第8話 師匠との出会い
「ローズさん、いるかー」
魔力の操作に慣れてきたころ、我が家に厳ついおじさんがやってきた。人攫いか詐欺師か、殺人鬼か!? 贔屓目抜きで綺麗な母に嫉妬をした人が暗殺をいらいしたのかも! それか、とても綺麗で麗しい母を攫いに来た奴隷商かもしれない。少なくとも母の知り合いではないだろう。
「不審者め、成敗してやる!」
「おっと、誰だ嬢ちゃん。ローズさんがここにいると聞いたんだが今いるか?」
新しく覚えた魔力操作を使って身体強化をし、不審者を撃退しようとしたがあっさりと捌かれてしまった。
「怪しいおじさん「お、おじさん……」に教えることはなにもないよ。家から出ていけ!」
おじさんと呼ばれてショックを受けたようだが関係ない。母が出てくる前に撃退せねば!
「サクラちゃ~ん。どうしたの~?」
私の願いもむなしく、すぐに母が出てきてしまった。
「あ、母さま。出てきちゃダメ。怪しいおじさんが来てるの。母さまが狙いみたい」
「あ? 母さまってことはお前ローズさんの娘さんか?」
「はっ。不審者に情報をあた「あら~。ウィードじゃない」えてしまった……へっ?」
「サクラちゃん。このおじさんは怪しいおじさんでも不審者でもないわよ~」
母が笑いつつ私に言う。どうやらこの厳ついおじさんは母の知り合いだったらしい。母はどこでこんな人と知り合ったのだろうか。でもとりあえず注意しなくては。
「母さま、今回は知り合いだったから良かったけど、悪い人だったら危ないでしょ。ちゃんと隠れていなきゃ」
「は? ローズさんが危ない?」
「ウィードは余計な事を話さないように。そしてサクラちゃん? 相手が不審者だったときに危ないのはあなたも一緒よ? ちゃんと隠れなさいな」
ブーメランだった。おじさんをチラ見したときの母に一瞬鬼が見えた気がしたが気のせいだろう。部屋の温度は下がった気がするが...。
「とりあえずウィードは入っていいわよ~。適当にくつろいで待っていてちょうだい。サクラと少しお話してくるから」
「おう。あー、嬢ちゃんはなんだ。……頑張れ」
「はーい……」
おじさんが何者か気になったけれど、その前にお説教タイムみたいだ。がっくし。
―――
「肝が据わっててすげー嬢ちゃんだなー」
「そうなのよ~。危なっかしいところはあるけど、サクラちゃんは可愛くてかっこいい天才なのよ~」
「さすがローズさんの娘だな。まるでばr「ウィード?」いや、なんでもねえ」
お説教がやっと終わったのに次は私のほめ殺しが始まってしまった。ちょっとむず痒い。
この厳ついおじさんはウィードといい、母の昔馴染みらしい。世界を旅したときにいろいろと助けてもらったとか。その時ウィードさんは変な顔をしていたがどうしたのだろう。種族は天翼族で故郷の刀を使ってSランク冒険者まで成り上がったらしい。
食卓に並んでいる日本食もどきはウィードさんの故郷で作られている物で、母に料理を教えたのもウィードさんだし、定期的に日本の材料を仕送りしてくれているのもウィードさんだった。「ローズさん、基本なんでもできるくせに料理はまったくできなくてな……」と、遠い目をしながら母が不器用すぎて料理を教えるのが亜竜を倒すことよりも難しかったと語っていた。
「ねえ、ウィードさん」
「どうした嬢ちゃん」
「刀を教えてくれない?」
「は? そんなの……。いや、そうか。でも刀は持ってるのか?」
「うっ...。持ってないです」
一瞬母のほうを一度みて口ごもっていたが刀を持ってるか確認してきた。もちろん刀なんて持っていない。
ダメか。としょんぼりすると母が少し待っててと一声かけてから倉庫に向かっていった。
「ん~、そうねえ~。これ使ったらどうかしら?」
「は? ローズさん。いいのか? というか嬢ちゃんが刀学ぶのには反対しないんだな」
「倉庫で埃かぶっていたものだから使っちゃっていいわよ~。危ないことはしてほしくないけどやりたいことは何でもやってほしいわ~。それにサクラちゃんは反対しても一人で修行始めちゃいそうだし。独学で変な癖が付くよりはウィードに教えてもらったほうが安全よ~」
倉庫から戻ってきた母の手には真っ白な刀があった。どこかで見たような……? いや、そんなわけないか。
それにしてもさすが母は私のことを良く分かっている。断られたらウィードさんの後をつけようとか考えていたのはお見通しだったらしい。それにウィードさんのことをとても信用しているみたいだ。
「この刀の名前は氷華。魔剣の一種で、魔力を込めてふると切り口が凍り付くわ~。地面とかも凍らせることができるから罠はったりするのに便利よ~」
「きれいな刀だね。高そうだけど使っていいの?」
「もちろんよ~。今まで武器を扱うのを我慢していたご褒美よ~」
単に師匠となる人が見つからなくて武器を扱う訓練ができなかっただけなのだが結果オーライだろう。
母から氷華を受け取る。一瞬だけ氷華が煌めいた。席から立って一度氷華を鞘から出すと一度振るってみる。なんとなく私の手元に氷華があることにしっくりきた。
鞘にしまってウィードさんに向き合う。
「では、ウィードさん。あらためて、私に刀を教えて頂けますか?」
「……ほんとうに刀を扱うの初めてなのか?」
ウィードさんが小声で何か言っていたがよく聞こえなかった。母を見るとニコニコしている。
「ウィードさん?」
「お、おう。刀を持っていてローズさんが反対しないならなにも問題ねえ。筋力は低そうだが身体強化も使えるみたいだしな。筋も良さそう。というか俺よりも才能がありそうだ」
「え……。身体強化ばれてたの?」
身体強化自体は有名な魔法だけど私の年齢で使える人は滅多にいないため、身体強化を使っていると疑われてもばれることはないと思っていた。
「見た目と動きがあってなかったからな。身体強化がないとああは動けねえ。ローズさんに魔力操作を習ってしっかりと練習してるみたいだな。……ローズさんの子だし」
「そうなのよ~。サクラちゃんは天才なだけでなく、とっても努力家なのよ~」
母に褒められた。えへへ。
「ローズさんが親ばかになってる……。嬢ちゃんみたいな子が娘になると思えば気持ちはわかるがあいつらが今のローズさん見たら驚くだろうな」
「あいつらって?」
「
Sランク冒険者の冒険話! 将来旅に出るときの参考になりそうだ。
「今度冒険のお話を聞かせてもらえますか?」
「もちろんいいぜ。いやー、いつも子供に話しかけると必ず泣かれるから嬢ちゃんとおしゃべりできるの嬉しいね。ま、でも先に刀を扱う修行を始めようか」
子供に泣かれるのか。……親に通報されたり攻撃されたりしないだけましかな? この顔だし……。私は中身大人だから大丈夫だけどね! 顔で人を判断したりしないよ!
「お願いします! 師匠!」
「お、師匠呼びいいね。俺も嬢ちゃんのことは修行中サクラと呼ぶかな。じゃあまずは体力を見るぞ。走り込みから開始だ」
「サクラちゃ~ん。頑張ってね~」
こうして刀を扱う修行が始まったのだった。
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