第15話 嫌がる男にスカートを履かせるのが私の娯楽

 私はクラスの中で、あまり強い方ではない。カースト上位で誰にでも優しい金山さんや、クラスのボスである倉橋さんなど、そういった人達とは住んでいる世界が違う。


 私が居心地がいいと感じるのは、どちらかと言えば地味地味したところだ。

 例えば、隣の席の天城くんとか。

 そういった人たちと一緒の方が心が楽になれる。


「天城くん、今のイベント何位まで行ってる??」


 私はスマホを片手にそう言った。

 画面にはシャキマスの画面が映っている。


「今は1500位くらいかな!まあ僕的には余裕なんだけどさ!」


 1500位と言うと、中級者くらいのレベルだ。

 はっきり言って雑魚だが、天城くんはなんか知らんけどドヤ顔をしている(可愛い)。


「そうなんだ、すごいね!」


 私はほほえましながらそう言った。


 天城くんと接する時、私は従姉妹を思い出す。と言っても、従姉妹は小2で天城くんは16歳なのだが。


 ふふん、と変な自信を持っている天城くんを眺めるのが私の日課になりつつある。

 そして癒されている。


 しかし、天城くんは最近になって金山さんと仲が良くなってしまっている。


 時々2人が変な場所で落ち合っているのを見かけるのだ。


 私はこう思う、きっと天城くんは金山さんに何か悪いことをされているんじゃないかと。


 だって、あの陰キャの塊的な存在の天城くんが、クラスの中でもカースト上位かつ陽キャの金山さんと仲が良いというのはいささか信じられない。


 私の癒し担当である天城くんが、何か悪いことに巻き込まれていないのか、心配なのだ。


 私はさりげなく、天城くんを助けるために、連絡先を交換したい。

 守ってあげたいのだ、このか弱き子羊を。


「ねぇ、天城くん。ルインとかやってる?」


 あーーーーー、さりげなくできねーーーーー。

 ストレートすぎるだろ、私。


「え、ルインってあのSNSアプリ?あの真なる陰キャには無用の長物とされる例のアレ?」


 物凄い卑屈な返事が返ってきた。

 天城くんは可愛いが拗らせている。


「そ、そう。私もやってるんだけど友達の数が少なくてさ、もし良かったら交換したいなって」


 そう言うと、天城くんは花が咲いたような笑顔になった。

 やば、クソ可愛い、クソチョロ可愛い。


「ほ、ほんと!?嬉しいよ!これで家族以外だと3人目だよ!!」


「え、初めじゃないんだ」


 思わず声に出てしまった。

 軽くショックである。いや、なんでショックを受けてあるのかはよくわからないが、、とにかく初めてじゃないことにショックだ。


 何はともあれ、天城くんのルインをゲットできたのは熱い。

 これで天城くんを見守れるわけだ。


 〜〜


【天城由良視点】


 隣の席の「丸山」さんのルインをゲットしてしまった僕。

 シャキマス上級者の意見でも聞きたかったのかな?何にせよ友達が増えたのは嬉しい限りだ。


 ぽヨォん


「ぬ?」


 早速丸山さんからのルイン。

 通知欄がくるこの喜び、僕は震えている。


『こんばんは』


 まずはあいさつ…か。

 ここは何と返すか、ウケを狙うか、それとも同じように返すか。


『天城くん、もう寝ますか?』


 色々考えているうちに向こうから追いルインが来てしまった。早く返さなくては。


『こんばんは、まだ寝ない予定だよ。丸山さんは?』


『私もまだ寝ないかな。ちゃんとお風呂には入ったの?』


 なんか、心配されてるな。


『入ったよ』


『歯磨きはした?お腹冷やしたらダメだよ?』


 え、なんかこれ違うくね?

 なんか心配されてね?ままじゃね?


『そんなこと言われなくても大丈夫だよ!』


『じゃあおやすみなさい、夜更かしはダメだよ!』


 僕はそんなに非力なのか???



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