第75話 カトレアの嫉妬
<カトレア視点>
私、カトレアが商学科の授業を終えて部屋に戻るとセレス様が姿を見せていた。猫の姿とはいえサクラにベッタリしているのを見るとモヤモヤする。なんて羨ま……こほん。なんでそんなにくっついてるのよ!
「セレス? どうしたの?」
「カティ? 何が?」
「い、いえ、なんでもないわ」
何か今日一日で二人の距離が縮まってる気がするわね。仲が良いのは良いことだからダメとは言わないけど……モフモフなら私にもあるのよ?
その日からサクラは放課後にセレスの相手をする事が多くなっていった。授業中はセレス様が寝てるから二人でお話をするし朝や夜にも部屋でセレス様を含めて三人でお話するけど……。今までより二人きりでお話する時間が減って寂しいわね。
数日後、商学科の授業でチコに心配された。
「カトレアちゃん! 大丈夫?」
「何がかしら?」
特に体に異常は無いし心配されることは無いと思うのだけど……。
「カトレアはん、お顔に寂しいって書いてあるで」
「サクラちゃんと喧嘩でもしたの? チコが慰めてあげようか?」
「慰めなくていいわよ……」
顔に出てたのかしら……。チコの手がワキワキしてるのを制しつつもサクラがセレスに取られて寂しいと言ってしまった。
「よっしゃミーヤ様に任せとき! カトレアはんを悲しませるなんて悪い子はうちがお仕置したる!」
「カトレアちゃんに嫉妬させるなんてサクラちゃんは悪い子だ! チコも一緒にお仕置に行くよ!」
「止めなさい」
サクラは悪い事してないんだからお仕置は必要ないわ。そもそも嫉妬じゃないもの! えぇーじゃない! サクラにお仕置なんて絶対ダメよ!
―――
<サクラ視点>
セレスに祝福を貰った後、またもや日常の生活に戻ったのは私ことサクラ・トレイルである。最近はセレスとずっと一緒だ。いや、正確には契約してからずっといたけど姿を消してるか表しても寝てるかだったからそこまで一緒にいる感じはしなかった。今は基本的に姿を見せ、猫の姿か人の姿で常に私のそばに居る。
ちなみに授業も一緒に受けている。授業中は寝てるだけだけどね……。そもそもセレスは
「サクラ君おはよう! 今日こそ神霊様を調べさせてくれないかい?」
魔道具科の授業が終わり片付けをしているとハカセが何度目かの声をかけてきた。新しい魔道具の発明のためにセレスのことを調べたいらしい。……どんな魔道具を作る気なんだろう? 気になるけど聞いても毎回はぐらかされるので諦めている。気になるけどね。
「いや!」
毎回断ってるのもセレスだ。神霊様に直接断られているのに何度でも声をかけてくるハカセって心臓強いよね。ダイヤモンド級?
「本人が嫌がってるからダメだよ」
「そうか。……ならまた今度聞いてみるよ!」
「いつ聞かれても嫌だからね!?」
セレスがげんなりしている……。ハカセも一回一回はすぐ引くんだよな。……その代わりに何度でも来るけど。
ハカセとしばらくお話をしているとミーヤとチコがやってきた。
「サクラはん。うちらのこともかまってーや」
「サクラちゃんずっとセレシア様の事しか構ってない!」
ミーヤは冗談を言ってる口調だけどチコは割と本気で膨れてる……。うーん。確かに最近はセレスの相手ばかりしているけど、他の人もないがしろにしたつもりは無い。首を捻っているとミーヤが耳打ちしてきた。
「うちらってよりはカトレアはんや。商学科の授業の時に寂しがってたで」
ガタッ
「なんですと!」
思わず立ち上がってしまった。突然立ち上がった私に驚いてセレスの尻尾がピンと立っている。あ、ミーヤも少し驚いてる……。勢い付けすぎたかな?
「こほん。それは由々しき事態だね。部屋に戻ったらカトレアの相手をしないと!」
そこからは即行で片付けを終わらせて私室に急いで帰る。カトレアちゃん待っててね! いっぱい
―――
<カトレア視点>
ど、どうしてこうなった……。今日もどうせセレス様と一緒に放課後遊びに行くと思って完全に油断してたわ。
私は今いつもより早く帰ってきたサクラに捕獲されてずっとモフモフされている。いきなりどうしたのかと聞いたらミーヤとチコから私が寂しがってるって聞いたって! あの二人は後日引っぱたくとして今を切り抜けないと不味い。……何が不味いって? モフモフが気持ち良すぎるのよ! 変な声出そうになるし、腰抜けて逃げ出せないし。……というかサクラのモフモフの仕方上達してるわね。セレス様をいっぱいモフモフしてたかしら……? ちょっと、止めなさい!! 嫉妬なんてしてないから! 変な声出ちゃうから!!
やっとこさ解放されたのは寝る直前だった。私は一人ぐったりとし、気まずそうな顔をしているサクラの事を恨めしげに見る。
「カトレアごめんね?」
心配そうな顔をしているサクラが謝ってくる。
「しばらくモフモフ禁止で手を打つわ」
ショックを受けた顔をしてもダメなものはダメよ! いやホント、変な扉開きかけたからしばらくは禁止よ! サクラのモフりテクニックを舐めていたわね。
「いや、今の惨状じゃなくて……いや、今の惨状もだけど最近セレスに構ってカトレアのこと放っちゃってたから」
少しだけ息が整ってきた。確かに最近セレス様がずっといるけどサクラが私のために時間を割いてくれている事も知っている。
「……別にいいわよ。サクラだって忙しいんだし、セレスの事も大切だもの。……ちょっと寂しかったけどね」
「か、カトレアちゃーん」
最後は小声で言ったのにバッチリと聞こえていたらしい。モフモフ禁止って言ったのにまたモフられた! まだぐったりしていて逃げられないのに!
―――
<サクラ視点>
や、やりすぎた……。思い立ったが吉日と昨日の放課後ずっとカトレアちゃんをモフモフしてたら警戒されるようになってしまった……。カトレアちゃんを見るだけでビクッとして警戒されるのがとても悲しい。いや、ついついやりすぎちゃった自覚は有るんだけどね? カトレアちゃんのモフモフはセレスとは違ったモフモフでどちらも素晴らしいものだからモフ欲が抑えきれなかったのだ。
数日経ち、カトレアちゃんの警戒が無くなってきた頃、殿下に冒険者ギルドへ来るよう呼び出された。
コンコンコンっ
冒険者ギルドに入るといつものようにギルマス部屋に向かう。
「どうぞ」
「サクラ君、よく来てくれたね。神霊様も」
聞きなれたライラさんの声を受けて部屋に入るとまたもや陛下が中で待っていた。殿下に呼び出された時点で予想はしていたけどね。……それよりも陛下は何度もギルドに来ていいのだろうか。いや、小さい頃から城を抜け出してきたみたいだし今更か。
「まったく、この部屋を集合場所にするんじゃないよ。陛下も安全を確保するこちらの身になってくださいな」
ライラさんが文句を言いつつもお茶を用意する。
「さて、ライアス君が来たら全員だね」
陛下がはライラさんのお小言を無視して私にお菓子を差し出して来た。もぐもぐ。
「すまん、遅くなった」
しばらくお茶をしているとライアスが入ってきた。
「うんうん、昼頃としか伝えてないから大丈夫だよ」
「うおっ。陛下。お待たせして申し訳ないです」
陛下を見てライアスが驚いている。ライアスは陛下がいるって予想できなかったみたいだね。……殿下を待たせるのもどうかと思うけど友達だから良いのだろうか。
「いいよいいよ。全員揃ったことだし移動しようか。ライラ君、案内頼むよ」
お仕事を早めに切り上げて来たであろう陛下は寛大だね。いえ? サボるために早く来ただなんて思っていませんよ?
「かしこまりました。では行きましょうか」
……どこへ?
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