第37話 文化祭準備編

 親善試合が終わり、学園内で有名になった私ことサクラは今、とても悩んでることがある。


「サクラ殿、拙者に付き合うでござるよ!」

「サクラ殿は忍び愛の方が深いであろう! 某と一緒に愛を語り合おうでござる!」

「サクラ、俺の方に来るだろう? なんたって俺たちの仲だからな!」


 そう、モテ期が来た! ……という訳ではなく文化祭に向けた準備が始まるのだ。七龍学園の文化祭は少し変わっていて、有志の出店しかない。つまり科単位の出し物がなく、生徒がそれぞれ一緒に活動したい人と話し合って一から準備をするのだ。


 楓さんは私が氷華を使ってるからと刀についての出し物をしようと言っていて、ルノアさんは忍者の事を広めたいと言ってきている。

 うん、この二人、親善試合の後もちょいちょい話すようになったのだ。自由人過ぎて授業に出てなかった二人がちゃんと学園に来てくれるようになったと学園長が驚いていたが、むしろ今まで来て無かったことに驚いて欲しい。前になんで来てなかったのか聞いたところ、楓さんは冒険者ギルドに入り浸っていて学園を忘れていたと言っていた。ルノアさんは学園に来てたし授業も受けていたという。忍として忍んでいたから見られてないだけだったとか。それでいいのか三龍生! 

 ちなみに苦労人のクリストフさんは元から真面目に授業に出ていたみたいだ。


 ライアスはSDSのシナリオが始まる前に魔王に対する危機意識を周りに持たせたいと言っている。俺たちの仲というのはもちろん元日本人仲間ということだ。

 と、少し長くなったが私の答えは最初から一択しかない。


「先輩方には申し訳ないですけどサクラは私が唾付けてあるので取らないでくださいね」


 そう、私が一緒に出店するのはカトレアちゃんだ。七龍学園の文化祭はかなり有名だったから入学前から一緒に出店しようと約束していた。


 ちなみにコスプレ喫茶を予定している。人手はルアードさんに頼んで人を貸し出してもらうため問題なし。二人だけでも十分に回せることも計算済みだ。


「ということで私には先約がいるんですよ。楓さんとルノアさん、ライアスには申し訳無いですがお断りさせて貰いますね」

「否、カトレア殿はサクラ殿と同学年でござる。約束を果たすのは来年以降でも良いはずでござろう」

「忍び愛があれば二つ三つの掛け持ちくらいできるでござるよ!」

「おいおい、遊んでる暇無いだろう。早めにあれ魔王について話し合いしとかないと後で困るのは周りの人達だぞ」


 ルノアさんの主張はともかく、本来なら楓さんの言う通りだ。でも私達は来年以降文化祭が出来ない可能性があるのを知っている。


「もう、仕方ないわね。楓先輩とルノア先輩、一緒にやりましょうか。ただし、私とサクラが主導しますからね」


 カトレアちゃんが楓さんとルノアさんの二人に許可を出した。ギリギリまで粘られるよりはいいのかな? 


「俺は?」

「あんたのは文化祭じゃなくてもできるでしょう? 別で時間取ってやりなさい」


 ライアスの質問はバッサリときるカトレアちゃん。それでもライアスは食い下がる。


「俺も一緒に……」

「いい? 私達は喫茶店をやるつもりなの。それともライアスさんはメイド服着たいの?」

「誰が着るか! こっちは遊じゃないんだ」

「なら文化祭でやらずに殿下に直談判しに行きなさい。友達なんでしょ?」

「ぐっ」


 カトレアちゃんがライアスを撃退してくれた。正直、私とライアスが魔王について発表してもよく出来た空想と思われて終わるだろう。下手したら不安を煽ったとか言って捕まるまでありそうだ。そもそも前に話し合って何の成果も得られなかったでしょうが。


 ライアスはシルビアと二人でやるって言って去っていった。その二人なら神霊様から聞いたって言えると思うからむしろ説得力上がりそうだな。ブレインの殿下もいるしより深堀もできそうかな? ……よし放っておこう。


 ―――


 邪魔者も去ったので話し合いを始める。


「拙者たちもメイド殿の装いをするでござるか?」

「いえ、私とカトレアちゃんは執事の格好をして給仕をしようと思ってました」

「? 執事は男の装いでは?」

「だからこそです! カトレアちゃんの和装メイドも捨てがたかったんですが……。カトレアちゃんが執事服の方がましだと……」

「いや、あんな服装はメイドに失礼でしょう。あくまで執事服の方がマシなだけよ」


 うむ。カトレアちゃんはあれだ、私のドア・イン・ザ・フェイスに引っ掛かったのだ。狐姿の和装メイドが見たかったわけではない。んー、でも狐耳の巫女さんも捨てがたい。


「不満があるなら執事服は私だけが着ることにするよ。カトレアちゃんは巫女服にしよう! みんなバラバラの服装にすれば一緒にする必要ないし。コスプレ喫茶だ!」


 刹那の判断で来てほしい服装に誘導する私。この言い方であれば断れまい! 


「なにか嫌な予感がするんだけど……」


 カトレアちゃんの呟きは聞こえなかったことにして黙殺する。


「“こすぷれ”とはなんでござるか?」

「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれましたルノアさん! コスプレとはずばり! 変装して自分の正体を隠す技術のことです! 顔を出しても正体がばれない門外不出の技術なんですよ」

「そ、そんな技術があったでござるか……。サクラ殿は物知りでござるな」


 こら、そこのカトレアちゃん。絶対嘘とか言わない。ばれたらどうするの。


「でもいいのでござるか? 拙者たちに門外不出の技術を教えても?」

「本来はダメなのですが……。先輩達には目をかけてもらってるので特別です!」


 二人とも感動してて罪悪感が……。少し大げさに言いすぎた……。


「ところでサクラ殿、“こすぷれ”とやらで忍者に通ずる要素があるのは理解できたのでござるが、拙者のやりたかった刀に関する出し物はどうするのでござるか?」

「私の巫女服も流されたんだけど……。執事服よりはいいのかしら?」


 忍者要素はそれでいいの? と思わないでもないが本人が納得してるならいいか。そして楓さんのやりたい刀の紹介を喫茶で……。


 ……これ無理では? 


 ―――

<???視点>


 サクラ達が文化祭の準備をしている頃、ある森にて一人の少女が眠りから覚めていた。


「うーん。良く寝た。そろそろ眠るのはお終いだね。そろそろ僕の欠片を持つ人を探さないといけないし。僕のパートナーはどこかなー? どんな人なんだろう……ふんふん。桜庭龍馬・・・・っていうのか。会うのが楽しみ……あれ? 聞いたことがある名前な気がするんだけどどこだったっけ? ……ま、いっか」


 桜色・・の髪に水色・・の目を持つエルフの姿をしたその少女は森を少し歩く。

 少女はふと近くの木に目を向けた。そこには足に穴が開いた男が木に寄りかかって目をつぶっていた。


「君は?」

「……」

「ふんふん。死にかけてるのかな? 何か気になる匂いもするねー。龍馬……、あ、今はサクラだった。サクラの親族なら助けた方が良いよね? えい」


 その少女が木の実を作り死にかけの男に与える。木の実を口に含んだ男は死にかけてたのが嘘のように回復した。


「……。お前はサクラか? ……いや、違うな。起きてすぐあれに似たやつに会うことになるとは……忌々しい」


 その男は礼も言わずに去っていった。しかし、少女は特段気にした様子は無い。


「まずは現状の確認が大切だよね?」


ステータス・・・・・

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