第285話 孤立したエリアとの再会

「バースさんすみません、今日の訓練、お休みにしていただけませんか」

「それはべつに構わないけど……どうかしたのかい?」

「ちょっとどうしても行きたいところができまして」

「……ふむ。分かった。何かあれば、無理せず相談するんだよ」

「はい。ありがとうございますっ」


 バースに半休の許可を得て、オレはエリアがいるというスペース領近くの森とやらを探すことにした。


 ――というかオレ、1人でリエンカ領出るの初めてなんだよな。


 監禁事件の際もエリアに来てもらうばかりで、結局オレは一度も出向いていない。

 スペース領付近へ行ったのは、あのパーティーの日の一度きりだ。

 しかもあの時は招待されていたことで一瞬でスペース家まで転移できたが、今回は地図を見ながら自分で向かう必要がある。


 とはいえ、神界にはいたるところに【転移スポット】が設置されているため、距離はあまり関係なく。

 スペース領近辺までは数分で着いてしまった。

 問題は――


 ――スペース領を出た先にある森って、森の範囲めちゃくちゃ広いじゃねえかああああああ!!!


 しかもエリアが使用していた【カプセルホテル】は普通の一軒家レベルに小さく、さらにやたらと奥地にひっそり建てていて。

 森に入ってから見つけるまでに数時間かかってしまった。

 オレからの連絡に応えたということは、心のどこかで探してほしい、助けてほしいと思っていたはずだ。

 それなのに! まったくこれだから捻くれ者は困る。


「やっと見つけたぞこの野郎……」

「……な、なんかこの数時間の間にずいぶんとキャラが変わりましたね」

「なんでこんな奥地に引っ込んでるんだよ。見つけづらいだろっ! というかこんなことになってんなら連絡くらいしろよっ!」

「ええ……。正直ハルト殿に連絡する発想はなかったです……。というかこんな山奥までいったい何しに来たんですか」


 こいつ本当可愛くねえ!!!


「金があるならせめてホテルに泊まるとか、何かあるだろっ」

「……追放されたと神界中に知られてるのにですか? 私はハルト殿と違って、そこまで神経図太くないんですよ。それになんかもう、疲れてしまったんです」

「おまえはそれでいいのか?」

「いいも何も、父上相手では何をしたって敵いません。転生者であるあなたには分からないかもしれませんが、スペース家というのはそれだけ大きな力を持った名門家なんです」


 つまりこいつは、ランジに先手を打たれて完全に孤立してしまったということか。

 本当、これだから権力者というやつは。


「……一応確認するけど、おまえフィーネに興味があるわけじゃないんだよな?」

「ないですよ。誰があんな我儘な令嬢好きになるんですか。正直、ハルト殿の気が知れませんね」


 それはそれで殴りたい!!!

 いやでもここはまあ、興味がないならよしとするか。


「なら提案がある。エリア、おまえうちに来ないか?」

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