第52話 セレシアとの邂逅

 ライアスに飴ちゃんを貰いつつ魔の森を進む。


「めっちゃ食ったな……」

「もらえるものはおいしくいただきますよ?」


 ライアスの持っていた飴ちゃんをすべて食べきったころ、セレシアの気配が強くなった。


「そろそろセレシアに会えるね」


 強くなってきた気配に胸の鼓動が高鳴る。これがパートナーとの出会いの予感ってやつだろうか。


「そんな感覚はなかったぞ?」

「俺もなんもなかったな」


 ライアスにレオンと出会った時のことを聞いてみるとそっけなく返されてしまった。

 鈍くて気が付かなかっただけでは?


「失礼なこと考えてるな?」

「みんななんで私の考えてること分かるの?」

「……。サクラはすぐ顔に出てるからな。ババ抜きとかポーカーとか苦手だったろ」


 龍馬のときからそんなに苦手意識はなかったけど……。なんか生暖かい目で見られてることはあったけど毎回負けてたわけじゃないし……。


「そ、そうか……。周りに良いやつが集まってたんだな……」

「もちろん、みんな良い人だったよ!」


 私にはもったいないくらい良い人達だった。もちろん今の私の周りにいる人達も良い人だけどね。

 少し日本を思い出してしんみりしてしまったけど、セレシアの傍まで来たことが分かった。


「しんみりとする過去よりも今から出会う未来を見ましょうか!」


 そういって私が見た先には子供時代の私にそっくりなエルフの女の子が眠っていた……。


「猫は!?」


 私の魂の叫びが森に吸い込まれていった……。


 ―――


 ちょっとだけ取り乱してしまったが落ち着いてきたので改めてセレシアを見ると気持ちよさそうに寝ている。


「ちょっと……。ああ、そうだな……」


 ライアスがなにか言ってるが睨んだら撤回してくれた。勝ったな。何の勝負かは知らないけどね。


 レオンの言っていた通りセレシアがこちらに向かってこなかったのは寝ていたからみたいだ。レオンは嘘を吐いてなかったみたいだね。


「なんだその含みのある顔は?」

「いや、セレシアがレオンを嫌って近寄ってこなかったわけじゃなかったんだなって思って」


 レオンが不満そうな顔をしてるけどそんな顔も可愛いな。


「なにもしてないって言っただろうが。というか神の子である俺たちにそんな失礼なこと考えるのはサクラくらいだぞ」

「そんなに褒めなくても」


 いやー、照れるぜ。


「一応言うけど褒めてないからな?」


 レオンが何か言ってるけど無視していいだろう。


「都合のいい耳してるな」


 もちろんライアスの言ってることも聞こえない。私のエルフイヤーは聞きたいことだけ聞けるのだ!

 寝てるセレシアを見てふと疑問に思う。


「まだ契約してないのになんで私の姿なんだろう?」


 自分で言うのもなんだがサクラと同じ姿に猫耳が付いてるのとても可愛い。いや、私はナルシストってわけじゃない。龍馬として見て普通に可愛いと思う外見だからいいのだ。幼さの残った顔があどけない。


「……。この姿なのはセレスだからだろう」

「またそれなんだ……」


 セレシアだから。サクラだから。と言えば納得すると思ってない? 説明する気がないなら諦めるけどさ。

 なんとなくセレシアが私の姿をしているのがしっくりくるな。と、眺めてるとセレシアが目を開けた。私よりも綺麗な水色の目をしている。


「あ、龍馬・・・だ! おはよう」

「お、おはよう……?」


 へにゃりと笑いながら挨拶してきた。あれ? 今龍馬って言った……?


 ―――


 龍馬は誰だとライアスに聞かれて日本にいたときの名前だと答える。聞かれるまでは教えなくて良いかと放置していたがこんなところでばれるとは。


「サクラの前世って男だったのか……」

「隠してたつもりはないんだけど案外ばれないものだね」


 カトレアちゃんには何となく隠してるけど。……ばれてないよね?


「お前、前世も今みたいな性格だったか?」

「もちろん! 超しっかり者で頼られまくってたよ!!」

「ふむ、前世から残念な奴だったか」


 な、なんて失礼な奴だ。ライアスこそ前世から失礼な奴だったのだろう。


「ん? 龍馬?」

「何?」


 なんで改めて日本の名前で呼んだ?


「あ、悪い。サクラを呼んだわけじゃなくてな。……どこかで聞いた名前だと思ってな」

「ライアスの前世と私の前世は知り合いだったりして」


 可能性はゼロじゃないよね?もしも後輩君だったら面白いな。いや、それだと後輩君が死んでることになりそうだし良いことではないか……。


 うーん。そもそも私を含めて本当に死んでこちらに来たのだろうか? 最後の記憶はSDSをプレイしていた物だし……。

 私の考えがまとまらない内にレオンがセレシアにちょっかいをかける。


「それで、セレスはいつまでサクラにくっついてるんだ?」

「……ZZZ」

「寝るな、お前にお願いしたいことがあって来たんだ。起きろ」

「ZZZ」

「こいつ……」


 セレシアは今、猫の形態になって私の膝の上で寝ている。私がライアスに日本の話をしている間もぐっすりとしていた。

 私の説明が終わり、レオンがセレシアを起こそうとしたが起きる気配がない。レオンは猫状態なのにこめかみに血管が浮き上がってそうだ。セレシアはかなりマイペースな性格をしているみたいで無駄かもしれないがダメ元で声をかけてみる。


「セレシア、起きて。お願いがあるの」

「私のことはセレスでいいよ。お願いってなーに?」

「こいつ……」


 私の声に即反応するセレス。私たちの前ではレオンがプルプルしてるのをライアスがなだめている。顔をごしごししてるセレスもプルプルしてるレオンも可愛くて癒される。


「ニコニコしてないで要件を言え」


 レオンがすねてしまった。あとでブラッシングしてあげよう。


「いや、何もしなくていいから話を進めてくれ」


 ライアスの後ろに隠れたレオンが急かす。ブラッシングはさせてもらえないみたいだ。残念。


「ねえセレス。私の父さまに力を貸してるでしょう? その魔力供給を止めて欲しいんだけどいいかな?」

「サクラのお願いなら聞いてあげたいけど無理かな!」


 ……え?

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