第57話 学園への帰還
私ことサクラ・トレイルは無事に緊急クエストを終えて学園の寮に帰ってきた。
「サクラ! 大丈夫だった?」
そう言って駆け寄ってきたのはカトレアちゃんだ。
「大丈夫だったよ!」
「サクラの心配はしてないわよ! 魔境を新たに作らなかったか心配してたの!」
そうは言いつつも私に怪我がないかチラチラ確認しているカトレアちゃん可愛い……。
「クレーターは出来たけど魔境は作らなかったよ!」
「やっぱりあの音はサクラが原因だったのね……。心配して損したわ……」
「私だけのせいじゃないよ。それで私死にかけたし。あはは」
原因を作ったのはセレスで、炎魔法を使ったのはライアスだ。うん。やっぱり私の所為じゃないね。
「あはは。じゃないでしょ! サクラが死にかけるって余程のことじゃない!」
「いやー、爆発することに気がついたのが遅すぎてね……。洋服は守りきったよ!」
「洋服の前に身体を守りなさい!」
事前にセレスがエリクサー的な木の実作れるって聞いてたから身体よりも洋服を優先して守っただけなんだけど……。そんなこと関係ないって怒られそうだから黙っておこう。
「ま、何はともあれ無事に……かどうかは微妙だけど、帰ってこれて良かったわ。……おかえり、サクラ」
「カトレアちゃん、ただいま!」
―――
少しの間休んでいた授業に出席すると珍しくフューズ先生がいた。なにか特別な授業でもあるのかな?
「さて、と。無事にサクラ君とライアス君が帰ってきたことだし。安心したよ。じゃ、僕は帰るね」
「……」
何もなかった……。そして一応話達の心配してたのかフューズ先生……。
久しぶりにみた先生は相変わらず放任主義というかなんと言うか……。うん、考えるのは止めよう。
私が王都にいなかったからか、異変の結末への興味が勝ったのかは分からないけれど。緊急クエストに行く前よりは周りの人達の態度が緩和した感じがするけどまだ私の噂は消えてないみたいだ。
―――
授業が終わり、寮の私室に戻る。今はカトレアちゃんも一緒だ。
「で、サクラ。話したいことって?」
「会って欲しい子がいてね……。セレス?」
そう、今からするのはセレスとカトレアちゃんのご対面だ。もちろんセレスとレオンの許可は得ている。
「……」
「……」
「……」
「……サクラ?」
「ちょっと待ってね。まだ寝てるみたい……」
……セレスは魔の森を出てからずっと寝ている。姿を消したままだから誰かに見られることは無いからいいけど。そろそろ起こさないとだね。
「セレス、起きて!」
「なーに? サクラ」
やっと起きた。顔を拭いつつセレスが姿を現す。
「は、はわわわ」
あ、カトレアちゃんがセレスの可愛さにやられた。戻ってくるまでぼーっとするかな……。
―――
少ししてカオスな空間が収まる。
「えと、ごめんなさい。カトレアです。セレシア様、よろしくお願いします」
「ふんふん。カティだね! サクラのこと見てくれてありがとう! 僕はセレシア。カティも僕のことをセレスって呼んでいいよ! 敬語も無しで!」
「分かったわ。セレス、よろしくね?」
あー、尊い……。ケモ耳少女と猫の戯れ……。
「サクラ、戻ってきなさい!」
「あたっ」
二人の姿に癒されてたらカトレアちゃんに頭をはたかれた。
「まさかサクラが神霊様と契約するなんてね……」
「うんうん、私が一番ビックリしてるよ」
SDSでこんな展開になったことは一度もないから特にね……。
「今回の緊急クエストについて話せる所の説明だと思っていたからビックリしたわ」
「先に紹介しておきたくてね。じゃ、依頼についてなんだけど……」
帰ってきたんだな。と実感しつつ夜遅くまでカトレアちゃんと話を続けるのであった。
―――
日が変わり、ミーヤとチコが部屋に来ている。
「サクラはんお久しゅう。緊急クエストは大丈夫やったか?」
「サクラちゃんなら大丈夫だと思う!」
「無事完遂したよ。あはは……」
チコの期待に苦笑いするしかないね。死にかけちゃったんだけど……。カトレアちゃんの視線が痛い……。
「さて、今回はミーヤちゃんがサクラはんに勉強を教えたるでー! ビシビシ行くから覚悟しいや」
「チコ。ミーヤちゃんは人に教える前に自分で勉強した方がいいと思う」
今日は期末テストに向けての勉強会だ。中間の時とは違って私が休校していた間を教わる会だ。
「チコが魔道具科を、カトレアちゃんが魔法科をサクラちゃんに教えるからね!」
何か違和感が? そういえばいつの間にかチコのカトレアちゃんの呼び方が変わってるね?
私が違和感を持ったことに気付いたミーヤに手招きされる。カトレアちゃんとチコの二人がお話をしてる横で少し離れる。
「チコのカトレアはんの呼び方は気にせんで欲しいわ。特にサクラはんは指摘せんようにな」
「私はダメなの? 分かったよ」
小声で説明されたので小声で返す。無理に秘密を暴くつもりは無いけど気になるよね。
「というか気付くの遅いわ。体育祭の頃からやで?」
「あ、そんなに前からだったんだ……。あの時はいろいろ大変な時期だったしその後すぐに緊急クエストに行ってたから頭回ってなかったよ」
「ま、しゃーなしやな」
ミーヤとの密談が終わり、カトレアちゃんとチコの二人と合流する。どうやら二人は私達に勉強を教える段取りを相談していたみたいだ。
最初はチコがミーヤに魔道具科の勉強を、カトレアちゃんが私に魔法科の勉強を教えてくれることになり分かれて勉強を始める。一定時間後、私とミーヤが場所を入れ替わり、私がチコに魔道具科を、ミーヤがカトレアちゃんに商学科の勉強を教わる形になった。
数日経ち、期末テストが始まった。今回は特に意地悪な問題もなく二つの科とも満点を取ることが出来た。魔法科は私、カトレアちゃん、殿下、ガーベラの四人が同率一位、魔道具科は私とチコが同率一位、商学科はカトレアちゃんとチコが同率一位だった。
私同様休学していたライアスと勉強が苦手なミーヤは赤点ギリギリだった。……ライアスは休学していても日本の基礎知識あるんだから赤点ギリギリはダメでしょう。
テストの結果発表があった日の放課後、シルビアに呼び出しを受けた。
「サクラ、ライアス、父上が二人から話を聞きたいと言っています。日程は調整できますが来週中だとありがたいです。来てくれますか?」
「大丈夫だよ。放課後なら基本的に時間が空いてるからね」
……ん? 気軽に返事しちゃったけどシルビアの父上って……国王陛下では!?
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