第10話 僕は男だ(震え声)
「僕は男だ」
今にも溢れそうな涙を無理やり押さえつけ、震えた声で僕はそう言った。
「ご、ごめんって…」
金山さんが申し訳なさそうに、大量のお菓子を僕に差し出す。
「これ、お詫びといっちゃなんだけど…」
棒にチョコがかかった物や、クリームを挟んだスポンジをチョコで塗り固めた物など、まさにJKセレクションなお菓子たちが差し出された。
僕はクマの形をしたゼラチンを固めて甘く味付けした物を手に取った。僕はこのお菓子が好きなのだ。微妙に値段が高いところも特別感があって良い。
「天城はそれとると思った」
金山さんが僕の何をわかっているのか。僕の怒りはこんな物では収まらない。美味しいけど、収まらないよ、へへ。
「天城くん、すごく、良かったよ!!」
満面の笑みで親指を立てたさくら先輩がそう言った。えらく満足そうで、いつになくハイテンションである。
「もうね、やっぱ見えそうで見えないっていうの?いやまあ見えてはいたんだけど、チラリズムがエロスのキモだと私は思うんだよね。そういう観点で今回のデッサンを見てみれば、やはりこのお腹から脚にかけてのライン、天才か?と言いたくなるような出来だよ!それもこれも天城くんという被写体が良かったからなんだけどね!しかしまぁエロかったよ!ほのかに透ける乳首、内股で隠された太もも、赤らめた顔、お尻!誰をとっても素晴らしかった!!モナリザを描いた時もこういう気持ちだったんだろうな、まるで神秘の世界だ、私にこれを描け!と全身で伝えてくるようだった!芸術の深淵をのぞいたような気分だよ!!!」
怒涛の感想をぶつけられ、僕のダメージはさらに加速した。
「は、はは……」
金山さんも引いてる。でも、あなたも一緒になって描いてましたからね?
「もうね、私濡れました。正直いうと」
「そ、そんな事言わなくていいんです!」
金山さんが慌ててさくら先輩の口を押さえる。いや、興味ないよ?だって僕はあのスケスケ服を着てその痴態を絵に描かれてるんだよ?
そんな事してきた人たちのなんて、とても興味など…。
「こら、天城も先輩の足見るな!」
人は皆、獣なのだ。
〜
そんなこんなで、僕はあのデッサンを受けて部活サボりのお許しをもらった。
罰にしては重かったような気もするが、僕に拒否権はない。僕はいつでも弱い男なのだ。
そして、どういうわけか金山さんが美術部に入部した。さくら先輩と金山さんはどうやら気が合うようで、2人で楽しそうに話していた。
で、僕はというと、部活も出ることになった。とはいえ毎日出る必要はないらしい。さくら先輩は満足したから良い!という事らしい。
「さて、今日は大変だったけど、とりあえず配信するか…」
PCの電源をつけ、ゲームを起動する、そして配信ソフトを立ち上げようとしたその時、
「由良!お姉ちゃんの服を着なさい!!」
お姉ちゃんが乱入してきた。
知らなかったのか?大魔王からは逃げられない…。
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