第284話 エリアの行方
「――え? エリア様から連絡、ですか? あの一件以降は特に何も」
「…………そう」
フィーネ監禁事件が解決して半月が経ったころ。
突然、フォルテに「エリアから連絡はないか」と質問された。
あれ以降、スペース家には一時的かつ秘密裏にランクSの監視員がつけられているらしいのだが。
しかし名門家の機密情報が漏えいすれば神界に混乱が生じる、という理由から、その情報は厳重に管理および秘匿されている。
現在、リエンカ家との交流はほぼ断たれた状態。
つまり、こちらからスペース家の内情を伺い知ることはできないわけだ。
……とはいえ、フィーネも戻ってきて婚約云々もなくなった今、特に気にする理由もない気がする。ということは。
「……何かあったんですか?」
「……実は、エリアがスペース領を追放された、という話を聞いたのよ」
「はあ!?」
「直接聞いたわけではないのだけど、ランジの言い分としては、スペース家の非公開情報を漏えいさせた罪は重い、ということらしいわ。ランジはあれでも当主だから、彼の決めたことには違法性がない限りランクSも口出しできないの」
「そんな……じゃあ今、エリアはどこに?」
あんなに家のために尽くしてきたエリアを追放?
エリアの行動で自身の罪が暴かれて、裁かれる結果になったから?
あいつは今、いったいどんな思いで――。
「それが分からないのよ。領から追放されると、結界に弾かれて領内には入れなくなるの。だからどこか別の場所にいるはずなのだけど、彼の気持ちを思うと心配で」
「……そう、ですか。ちょっとオレも探してみます」
「ええ。もし何か分かったら教えてちょうだい」
◇ ◇ ◇
午前の授業が終わると、午後の訓練までは自由時間だ。
オレはいつものように昼食を取り、体を休めるため自室へと向かった。
――エリア、今どうしてるんだろうな。
連絡をとってみるべきだろうか?
いやでも、オレあいつからしたら諸悪の根源のような立ち位置だしな……。
けどもし今困っていたら……。
――はあ。
まあどうせ元々好かれてはいないわけだし、連絡するだけしてみるか。
嫌なら出ないだろうしな。
オレは連絡先からエリアを選択し、通信を試みた。
『――はい』
「お、出た」
『…………何の嫌がらせですか』
「ああいや、そうじゃなくて。その――ちょっと噂を耳にして。エリア様は今どこに? よければ少しお話しませんか」
『……私と話してどうするんです? 私はもうスペース家の跡継ぎどころか一員ですらありませんし、接触してもいいことなんてありませんよ』
エリア側からは、エリアの声以外なにも聞こえてこない。
おそらくどこか静かな場所に1人でいるのだろう。
「今後のあてはあるんですか?」
『……はあ。あると思いますか? スペース家を敵に回したも同然の私を相手にする愚か者なんていませんよ』
どうやらオレが知らなかっただけで、神界では一大ニュースになっているらしい。
エリアが下手に動けないよう、ランジが手を打ったのかもしれない。
『まあ私財を没収されたわけではないので貯金はありますし、生きていく分には当分はどうにかなります。それが尽きたら、その時が死に時ですかね……』
「……ということは、今は完全フリーなんですね?」
『フリー……まあそういうことになりますね。すべてを失っただけですが』
エリアの乾いた笑いが聞こえる。
その声色からは、相当な疲労が感じ取れる。
――これはあれだな。放置すると危険かもしれない。
以前、人間だった頃。
上司のパワハラに追い詰められて自殺した社員がいたのだが。
そいつが死ぬ前こんな感じに弱っていたのを思い出した。
「だったら、オレと会っても差し支えはありませんよね? 今どこです?」
『……スペース領を出た先にある森の一角に、【カプセルホテル】を建ててしのいでます』
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