第2話 僕の夢はこれからだ

金山さんに配信者バレし、僕は絶望と羞恥で震えながら布団にくるまっていた。


まさか、今まであんなにコメントしてくれていた39さんが、圧倒的カースト強者ことギャルの金山さんだとは思いもよらなかった。


明日から学校で何を言われるのだろう……。金山さんは何もしないとは言っていたが、正直ギャルの言うことなど信じられない。


教室に入った途端、身長のでかいギャルたちに連れ去られて、小間使いとしてギャルの巣食う屋敷(マクドナルド)に囚われてしまうかもしれない。はたまた、黒板いっぱいに僕の配信URLを書かれているかもしれない。


想像するだけでゾッとする。そんな事になったら、僕はきっと教卓の上で磔にされ、槍で脇腹を刺されてしまうだろう。そして三日後に保健室で復活するのだ。


震えて眠れない…などと考えていたが、気がつけば瞼は落ちて、朝を迎えていた。我ながらこの寝つきの良さは才能だと思った。


「ほら、早く起きて?」


お姉ちゃんの声で目が覚める。


「まだ眠いよ〜」


僕はそう言って、寝返りを打った。すると柔らかい感触。あれ、これなんだ?


謎の柔らかい物体に手を伸ばし、少し触る。人肌ほどの温度で、やけにサラサラしている。


「ふふ、そんなにお姉ちゃんのこと触りたいの?」


その言葉に、僕は思わず目を開いた。目の前にあったのは、肉厚な壁。さらにそれは、真ん中に谷を作っていた。つまり、おっぱいである。


「お、お姉ちゃん!?」


「えぇ、お姉ちゃんよ」


お姉ちゃんが、僕の布団で寝ていた。何を言っているのか分からないと思うが……以下略。


「由良ちゃん、お姉ちゃんの体、触ってもいいのよ?」


そういうとお姉ちゃんは、布団を捲り始めた。一糸まとまぬ裸体があらわになりかけたところで、僕は慌てて布団から飛び起きた。


「ま、また僕の布団で寝て!何度言ったらやめてくれるんだよ!」


何を隠そう、この姉はこれまで幾度となく僕の布団に入り込んでいたのだ。しかも、裸で。


「ふふ、いいじゃない。姉弟なんだから、スキンシップよスキンシップ」


ニヤけながら、我が姉はそう言った。


「どこに裸添い寝でスキンシップする姉弟がいるんだよ!もうやめてよね!」


僕は地面に散らばった姉の下着やら服やらをベッドに放り投げた。


「まったく、素直じゃないんだから」


お姉ちゃんは渋々、といった雰囲気を出しながら放り投げられた服を着る。毎朝でないにしろ、こういうスキンシップは困る。


僕だって立派な男の子なのだ。朝は家族にバレてはならない物体もある。


「はやく降りてきなさーい」


お母さんの声で、僕とお姉ちゃんは一階におり、朝食を食べた。それから制服に着替え、僕は家を出た。


ちなみにお姉ちゃんは大学生で、地元の国立大学に通っている。頭も良く、美人でスタイルも良い。なのに彼氏はいないらしい。「由良ちゃんに彼氏とか言われるとしんどいわね」とかなんとか言っていった。


学校につき、僕は教室の前で一瞬立ち止まった。昨日の夜のことを思い出す。もし、本当にこれがいじめのきっかけとかになったら……。


そんなことを思い、なかなか教室の扉を開けられないでいた。扉に手をかけ、開こうと力を込めるが、勢いが足りない。さてどうしたものか。いや開ければいいんだけどね。


「何してんの?」


「うわぁ!?」


慌てて後ろを振り返ると、そこには金山さんがいた。なんか、この人が話しかけるタイミング本当心臓に悪いな。


「早く入んなよ」


そう言いながら、金山さんは扉を開けて教室に入っていった。僕もそれに連れて教室に入る。まずは黒板……大丈夫だ。机の上は……大丈夫。


その後も机の中など見たが特に昨日と変わりは無かった。さらに、授業も普通に進み、休み時間も特に誰かが僕の机に来ることはなかった。


そして放課後。あんなに心配して、あんなにビクビクしていたのはまさか杞憂だったのか?自分の情けなさにため息が出る。


下校しようと思い、靴箱へ行くと、そこには金山さんがいた。ここは持ち前の陰キャラ力を発揮してスルーだ!


「お、天城きたか」


ダメだ、向こうの索敵範囲がかなり広い。


「は、はい。なんでしょう」


この時、僕はかなりビビっていただろう。なんせ身体がこわばっているのを覚えている。


「ちょっと一緒に帰ろうよ」


え、俺なんかされる?

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