト・A・シャオローナが試練の合格を見届けたんだよ」
私がそんな未来もあったら良いなと考えていると二人が見届け人としての口上を述べる。二人の口上に呼応して白の魔法が強くなる。これで私がサクラに祝福を授ける準備は整った。
「サクラ。この庭はね? 私達神霊が契約者に祝福を授ける為に創ったんだ。桜の木を通して自慢の契約者を私達の母さまに認めて貰えるように。でも、実は今日が初めてなんだ」
「初めて?」
「俺達のお母様が契約者に祝福を与えることを認めることだ。今までも何人か祝福を授けようとしたんだけどな、全員認められなかったんだ」
「そうだったんだ」
正確には母さまの魔力に耐えうる契約者がいなかったのだけど……。あれ?
サクラが首を傾げてる?
「セレス。自分で説明しろよ?」
「う、うん。えへへ、実は
「そう…………。えっ?」
サクラの疑問も解決したと思うし、このまま祝福を授けようかな。
「じゃあ改めて祝福を授けるよ」
神樹の前でサクラと向き合う。サクラの準備が出来たことを確認してから神樹に魔力を流し込む。私の魔力に反応した白の魔法が母さまの形を一瞬だけ取り、サクラへと宿った。これでサクラは祝福スキルが使えるようになる。
……!? サクラの中にある私の魂の欠片が今までよりもサクラに馴染んでる? サクラが私の魔力を使える量も増えてるし、もしかしたら私の感情か考えがサクラにダダ漏れ? よ、余計なこと考えないようにしないと……。あ! 考えが伝わるかは今確かめられるね。
『ステータスを開いてみて』
………………。心の中で考えたことは伝わらないみたい。今の一連の間に起きた私の感情の変化にも気付かなかったみたいだし、強い感情以外は伝わらないみたいだね。念の為の確認を終え、サクラに祝福が付いているか確認する。
「これで祝福はお終いだよ! ステータスを確認してみて!」
うんうん! ステータスも順調に伸びてるし、私の祝福もしっかりと付いているね! ステータスが伸びたのは私との戦いのおかげって言ってる! むふふ。私のサクラ強化計画も順調ってことだね! おや? サクラの顔に祝福ってなんだろう? って書いてあるね。
「さて、私の祝福の効果なんだけど」
「なんだけど?」
サクラが前のめりになってる。でも、期待させて悪いんだけど……。
「(実際に使わないと)分かんない!」
「うぉい!」
あ、サクラがずっこけた! あ、でも副次的な効果は確認したね!
「私とサクラの繋がりは強くなったよ!」
祝福の説明をレオンが補足してくれた。寮へと戻り、部屋に帰る。
「サクラ、どんな結末になっても後悔しないようにしようね!」
「? そうだね。今できる全力を尽くすよ」
近い将来、私を殺した後も後悔しないでね?
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