第55話 ギルマスへの報告
セレスとの契約もあっさりと終わり、セレスを加えた私達四人は遺跡へと向かう。
特殊個体は一掃したし、変異体は数が減っているのか襲われる数がかなり減っている。
「スタンピードに特殊個体。二つともなんとかなったけど、次もなにか仕掛けてこないかな?」
「しばらくは打ち止めだろう。前回も今回もある意味では一瞬で対処されたようなもんだからな。次に何かをするにしても準備で時間がかかるさ」
「そっか」
王都にいるみんなを安心させるためにも一度戻ったほうが良さそうだね。遺跡に向かいつつセレスの能力について聞いてみる。
「さっきレオンがセレスなら知らなくても知れるって言ってたと思うんだけどどういうこと?」
「うーん……。サクラがライアスのことを信用してるみたいだから言おうかな。他の人には秘密だよ?」
「分かった」
「僕には二つ神霊としてのスキルを持っていてね。一つは
これはライアスから聞いたスキルのことだよね。本当に植物の適正の頂点見たいな魔法だね。
ここで丁度遺跡に着いた。目では見えないけど魔力感知を使うと結界の位置が分かる。
「止まって。結界が張ってあるよ」
「なんとなく分かるが……。天の適正がないと魔力感知の精度が悪いのか、はっきりは分からん」
適正のせいにしてると成長しないぞ? ライアスを叱責しつつ結界の様子を調べる。
「遺跡をドーム状に覆っているね。学園長が使用していた時と同じで侵入者を感知する機能だね。入るとすぐに見つかるよ」
一通り確認し、緊急クエストも終えたので王都への帰路につく。帰り道に中断したセレスの話の続きを聞く。
「セレス。もう一つのスキルは何?」
「もう一つは
ドヤ顔のセレスが可愛い。つまり、さっきの水蒸気爆発を例に出すと、元々セレスは知らなかったけど、私に聞けば知ることができる状態だったから私に聞くといった途中経過を飛ばして水蒸気爆発について知ることが出来たということかな?
「たぶんそう!」
「サクラ気を付けろ。こいつ理解してないぞ。知ることと理解することは別だからな。それにこいつのスキルは強力な代わりにデメリットがあってな。良く寝るのもその一つだ」
「分かってるもん」
レオンの言葉にすっかりすねてしまったセレスを撫でる。
こうして行きよりも一人メンバーが増えた私達は王都へと戻るのであった。
―――
ちりんちりーん
冒険者ギルドのドアを開けると聞きなれた鈴の音がする。
いっせいに冒険者がこちらを向いて元の体勢に戻……らずこちらに近寄ってくる。
「特殊個体はどうなった」
「変異体は?」
「さっき爆音がしたがまた何かやらかしたのか?」
「情報をくれ……」
「変な巨大生物が……」
一斉に詰め寄られても答えられるか! そもそも緊急とはいえ依頼には守秘義務があるわ! とか思いつつ愛想笑いでやり過ごそうとする。
「情報の独り占めは良くないぞ!」
「そうだそうだ!さっさと共有しろ!」
自分勝手な言い分にだんだんとイライラし始める。
「スタンピードの時みたいにお前の仕業か~?」
根も葉もない噂を使ってけなしてくる輩に切れそうになったとき、
ドンッ!!
「いったん黙れお前ら!!」
壁を叩く音と共にライラさんの怒声が飛んだ。
途端に静まり返る冒険者たち。
「よし、サクラとライアスの二人は奥の部屋にこい。そして今詰め寄ってた馬鹿ども、これから一か月間報酬半減だ。ルールも守れないならギルドに所属する必要もない。全員初心者としてやり直せ! レイラ。あとは任せた」
レイラさんを残して私たちはギルドマスターの部屋に向かっていった。
―――
レイラさんとライラさんのおかげで無事に人混みを抜け、ギルマスの部屋に入った。
「さっきは馬鹿どもが悪かったね」
お茶とお菓子を出しながらライラさんが謝る。
「うーん、ライラさんの所為じゃないから謝らなくていいよ。って言いたいけど管理責任とかだよね? 謝罪は受け取るよ」
「話が早くて助かる。今頃レイラがきっちりと灸をすえてるだろう。ま、あいつらも不安なんだ、少しは大目に見てやってくないか?もちろん度を越したらやっちゃっていいからさ」
「あはははは……」
ライラさん、やっちゃっていいって何をでしょうか? とは怖くて聞けないな。
「帰ってきてすぐで悪いが早速報告を頼めるかい?でかい爆音とかも気になるからさ」
私の所為じゃないから最後にこっちを見ないで欲しいな……。まぁ、見られても仕方ないことをしてきた自覚はあるから強くは言えないけど……。
「では、順番に話しますね。行く前にライアスと話をして、今回の異変の黒幕はアービシアで、その協力者が神霊のセレス……セレシアじゃないかってなりました」
「待て待て待て待て……。初っ端から突っ込みどころが満載なんだが?」
頭を抱えてるけどどうしよう……。とりあえず話を進めるかな?
「レオンからの情報で植物が関わってたり魔物の目が水色に光ったりしていることからセレシアが関わってるんじゃないかってなったんです。アービシアに力を貸したのは私の親族だからじゃないかって……」
「なんでサクラの親族だと力を貸すんだい!?」
半分悲鳴みたいな声になってるけど事実そうだったのだから仕方ない。
「私が先祖返りだとかで神霊に好かれやすい体質らしいんです」
厳密には神霊の契約者は全員先祖返りが正しいけど似たようなものだよね? 全く違う? 気にしない気にしない。
「サクラが先祖返り!? 先祖返りだと神霊に好かれやすい!? ……ダメだ、情報量が多いし内容が重すぎる……」
とうとう突っ伏してしまった。まだまだ本番はこれからなんだけど……。
「ちょっと休憩しますか? まだ出発すらしてませんが……」
「……そうか、出発する前だけでこの情報か……。魔の森に着いてからが怖いね。うん、魔の森につくところまで話を聞いてから休憩にしようか」
「わかりました。といっても魔の森内部に入るまでは大した報告はありませんが。えと、アービシアに協力してるのがセレシアだと仮定すると、セレシアを説得すればアービシアへの魔力供給が止まって悪さができなくなると思ったんです。今回の特殊個体は倒す必要がありますが、変異体に関してはセレシアの補助が無くなれば通常の個体に戻ると思って……。大丈夫ですか?」
「……。ああ、進めてくれ」
「んで、魔の森に着いたら遺跡ではなくセレシアのもとへ向かうことにしたんです」
レオン達の依頼もあったから。が正しいけど細かいところは気にしない。
「そこまでが魔の森へ行くところか。よし。一度休憩に入ろうか。胃薬も用意した方がよさそうだ」
ギルマスも大変そうだなといろいろと準備してるライラさんを眺めてたらじろりと睨まれた。
「普段の業務も大変だけど心労がたまるのはこう言った非常事態だけだよ」
「ご、ごめんなさい……」
「あー、悪い、八つ当たりした。サクラは悪くなかった……。よな? 今回は魔境作ってないよな?」
「私は作ってないです! セレスがクレーターを作ったけど……」
後半は小声で呟く。どのみち今回私は悪くないのだ!
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