第16話 制限の緩和
洗礼式が終わりカトレアちゃんと二人会場を出る。大人組が扉を出てすぐの場所にいたため直ぐに合流することができた。
「お疲れ様~。洗礼式どうたったかしら~?」
「途中から記憶がないんだよね……。夢を見てた気がするんだけど……」
「あら~? 不思議なこともあるのね~。サクラちゃんが可愛いから創造神様に目を付けられちゃったかしら~?」
「創造神様が? サクラが寝てただけじゃない?」
日本で過ごした記憶がある以上、もとから目を付けられている可能性はゼロじゃないと思うけど……。今まで神様に干渉されたことは無かったからなんとも言えないな。
今更干渉を受けたとしたら教会という神に近い場所に来たからだろうか。
「後ろから見てたけど寝てるなんて分かんなかったね。無事に済んで良かったじゃないか」
「記憶ない時点で無事とは言えないんじゃ?」
カトレア母娘は私が単に寝ただけのことにしたみたいだ。母は……私の娘さすがね~! 程度にしか考えてなさそうかな? ……ま、どちらにしろ深く考えても分からないことに頭を使うよりも建設的か。
「なにが起きたのか思い出したら教えてちょうだいね?」
「へっ?」
カトレアちゃんが小声で耳打ちしてきた。
「サクラが変なのはいつものことだけど今日のサクラはただ寝てただけには見えなかったわ。ローズさんや私の両親には心配かけたくないだろうから誤魔化したけどね」
なんと! 私の意をくみ取りつつも私のことを心配してくれるなんて!
「カトレアありがとう!」
「気にしなくていいわ。というかいちいち抱き着かないで」
「えへへ。モフモフだー」
感動して抱き着く。カトレアちゃんもなんだかんだいってるが、尻尾がゆらゆらしていて喜んでるのが分かる。やはりこのモフモフは至高だ。
「サクラちゃ~ん。夜遅くなってきたしそろそろ帰りましょう~?」
カトレアちゃんの家に戻りしばらく談笑をしていたが夕方になって母が帰る準備を始めた。
「ローズさん、今日はうちに泊まりませんか? もちろんご飯も出しますよ」
そしたらなんとカトレアちゃんのお父さんからお泊りのお誘いがきた!
「ん~、せっかくだしお言葉に甘えようかしら~」
「お、いいねぇ、お酒でも飲もうか!」
「おー、初めてのお泊りだ」
何度も遊びに来たカトレアちゃんの家だが未だお泊りはしたことがなかったりする。小さな時は夕方には家にいたし、大きくなってからはいつも一人で遊びに来ていたため、家に母を一人きりにする選択肢をとれなかったのだ。
「うし、お泊りの準備でもすっか」
「はーい!」
初めてのお泊りにわくわくしつつ食事や布団の準備を始めた。
―――
「「「いただきます」」」
お泊りの準備も終わり、夜ご飯をみんなで食べる。
「うちより味付けがさっぱりしてて美味しいですね」
「お口に合ったなら良かったです。サクラちゃんもお手伝いありがとうございました。家内もカトレアも手伝ってくれないのでいつもは料理中、寂しかったんですが今日は楽しかったですよ」
最近は毎食母の料理を手伝っていた私は一人で料理をするカトレアちゃんのお父さんを放っておけず、手伝いを名乗り出たのだ。
「あはは……。やっぱり二人は料理しないんですね」
「やっぱりってどういうことかしら?」
「い、いや、想像通りだと思っただけだよ」
「はん、旦那様の方がおいしい料理作れるんだから私が作る必要はないでしょう」
「いやー、照れますねー」
「うん。仲良くやってるなら自由だよ」
相変わらずカトレアちゃんの家族は仲がよさそうだ。
―――
カトレアちゃんと一緒にお風呂に入って尻尾を洗ってあげたり、ドライヤーの魔道具で乾かした後、いつも以上にモッフモフになってる尻尾に抱き着いてひっぱたかれたり、一緒のお布団に入って尻尾を抱きしめつつ寝たりした。……あれ? もしや私はカトレアちゃんの尻尾ばかり触っている変態っぽい?
なにはともあれ、楽しいお泊り会をした次の日。私は屋根の上に立っていた。洗礼式で確認できなかったステータスを確認したかったけど何となく誰にも見られたくなかったため。隠れる場所として屋根を選んだのだ。
「ステータス、オープン」
*****
名前:サクラ・トレイル(桜庭龍馬)
種族:ハーフエルフ(種族制限“中”)
生命力:700→1500
魔力:75000→150000〈適正:天〉
体力:C→B
物理攻撃力:G→D
魔法攻撃力:B→A
物理防御力:D→B
魔法防御力:C→A
器用さ:F→D
素早さ:D→B
運の良さ:G→D
特殊スキル:ステータス、アイテムボックス、鑑定
*****
「え……?」
種族制限が大から中に変化してる。これは緩和されたと考えていいよね?
いつ緩和されたのか……怪しいのはやはり洗礼式の間にある記憶のない時間か……。夢みたいなものはこの緩和したことを教えようとしてくれたのだろうか……。んー。考えても仕方がない、母に相談……はどうしよう。今まで特殊スキルのこと隠してたから洗礼式の記憶がないのにステータスを見れることを説明できない。結局なるようになるかと考えるのを放棄した私だった。
―――
<???視点>
サクラが洗礼式に参加した日、ある森にて一人の少女が再度目を覚ましていた。
「んんぅ。また目が覚めちゃった。なんとなくだけど今回はいい夢を見れた気がする!」
少女はニコニコの笑顔だったが、一瞬遠くの方角を見る。
「誰かな? 私に良い夢を見せてくれる人かな?」
少女の呟きに対する返事はない。しかし少女は気にした様子もなくその場に寝転ぶ。
「えへへ。またいい夢を見れますように!」
そのまま少女は眠りについた。
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