第286話 エリアを連れてリエンカ家へ
「――え? ハルト殿の家というと、リエンカ家でしょうか?」
「うん」
「いやいやいやいや、行けるわけないでしょう。バカなんですか? いったいどの面下げていくんですか。絶対嫌です」
全力で拒否されてしまった。
が、ここで引き下がるほどオレは物分かりの良いタイプじゃない。
いや、元々はいいタイプだったけど。
でもこっちに来て、諦めたらいけないと学習したんだ。
「べつにおまえが事件起こしたわけじゃないだろ」
「そ、それはそうですけど。でもスペース家の当主――父上が起こしたことですし、普通そこは家として見られるものでは? 私も無関係ではありませんしね」
「でもおまえはもうスペース家の一員じゃないんだろ? だから天使も連れずに1人でこんなところにいるんだろ?」
「…………それはそう、ですけど」
エリアは泣きそうな顔でうつむいてしまった。
――はあ。
こんな状態なのに、こんな山奥に1人でいたのかこいつは。
どうしようもなくイライラするのは、そして放っておけないのは、エリアを見ているとブラック企業で使い潰されていた自分を思い出すからなのかもしれない。
「とにかく! こんなとこに引きこもってても仕方ないだろっ! 怒られてもそのときはそのときだ。時間が経てば経つほど出ていきにくくなるぞ」
「……そん、な、そんな簡単なことではっ。相手はリエンカ家ですよ!? スペース家を追放されて、リエンカ家にまで明確に敵視されたら、後ろ盾のない私なんて」
「うるせえ。とにかく行くぞっ!」
オレは強制的にスキル【転移】を発動させ、エリアを巻き込んでリエンカ家神殿へと戻った。
「――な、なんてことするんですかっ!」
「はは、おまえの親だってフィーネを拉致しただろ。ほら往生際が悪いぞ。歩け」
「はあ!? まったくあなたという人はっ!」
オレは抵抗するエリアを無理矢理引っ張って、とりあえずフォルテの執務室へと向かう。
「――フォルテさん、今いいですか」
「どうぞ、入って」
「失礼します」
「…………」
「何か用事かし――え、エリア!?」
フォルテは振り向きざまに声をかけ、そこにエリアがいることに気づいて驚いて席を立つ。
「ひっ――その、申し訳ありませんっ! あんな事件を起こしておきながらリエンカ家の神殿へ足を踏み入れるなど」
「あなた無事だったのね!」
「――――へ?」
真っ青になって怯えるエリアを前に、フォルテは安堵の声を漏らす。
「スペース家を追放されて行方不明だという噂を耳にして、どこへ行ったのかと心配していたのよ」
「え、ええと……あの……」
「大丈夫? ランジ様に酷いことはされていないかしら? 今までどこにいたの?」
質問責めにしてくるフォルテを前にして、エリアはどう答えていいものかと困惑した様子で口をパクパクさせる。
「スペース領近くの森の奥に隠れてたので、オレが無理矢理引っ張ってきました」
「……そう。本当はスペース家へ戻してあげたいけれど、残念ながら私にその力はないの。ランジ様が追放と言われたのなら、それが全てよ」
「……はい。分かっています」
「あなた、これからどうするつもりなの?」
「…………」
「……まあそうでしょうね。少しここで待っててちょうだい」
フォルテはそれだけ行って、オレとエリアを残して部屋を出ていった。
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