~幕間~
★高村梓の恋心
高校生になった私は、中学時代に仲の良かった友達とは違う学校へと進んだ。
それほど仲のよくないと言うと違うのだけど、一応顔見知り程度の人達が何人かは一緒。
それでも会話もないし見かけても「あ、この人いたような?」程度のものだったし、それはもう他人と言っても変わらないと思う。
一人から始まった四月。
周りにはもう話したり笑い合ったりしている子達がちらほら。
そんな緊張感の高まるこの教室で、席が隣になった男の子がいた。
名前は
彼はなかなかクラスに馴染めなかった私に、積極的に話し掛けてくれた。
優しい人だな。それが彼への最初の印象だった。
「ヒロ、やっぱりあの映画行こう!」
「うーん、まあそこまで言うなら?」
どうも彼には仲のいい友達がいる。同じクラスの相馬君という子がそうらしい。
私はほとんど話したことはないのだけど、春日君とよく一緒にいるところを見掛けていたし何となくそうなのだろうなって思っていた。
そんな二人を見ていて私もこういう友達ができたらいいなって。
一人だからって沈んでばかりじゃ何も始まらないんだって。
次第にそう思うようになっていった。
「高村さんおはよう。あれ、何か元気ないね?」
席替えがあって私達は別々の場所になってしまったのだけど、春日君は相変わらず色んな話や笑える冗談なんかをしてくれて。忘れられてない気がして嬉しかった。
一時期、そういう様子からか他のクラスメイトから「春日君のこと好きなの?」とか「二人は付き合ってるの?」なんて聞かれていたことがあった。
私は「全然違うよ?」ってその時は返してしまった。彼の迷惑になりたくはなかったし、単純に気恥ずかしいのもあったから、平静を装って。
でもね、本当は――本当はね。
「それじゃ、私こっちだから。また明日ね!」
「またな」
毎朝合流するいつもの交差点で、彼と私はお互いに手を振り別れる。
でもいつまでもこんなじゃだめだよね。
クラスもまた一緒になった。今年こそは絶対この思いを伝える。
早速明日から自分を変えていかなくちゃ――
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