第4話
HRも終わり、一限目、二限目、三限目と時間が過ぎていった。
四限目は僕がもっとも苦手とする数学だったので、窓の外をぼっーっと眺めたり、ラノベのプロットを考えたりして時間を潰す。
数学は正直あまり勉強する気がない。テストにおいても苦手な教科の勉強に時間を使って得意な教科が80点しか取れないなら、苦手な教科の勉強はぎり赤点取らない程度にして、得意な教科で100点を目指した方が結果的に平均点は上がるわけだ。
ちなみに僕の得意教科は暗記教科全般と現代文などの文系科目である。特に歴史なんかは物語感覚で読んでいれば非常に覚えやすく、テスト前に教科書を何回か読んでいるだけなので特に勉強しているといった感覚もなかったりする。
「じゃあ今日はここまで。号令」
気づいたらもう終わる時間。体感では15分くらいしか立っていないんだけどな・・・。ラノベのプロットを考えているとほんとに時間の流れが早い。
あとはいつも通り放課後に図書室で考えることにしよう。
「起立、礼」
「「ありがとうございましたー」」
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授業が終わった途端、ほとんど生徒が一斉に教室から出て行く。
中庭でご飯を食べる人。学食で食べる人。購買で買う人。
もちろん僕はそのどれにも属さない・・・。教室で食べる人だ。
「廉―、どこで食うー」
「んー、いつも通り中庭でいんじゃねー。あ、でも俺購買行かなきゃだから先行っててくれ」
「あいよー」
基本的に中庭は一軍の住処。あそこは完全招待制であり二軍以下の人間が自由に出入りすることは不可能だ、精神的に。あーこわ。
廉なんかは完全に一軍なので自由に出入りできるというわけだ、精神的に。
まあ、僕には関係のないことなので気に留めたこともないが。
いつも通りカバンから母が作ってくれたお弁当を取り出し、イヤホンをつける。
「そーいえば進路希望の紙なんて書いた〜?」
「あ!やっばい忘れてた」
・・・あっ、やべ。僕も忘れてた。ほんとは昨日までだったがどうしてもなんて書けばいいかわからず、明日提出しますって言ったんだった。誰か知らないけどまじナイス。
ちょうど今なら大体の人が移動したあとで人も廊下に人も少ないだろうし行っちゃうか・・・。
うちの学校の職員室は2階にあり、2年の教室がある3階からは一つ降りて目の前なので職員室に行くっていっても数十秒で着く距離なのだが、・・・なぜだろう、高校生になっても不思議と職員室はあまり入りたくないところだ。
「失礼しました〜」
僕が階段を降りてる時、ちょうど黒髪にオーバーサイズのパーカーを着た見覚えのある女子生徒が職員室から出てくるところだった。
「おっ、朝から可愛い先輩に会えてラッキーだね後輩くん」
この人の時間感覚はバグっているのだろうか・・・。
「もうお昼ですけどね神崎さん。遅刻ですか?」
「おっ、その心は・・・?」
「この時間にリュック持って職員室に来るのなんて遅刻した人くらいですって。・・・あと、寝癖ついてますよ」
「えへっ、バレちゃったか。今日も起きられなくてね〜」
ちょっとだけ顔を赤くして寝癖をちょんちょんといじっている。
「環は宿題でも忘れたの?不真面目だなー」
「神崎さんにだけは言われたくないですけどね。まあ、そんなところです」
「たしかに・・・」
さすがに自分でも自覚があるらしい。
「じゃあ僕は職員室に用事があるので・・・」
「ん。じゃあ私も行くね。またあとでー」
「はい、またあとで・・・」
・・・ん?・・・またあとで?
「え、またあとでって・・・」
聞こうとしたが神崎さんは既にヘッドホンをつけているので声は届かない。以上なほどパンパンに詰まったリュックを持って時々ふらふらしながら教室に入っていった。
「あ、環がいいところにいる」
職員室に入ろうとしたところで目的の人が出てきてくれた。これで職員室に入らなくて済むのだからかなり運がいい。
「彩月先生もちょうどいいところに来てくれましたね」
「渡しに来たのって進路希望の紙でしょ?」
「はい」
「じゃあこれと交換ね。さっき話してた神崎さんに渡しておいてー」
「え・・・?」
どうやら扉についている窓から見えていたらしい。
「いやねー、私今から会議なんだよー。別にめんどくさいとかそういうんじゃないからね?」
絶対めんどくさいだけだこの人・・・。友達も少ない陰キャの僕にとって3年の教室に入ることは“死”を意味するということをこの人はわかっていない。
「じゃ。よろしくねー」
「え、ちょま、ほんとに・・・」
前言撤回。僕の運は最高に悪かったです。こんなことならご飯食べてからくるんだった。
さっきの『またあとで』は思ったより早くなりそうです・・・
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