第59話 噂の真相
母と陛下の意外な繋がりを知った。だからと言ってフランクに接することが出来るとは言わないけどね。
それにしても陛下は自由過ぎでは無いだろうか。母やガーデンのメンバーと行動してたってことは陛下もSランク冒険者なのかな?
「そうだよ。城で近衛達を撒くのに築いた隠密技術を活かして斥候役をしてたんだ。あぁ。それと自己紹介を忘れていたね。知ってると思うけど僕はブルーム王国の国王ロータス・フォン・コモン・ブルームだよ。よろしくね」
うーん。凄いことだけど経緯が経緯だから褒められたことじゃないな。あれ……? ガーデンのメンバーでロータスってエニシャさん達が憧れている伝説の斥候じゃない!? まさか陛下のことだとは……。イメージ像が違い過ぎて結びついてなかった。
「ま、僕の事はこれくらいでいいよね?魔の森の異変の報告をお願いするよ。あ、お代りどうぞ」
陛下が入れたお茶のお代わりを貰いつつ魔の森での出来事を話した。
―――
「うんうん。報告ありがとう。それにしても神霊様もお茶目だねぇ」
異変の原因を作ったり私達が死にかけたりしたことをただのお茶目て……。陛下の心が広いのか、神霊様の愛され方が凄いのか。
いや、セレスを責めたいわけじゃないから良いんだけどね……。
「本題も終わったし、何かご褒美あげないとね。欲しいものはあるかい?シルビアの嫁の座なんてオススメだよ」
「要らないです」
なんてことを言うのだ。それは褒美じゃなくて罰だろう。いや、普通の女の子なら嬉しいのかも知れないけど…。いや、そろそろ王太子妃をそんな軽く決めないで欲しい。
「……あはははは。やっぱり即答なんだね。いろんな女の子が夢見る王子様なのに」
「先程も言いましたが私には荷が重いので」
「そんなこと無いと思うけどね。まあ良いか、後日また機会があるときに聞くことにするよ。サクラ君みたいな娘も欲しかったからね、シルビア頑張って」
また聞くんかい。ま、無理強いしないだけ良いのか?
「父上、サクラも困ってるのでその辺で」
「うんうん。で、欲しい褒美は決まったかい?」
うん?今の茶番は褒美の内容を考える時間だったの?気付かなくない?
「えっと、では王都中に流れてる私の噂を流すの止めてくれますか?」
「…え?」
「私がアービシアと仲間かも知れない。とか魔境を態と作った。とかそこら辺の噂ですよ。出処は陛下でしょう?」
一瞬虚をつかれた後、陛下の顔付きが面白いものを見るものに変わった。シルビアは苦笑している。……こやつもグルか?
「ふむ、今は私達しか居ないとはいえ、不敬罪になることを承知した上で言っているのかい?」
暗に取り消せば聞かなかったことにすると言いつつ脅しをかけてきた。
「ええ、王太子のシルビアや神霊の愛し子ライアス。冒険者ギルドのギルドマスターに商会ではルアードさんいろんな人に協力して貰いましたが噂は消えませんでした。最初はアービシアが裏で何かしてると思ってたんですが違ったようですし。そうなるともっと上の立場の人達が故意に流してると考えるのが自然です」
「上手く収められなかっただけかもしれないよ?それにサクラ君の協力者の中に裏切り者が居るのかもしれない」
「その可能性もありますね。現に殿下は陛下に加担してるみたいですし……。それでも陛下がこの庭を報告会の場所に指定して私が契約者か確認したり、信用してると見せかけて毒殺を警戒していたり。かなりタヌk、曲者だってことは分かってますから」
「そこら辺は王族として当然の警戒さ。今のままだと予想で僕を貶めようとした犯罪者になっちゃうよ?」
証拠を出せってことか……。証拠は無いけど限られた人物しか流せない噂があったな。これでシラを切られたら撤回するしかないけどね……。
「一つ、普通は知りえない噂が混じってるんですよ」
「ほう。どの噂だい?」
「私と父さまが親子って噂ですよ」
陛下の顔が真剣な物になった。
「父さまは学園長を刺した後、確かに娘を見に来たって言ってました。でも、それが私だとは一言も言ってないんですよ」
「娘を一目見に来たんだろう?アービシアがサクラ君を見てたのなら疑われても仕方ないと思うけどな」
「凝視してたならともかく、全体を見渡しただけですよ。その一瞬で誰が娘かわかると思いますか?」
ま、元々娘が私だと知ってる人なら気付くかも知れないけど学園で父のことを話題に出したことは無いしありえないだろう。
「……うん、その通りだね。それだと特定の誰かだと気付くのは難しそうだ」
「となると私と父さまが親子だと噂を流せる人物は限られてくるんです。元から知っていたのがカトレアちゃん、ウィードさん、スティム、学園長の四人。それから、父さまが来た後に知ったのが、ライアスとシルビアの二人」
「なるほど、そうなると噂を流せるのはその六人かその人達が話した人物。という訳ですか」
「うん、今の六人には噂を流すメリットが無いからね。陛下、どうです?」
「……。盗み聞きされた可能性は?それに僕にもメリットはないよね?」
結界を張ってたから盗み聞きはありえない。ただ、陛下のメリットと言われると…。
言葉に詰まると陛下が笑い始めた。
「あはははははは。ごめんごめん。意地悪を言ったね。まだ子供なのにそこまで考えられるのなら充分過ぎるほどの点数をあげられる。噂はもう流さないし、もちろん不敬罪にも問わないよ」
陛下にも殿下にもメリットは無いと思う。流さないとデメリットがあった?いや、そんなことは無いだろう。となると…。
「私のため……。ですか」
「は?なんでそうなる?サクラを貶してるのに?」
ずっと黙ってたライアスが突っ込んできた。報告終わってから一言も話さないから寝てるのかと思ってたよ。
「おい、俺は起きてたぞ。いろいろと衝撃的過ぎてキャパオーバーになってただけだ。んで、なんでサクラを貶める噂話を流すことがサクラのためになるんだ?」
「自分で言うのもなんだけど、模擬戦と親善試合、文化祭を通して私かなり人気になったでしょ?それこそ寮の私室以外では何処でも話しかけられる程に……」
あの時はかなり辛かった。スタンピードを殲滅した時の方が楽だったと思う。……スタンピードの殲滅は楽しんでただろうって?あはは。そんなこと気にしない気にしない。
「そんな時期もあったがそれがどうかしたのか?体育祭の時期には落ち着き始めていただろうが」
「何もなかったら体育祭の演舞の後、どうなったと思う?」
「サクラの人気が再熱しそうだな……そうか。だから態と悪い噂を流してサクラの周りに人が集まらないようにしたのか……」
「うん、また同じ状況になったら寮に引きこもるとかしないといけない感じになりそうだったよね」
もっと良いやり方があったと思うけど、陛下からしてみれば私の評判を上げることはスタンピードの実績を表彰でもすれば簡単に出来るし、一度下げても問題無いと思ったんだろう。
「さすがだね。でもそこまでだと良くて五十点って所かな」
「五十点満点です?」
「百点満点ね?なんだかローズの娘って感じがするよ」
いや、知ってたし。五十点満点なわけないし。良くてって言ってる時点で察してたし。本当だからね!
「残りの半分だけど……。その前に、シルビアからの話を聞いた限り、サクラ君は貴族になりたいと思ってないね?むしろなりたくないと思っていると思ったんだけど、どうかな?」
「ええ、その通りです……」
「うんうん。もし、サクラ君に疵が無かったら今頃、いろんな貴族達がサクラ君の後ろ盾になって貴族にしようと手を回している筈なんだよ。スタンピードを殲滅できる英雄で神霊とも、王太子とも仲良くしてる存在。利用価値がとても多そうだろう?でも、今回の噂話のせいで疵ができたサクラ君に手を出そうとする奴はかなり減っている。一部のおバカさん達は手を回そうとしていたみたいだけど数も多くないからこちらで潰しておいたよ。あ、もし貴族なりたかったら僕が後ろ盾になってあげるからいつでも言ってね?」
陛下にとっては私がどうなろうと知ったこっちゃ無いだろうに。私が母の娘だから気にかけてくれたのかな?
「おバカさん達を潰したのがスタンピードの褒美ってわけですか。ありがとうございます」
「シルビアの嫁に来てくれたら噂を流すのを止めるどころか否定までしてあげるけどどうする?」
「いえ、結構です。」
いや、そこは諦めて欲しいな?
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