第288話 それぞれの道、そして覚悟

「話が急展開すぎてついていけないんですけど!? というか私の意見は!?」

「いいじゃないか。恩には報いるものだよ、フィーネ」

「――そ、それはそうだけどっ」


 エリアがリエンカ家で働くと決まったあと、フィーネとリンネ、クリエ、それからハクも招集され、改めてバースから紹介がなされた。

 フィーネはあの事件のあと、休養を兼ねてほとんどラテスから出ていない。

 そのため、追放の件すら知らなかったらしい。


「追放の件は話題になってたけど、それでどうしてうちが面倒見ることになったの? まさか間取り図の流出先ってうちじゃないでしょうね?」

「私は賛成よ。ランジ様ももったいないことするわね~。まあ流出させたのは事実だし、何かしら罰は受けることになると思ってたけど。でもまさか追放とはね~」


 クリエはそうため息をつく。

 リンネはここ最近婚約者の家に行っていたため、フィーネが監禁された事件のことを知らない。

 そのため、何が何やら訳が分からない様子だった。

 ちなみにハクは文句こそ言わなかったが、少し不服そうな顔をしていた。

 忠誠心が高い分、オレを始めとするリエンカ家に失礼な対応をしたエリアを受け入れ難いのかもしれない。


 ――でも、以前のハクなら絶対こんな顔に出さなかったよな。


 そう思うと、この反応もなんだか微笑ましい気がする。


「今後エリアには、うちで私やフォルテ、それからハルトの手伝いをしてもらう」

「!? そんな重要な役目を!?」

「なんだい、不服かい?」

「そ、そういうわけではありませんが……」

「君は仮にも元スペース家のご子息なわけだし、迎え入れるからには相応の待遇を用意するのが礼儀というものだろう。私は、相手の足元を見るようなやり方は好きじゃないからね☆ だから君も、それに恥じない働きをしなさい」

「は、はい。承知しました」


 事情を知っているクリエ以外はそれぞれ思うことはありそうだったが、しかし何だかんだでバースの決定に反対する者はおらず。

 エリアはリエンカ家の右腕として正式に迎え入れられることとなった。


「――ああそうだ。それからもう1つ報告がある。ハルトとフィーネの結婚が正式に決まった。ハルトには、リエンカ家の次期当主になってもらうつもりだ。みんな異論はないね?」

「え!? ちょ――」


 こんな突然報告されるなんて聞いてねえええええ!!!

 というかリンネさんにはここ最近会ってなかったし、こんな展開絶対予想すらしてないだろ……。

 オレ元々はよそ者なのに、こんなん受け入れられるわけ――


「私は賛成よ。問題はフィーネにリエンカ家当主の妻が務まるかどうかだけど……でもきっと、今のフィーネなら大丈夫ね~。応援してるわよ♪」

「私も異論はないわ。以前なら私がと思ってたけど、ハルトくん相手じゃどうしたって勝ち目はないもの」


 ――――え。う、受け入れられた、だと?

 あの、何かと足を引っ張ってでもフィーネに負けたくないリンネさんに?

 いやまあ、リンネさんも別の名門家に嫁ぐことが決まってるらしいけど……でもそれはそれ、これはこれだと思ってた。


「……何、その顔。私が受け入れたのが意外だったかしら? 言ったでしょ、私は絶対勝てない勝負はしない主義よ。見苦しいだけだもの」

「あ、いや、ええと。すみません……」


 どうやら顔に出てたらしい。しまった……。


「はっはっは。リンネは少し負けず嫌いなところはあるけど、賢い子だからね☆ 君の実力はちゃんと認めているよ。まあ、そういうわけだ。ハルト、将来私のあとを継いで、リエンカ家当主を務めてくれるかい?」

「…………は、はい。責任を持って務めさせていただきます」

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