第40話 注目の的
「サクラちゃんだ。握手してもいいですか?」
「サクラちゃん、私の妹にならない?」
「サクラさん、お姉さまって呼んでも……?」
「サクラさん、今度ご飯に……」
「サクラちゃん……」
「サクラさん……」
「…………」
うう、文化祭が終わって一週間、終わらない声掛けにげんなりしている私はサクラ・トレイルである。文化祭ではSDSの主人公と出会うといったハプニング? があったがその後は特に二人と絡むこともなく私の周りを除いて平和な日々を過ごしている。
「お疲れのようね」
「うぅー、カトレアちゃーん」
労いに来てくれたカトレアちゃんに抱き着く。私のことを心配してくれたからか躱すことなく受け止めてくれた。モフモフに癒される。
「今期の三龍生に勝つ実力を持っていて、殿下とか神霊との契約者のお気に入りで、伝説のガーデンと関りがある上にミスコンに優勝するほど可愛いとくれば有名になっても仕方ないわよ。というかそれで目立つなってほうが無理よ」
そうなのだ、文化祭のミスコンではまさかのお色気担当のSDS主人公であるレオナを抑えて優勝してしまったのだ。男性票はレオナの得票数が多かったみたいだが、女性票の大半が私に集まったのが原因らしい。
喫茶店で執事の格好をしているのを忘れてそのまま参加したところ、可愛いとカッコいいが両立していて推せるといったような意見が多かったみたいだ。
ガーデンについては後日に楓さんとルノアさんから説明を受けた。母のサインを求められたがそんな自殺行為はしたくないため全力で断った。賢い私はウィードさんの二の舞になるつもりはないのだ。
「さすがの桜姫も人混みには勝てないか?」
「うぅぅぅ、悪いことしてるわけじゃないから力業で逃げるわけにもいかないもん」
「こりゃ重症だな」
ライアスのからかいの言葉に言い返す気力も湧かない。というかせっかくカトレアちゃんのモフモフで充電中なのに邪魔をしないでほしい。
「ま、殿下のおかげでこういった避難場所を作れてよかったな。ほとぼりが冷めるまではあまり自由に動けなそうだけどな」
「そういうスティムは結局何もしてくれなかったね」
「物事には限度ってものがあってな? 一応助言はしただろう」
今回、注目され始めて最初に頼ったのは私のジト目にうろたえてるスティムだ。なぜかって? 昔やった決闘の賭けの精算だ。困ったことがあれば助けるって約束。今こそ約束を守ってもらおうと思って頼ったのにシルビアに頼れとの助言しかもらえなかった。
一応貴族科に働きかけて裏で終結させるように手を回してるのは知っているけど本人が隠してるみたいだからそっちは本人が言うまでは知らないふりをしている。
「心配しなくてももうすぐ落ち着くと思いますよ? その後にまた再燃するかもしれないませんが……」
良いニュースと思いきや微妙な一言を付けてきたのはシルビアだ。空いている会議室を貸し切りにして避難場所を作ったり情報を操作して早く落ち着くように働きかけたりしてくれている。
「もうすぐ? ……そういえばテストがあったね」
「ええ、成績が悪いと停学も退学もあり得ますからね。サクラさんを追いかける余裕はなくなるでしょう」
確かにテストがあると勉強しないとだよね。その後は体育祭があるからテスト後も平気そうだけど。テストと体育祭で目立つと反動が凄そうだ。
「体育祭が終わってもサクラさんへの注目が集まるほど平和であれば良いんですが……」
シルビアの呟きは魔王の存在を心配してのことだ。ライアスと二人で魔王について調べた結果、魔王の痕跡が残っていたらしい。らしい。というのはせっかく集めた痕跡が魔王の物だと確証を得ることはできなかったためだ。
SDSでも魔王の話が出てきていたから間違いないとは思うけど事情を知らない人には説得できる材料にはならなかったそうだ。
一応殿下が陛下に伝えたらしいけど表立った対応はできず、私やライアス、殿下のみで対応する必要がありそうだ。一応母やウィードさん、学園長と
「それで、魔王が復活したときの旅は結局俺とサクラだけか?」
「本当は私も行きたいのですが……。王宮の人達の説得ができず……」
「ま、証拠を固められなかった俺達が悪かったな」
「それにしてもいると確信できるのにいるという確証は得られないとか、正直気持ち悪かったですね。まるで幻影を探しているような……」
いるのかも分からない魔王探しの旅に殿下を出すわけにはいかないってわけか。やはりというかこの世界はSDS七周目の世界で旅にはライアスと行くことになるのかな?
―――
今日も無事寄ってくる人たちを振り切り寮に戻る。カトレアちゃんや殿下には頭が上がらないね。休日はルアードさんの所にでも避難しようかな? そう考えつつカトレアちゃんと私室に向かってるとミーヤとチコと出会った。
「お二人さん。お疲れさまやで」
「サクラちゃん疲れてるね! 大丈夫?」
二人は数少ない私へ接する態度を変えていない友人だ。普通の態度をしてくれる友人に会うと少しホッとする。
「二人ともありがとうー!」
「弱っとるなあ」
「いいこいいこしてあげる!」
チコは身長が届かないだろうから気持ちだけ受け取ろうかな? え? しゃがめと?
しゃがんで頭を撫でてもらう。
「少し恥ずかしいね」
「サクラの髪はさらさらね」
「ねー!」
少しの間チコに頭を撫でられていたらカトレアちゃんも後ろから頭を撫でてきた。珍しい!
「さて、チコもそれくらいにして。サクラも戻るわよ」
「はーい!」
「二人ともありがとう。ふふっ」
「?」
頭を撫でられて気力が回復するなんて我ながら単純だなと笑ってしまった。そのまま分かれて私室へと入る。
今日の話を思い返しつつカトレアちゃんが確認してくる。
「サクラ。魔王は本当に実在するの? 殿下の言い方だと怪しいと思うのだけど」
「前に話したと思うけど私の知ってる話でも魔王の居場所は分かってなかったの。それでも魔王は決まって現れていた。現れるまで待つのも一つの手ではあるんだけど……」
「弱体化してるうちに倒したい。よね。弱ってるかも分からないのに」
前のライアスと魔王について話をした時に出た話だ。実は魔王が出現するのは魔族との戦争中なのだが、稀にもっと早い時期に出現することがある。その時の魔王は決まって最後に出てくる時よりも弱っている。第三勢力が攻撃してくれたとか、完全復活まで待てなかったとかいろんな噂が流れたけど真相は分かっていない。……そういえば七周目では早い時期に魔王が出現したことはなかったな? 稀とはいえ私でも一周目から六周目までは何度か出現したことがあるのに……。
とまあ、早い時期に出てくる魔王は弱体化しているから、早く探し出すことができれば安全に弱った魔王を倒せると考えたのだ。
本当は魔族との戦争も止めたいけど……。向こうが攻めてくる限りこちらは備えることしかできないんだよね。
「何度も言ってるけどサクラには危ない目にあって欲しくないわ。サクラの決めたことなら止めないけど、やめたくなったらいつでも止めていいのだからね?」
「そうだね。ありがとう」
カトレアちゃんが本気で心配してくれているのが分かる。けど私は……。
―――
就寝前、一人寝付けなかった私はもうすぐで始まるシナリオに向けてステータスの確認をすることにした。
「ステータス」
*****
名前:サクラ・トレイル(桜庭龍馬)
種族:ハーフエルフ(種族制限“中”)
生命力:1500→2500
魔力:150000→200000〈適正:天〉
体力:B→A
物理攻撃力:D→B
魔法攻撃力:A→S
物理防御力:B→A
魔法防御力:A
器用さ:D→C
素早さ:B→A
運の良さ:G→D
特殊スキル:ステータス、アイテムボックス、鑑定
*****
自分で確認して思う。かなりステータスが育ってきたと。種の制限は洗礼式後のまま変わらず“中”のままだ。何がきっかけで制限が開放されるのかは分からないがいつか制限が消えるのだろうか?
洗礼式の後、僅かに薄くなったサクラの
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