第12章 ランクA 結婚、そしてその先へ
第289話 結婚前日に思うこと
オレとフィーネの婚約が正式に伝えられてから1年が経ち。
明日はいよいよ結婚式が行われる。
そしてオレはというと。
人生二度目でありながら初めて経験するこのイベントを前に、既に心臓がバクバクと飛び出そうなほど脈打っていた。
結婚式は神界をあげての一大イベントになるらしく、リエンカ領全体がまるでお祭りのように活気づいている。
――うん。
「ち、ちょっと待て! こんな盛大な結婚式なんて聞いてないんだが!? というかもはやこれ国王とかそういうレベルの規模じゃねえか!」
「……はあ? 何言ってるのよ当然じゃない。名門家は領域を司る神の一族なのよ? 国王どころじゃないわよ。君、うちのこと今まで何だと思ってたのよ……」
「そうですよ。悠斗様なら大丈夫です、堂々としてくださいっ」
「くっ――ハクまで!」
というか前日でこのレベルって、明日はいったいどうなるんだ……。
「明日の式に向けて、ラテスでも着々と準備が進められてます。明日は神界での挙式とお披露目を終えたあと、ラテスへも顔を出して【祝福】を授けていただきますよ」
「そ、そうだった……。いやでも、うん。ラテスのみんなにはちゃんと報告したいし、お礼もしたいからな。ハク、何から何までありがとな」
「いえ。僕は元々、【何でもしてくれるモフモフ】ですから。これくらいお安いご用です。それに天使たちも手伝ってくれましたし」
ラテスでは、今や人族と精霊が互いの文化や生活を尊重し合い、垣根なく共存するスタイルが根付いている。
ちなみに、ラテス唯一のドラゴン・ファニルは相変わらずの1人好きだが。
以前山で遭難しかけていた人族を助けて以降、いつの間にか山の守り神のようなポジションに祭り上げられてしまったそうで。
困惑しつつもそれを受け入れ、数か月に一度は供物を捧げられる儀式を受容する生活を送っているらしかった。
「そういえば、ヴァリエ王とガーネットさんは仲良くやってるかな」
「はい。ヴァリエ王はもちろん、ガーネット様も元々は王族の方ですし、順調に国を築いているようですよ」
オレが離島に移住してしばらくした頃、ヴァリエ王の猛アタックによって2人は恋仲へと発展し、見事結ばれることとなった。
2人が結婚したことで、ラテス村とエクレアは1つの国として発展しつつある。
今はエクレアを囲っていた城壁の一部が取り壊され、ラテス村と一体化させるための工事も進んでいる。
また、オレが元々住んでいたあたりには、新たに神殿も建てられた。
これは人族と精霊が協力して建てたものらしく、オレを祭っている祭壇には毎日のように誰かが訪れている。
正直かなり恥ずかしいが、それで平和に暮らしてくれるならまあ安いものだろう。
人族に与えられた精霊の力(仮)が健在であるということは、今のところ特に問題も起こっていないはずだ。
後から救済召喚した第3の民族・旧トリル人たちも、今では大陸の東側に3つほど小さな村を作って生活しており、その1つ1つが国に発展し始めているらしい。
このトリル人たちは、元々まったく違う国からの寄せ集めで。
共通点は「トリル」という星の住人だったということのみ。
それゆえに文化も様々で、1つの国としてやっていくのは難しかったようだ。
「そろそろ動物も入れてもいいかもな」
「そうですね。小さな動物から入れて様子を見ていきましょう」
「……なんか申し訳ないわね。君がこんなに頑張ってくれるなら、もっとちゃんとした星を与えるんだったわ。今からでもほかの星に移植する? スターティア家の力を借りれば、多分住民には気づかれないと思うわよ」
「いや、いいよ。せっかくラテスでここまでやってきたんだし。足りない部分は少しずつ改変して創っていけばいいだろ。今ある力に影響が出ても困るしな」
ラテスもオレなしで動き始めたとはいえ。
まだまだ改変が必要な点も多い。
でも、だからこそ。
この「始まりの地」を、今後も大切に育てていきたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます