第47話 神霊からの依頼
学園長に呼び出された私ことサクラ・トレイルは現在、ライアス、シルビアと共に学園長室に来ている。
「迷惑をかけたのじゃ。わざわざ来てもらってすまぬな。おかげで無事に快復したのじゃ」
体育祭で応急処置をして以来会っていなかったけど元気な姿を見れて安心する。
「こんなときになんじゃが、サクラにお願いしたいことがあるのじゃ。レオン様、ジーク様説明をお願いいたします」
レオンとジークが姿を現す。気配はよく感じていたけど、実際に姿を見せてくれるのは初めてだ。挨拶と片手をあげる姿にほっこりする。ニコニコしながらレオンとジークを見ていると呆れた視線が方々から刺さる。だらしなくなる顔をきりっとさせようと格闘しているとレオンから質問が来た。
「おう、サクラ。お前は俺たち神霊を何人知ってる?」
「それを聞くのは変なの。七人いることは有名過ぎて誰でも答えられるの」
「そうじゃねえよ、通常の形態と戦闘の形態、得意な魔法とかすべてを知ってるのは何人かってことだ」
「それこそ聞く意味ないの。誰のことも知らないに決まってるの」
普通はそうかもしれない。けど私とライアスは別だ。
「六人だよ。」
「!? なんでなの? ……分かったの。ライアスと同じなの」
「そういうこった。んで、サクラには最後の一人の契約者になってほしい」
おぉ、驚いた表情も可愛い……。私にSDSの知識があることをレオンが知っているのはライアスから聞いてるとして、ジークには共有してなかったのか。それでもレオンに頼んで契約者に日本の記憶がないか探ったとライアスが言っていたからジークも思い立ったのだろう。
SDSで出てこなかった最後の神霊の契約者……。とても魅力的だし、父や魔王に対抗するためにも新しい力は欲しい。でも契約するには条件があったよね?
「契約者には本人が気に入らないとなれないんじゃ……?」
「そこは大丈夫なの。彼女の性格や気に入る対象は分かっているの」
「で、サクラの様子を見てお前なら気に入られると踏んでのお願いだ」
そういうことならば大歓迎だ。むしろこちらからお願いしたいよね。
「居場所はどこにいるか分かる?」
契約するにも会いに行かないとね。
「……」
「……」
あれ? 黙っちゃった。
「二人ともどうしたの?」
「それがな……。今寝てるらしくて連絡がつかないんだ」
「少し前は繋がったの。その時は森にいるって言ってたの」
森……。どこの森かな?
「知らないの。木がたくさん生えてるとだけ言っていたの」
そう言ってレオンとジークが姿を消した。……逃げたな!? 居場所絞れてないじゃんか!
「あはは、私からもいいかな?」
私が一人頭を抱えていると苦笑いをしたシルビアが切り出した。
「まずはサクラ、魔境の修復に協力ありがとうございました」
「いやー、私が原因だしね……」
ここ一ヶ月、せめてできることだけでも。と魔境と化した場所の魔力を少しずつ散らして普通の土地に戻したのだ。荒れてることには変わりないが人が入れる程度には修復できた。
「気が付いたら元通りに戻って……いえ、森が広がっていて驚きました。いつの間に直したんです? 言ってくれればお手伝いしたのですが……」
「ん? 私がやったのは魔力を散らして人が入れる場所にしただけだよ?」
私がやったのは土地を元に戻すだけで森は作ってないけど? というかそんな魔法使えないけど?
「ではどなたが?規模的にサクラくらいにしか出来ないと思ったのですが……」
「それはおそらく彼女なの」
「ああ、サクラに契約してもらう予定のセレスの仕業だな。セレシアって言うんだが植物の扱いに関してセレスの右に出るやつは居ない」
私と殿下が首を傾げていると再び姿を現したレオンとジークが教えてくれた。
セレシア……。SDSでは出てこなかった最後の神霊の名前。ゲーム内では終始パートナーのいなかったサクラだがおそらくゲームでも正しいルートを踏むことができると契約することができるようになるのだろう。
「出会ったらお礼を言わないとね。でもなんでわざわざセレシアは直してくれたのかな?」
「サクラの魔力が残っていたからなの。気に入った魔力で土地を整えようとした痕跡を見つけたから手助けしたって感じだと思うの。」
嬉しいから良いけど私が気に入られてるのは確定なのか。
「そういうことでしたか。これでセレスのいる森の場所が特定できましたね」
? そうか。
「王都に隣接してる森か魔の森の周辺だね」
魔の森は王都周辺の森の更に奥に行くとある森のことで古い遺跡があると言われている森だ。SDSでも後半で行くことになる森で気合を入れて挑んだが名前負けする簡単な難易度だった。
「これでセレスに会いに行けるな」
「こうなることは分かってたの」
絶対に嘘だ! ジト目を送るも知らんぷりをされた。むぅ。
「それで、私一人で行けばいいのかな?」
SDSでも主人公達は最初から契約した状態で始まるためどうやって契約をするのかは分からない。他の神霊が立ち会わないとダメとか決まりはないのかな?
「友達と行けばいいんじゃないか? カトレアとか。仲いいだろ?」
「危険はないんだよね?」
体育祭での一件もあるし、もうサンディアは持っていない。なるべくカトレアちゃんには安全な場所にいて欲しい。
「契約は危険じゃないの。周りの魔物にさえ気を付ければいいの」
「それなら誘ってみようかな。一度こっちに連れてきていい?」
せっかくだしカトレアちゃんにもレオンとジークを見てもらおう。本人は隠してるつもりだけど可愛いものに目がないカトレアちゃんなら猫の姿を気に入るはずだ。
二人の許可をもらった私は学園長に断りを入れてカトレアちゃんを迎えに行った。
―――
カトレアちゃんを連れて二人で学園長室に戻る。レオンとジークは姿を現したままだ。
「え、神霊様? ほわぁ、絵本やぬいぐるみよりも本物のほうがめちゃめちゃ可愛いじゃない!」
「ほほう、さすがサクラの親友だ。見る目があるではないか。なぁ、ライアス?」
「うんうん。カトレアは良いこと言うの。シルビアも見習うの」
神霊の二人を見た瞬間テンションが壊れたカトレアちゃんに苦笑する。二人がドヤ顔でライアスとシルビアをからかうが、二人は嫌そうな顔をするだけだった。
「いえ、神霊様に可愛いは不敬になりそうで言えませんよ」
「ああ、普通神様の子供を見てニヤニヤできないな」
こちらを見つつ言うライアス。人のニコニコ笑顔をニヤニヤとは失礼な。
「はっ、ごめんなさい。神霊様、よろしくお願いしますね」
無事にカトレアちゃんが正気に戻り、神霊と契約するために森へ行くことを説明する。
「それ、授業はどうするつもり?」
「あ……」
すっかり授業のことを忘れていた。学園長を見ると難しい顔をしている。
「学園長?」
「うーむ。サクラは神霊様からの依頼ということで休学を許可できるのじゃがカトレアは任意同行だからの。なにか理由付けができれば許可するのじゃが……」
うーん。難しそうか。カトレアちゃんと一緒に旅をしたかったんだけど……。
「授業後の短い時間だけで探していくのはどうですか?」
「それならカトレアちゃんも一緒に行けるね!」
時間はかかるけどその分一緒に旅ができるし良いよね!
日帰りどころか数時間の旅だけど何回も行くことになりそうだし何を持っていくか考えていると部屋がノックされた。
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