第296話 いよいよラテスへ報告に
名門家の方々への挨拶を終えると、次は星への【祝福】巡りが待っている。
通常は神父や司祭などの聖職者、もしくは王族などの夢の中で行なったり、姿を見せずに「奇跡」という形で示したりするのが一般的らしいが。
ラテスではオレもフィーネも存在が完全に知られているため、オレが祭られている神殿へ直接赴くことになった。
ちなみに、フィーネが管理している星への【祝福】は、通常通りのものだ。
「ラテスだけ特別でいいのか?」
「いいのよ。星によっては、一般市民は私の存在なんてほとんど信じてないし」
「お、おう。でもおまえそれでいいのか。いや、オレも人間だったときは神様なんて信じてなかったけどさ」
「しょうがないじゃないっ。悪かったわね不出来な神様でっ!」
フィーネはぷいっとそっぽを向いてしまった。
最近はフィーネのことを見直す機会も多くてすっかり忘れていたが、基本的に神様活動という観点から見ると、こいつはぽんこつなのだ。
「悠斗様、フィーネ様、そろそろ向かいましょう。ここからは僕がご案内します」
「おお、助かるよ」
オレとフィーネ、ハクは、いったんラテスの自宅へ戻り。
それからラテス村近くの神殿前へと転移することになった。
神殿につくと、そこにはラテス中の人族や精霊たちが集結していて。
オレたちの姿を確認するやいなや、わっと歓声が沸き上がった。
「……お、お久しぶりです。あの、普通にしていただいて大丈夫ですよ」
「本当に、ハルト様は相変わらず素晴らしい神様ですね。私も王として、国の代表としてもっと成長しなくては」
ヴァリエ王は感心した様子でキラキラと目を輝かせる。
その横には、今や王妃となったガーネットもいる。
「お久しぶりです、ハルト様、フィーネ様、それからハク様も。一時期はどうなることかと思いましたが、変わらず生活できていること、心より感謝申し上げます」
「ラテスの平和が続いているのは皆さんのおかげですよ。こちらこそ、本当にありがとうございます」
森精霊や水精霊をはじめとした精霊たちも、それからドラゴンのファニルもいる。
ファニル……人里は苦手なのに出てきてくれたんだな……。
住民たちを怖がらせないよう人の姿になっているあたりに、ファニルのひそかな思いやりを感じて嬉しくなった。
「ちょっと神乃悠斗、リエンカ家の跡継ぎとして、もう少し神様らしくしてほしいんですけど!?」
「今さら神々しい感じとか逆におかしいし、跡継ぎ云々はラテスの住民には関係ないだろ……。いいんだよこれで。重要なのは、ちゃんと信仰されるかどうかだろ」
「そ、それはそうだけどっ」
「というか、おまえこそもうちょっと女神らしくしたらどうなんだ?」
「私は常に女神らしいわよっ!」
「……ええと、あの、そろそろよろしいでしょうか?」
「――あ、ごめんハク。進めてくれ」
しまった――と思ったが。
以前一緒に暮らしていた時と変わらないやり取りを見てほっとしたのか、固くなっていた住民たちの表情がふわっと和らいでいく。
そしてオレ自身も、先ほどまでの緊張が解けていることに気づいた。
なんかこういうの懐かしいな……。
離島でのスローライフ(というほどスローライフできてないけど!)も楽しいし、神界での生活にもだいぶ慣れたけど。
それでもやっぱり、オレはこのラテスの住民たちが大好きだ。
「この度、ラテスの創造神である悠斗様、それからこちらのフィーネ様が正式にご結婚なさいました。2人が結ばれたことを祝して、これからラテスに、そして皆さまに【祝福】をくださいます」
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