第282話 やっぱりバースさんすげえ……
「はっはっは。2人とも、ついにともに歩む決意を固めたか! ああ、もちろん私は大賛成だよ☆ おめでとう!」
フォルテと話したあと、オレはフィーネとともにバースへと報告に向かった。
バースとはもはや親子のような、それでいて師匠と弟子のような近しい関係だが。
それでもやっぱり、フィーネとの正式な婚約をと願い出るのは緊張した。
が、まあ結果はこんな感じだった。
いつも通りすぎるバースのテンションに、むしろ気が抜けてしまったくらいだ。
「式はいつがいいかな? 準備もあるから、半年後くらいはどうだい?」
「えっ!? え、そんな急ピッチで進むもんなんですか」
たしかに婚約は婚約だけど、そもそもオレとフィーネは今まさに付き合いだしたスタート地点にいるんだが!?
「現状、ハルトはうちの跡継ぎに決まったようなものだからね☆ その自覚を持ってもらうためにも。公の場に顔を出したり、仕事を覚えてもらったり、やることは山積みだよ。普通は幼少期から教育されるものだから、むしろ遅いくらいだ」
「ま、まじですか……今よりさらに……!?」
「ハルト、多くの領民をまとめるというのは、そして名門家として生きるというのは、そんな容易いものじゃないんだよ。うちが生と死を司る一族として機能するためには、多くの神族の、そしてその下に生きる者の力を借りなくてはならない。だからハルトも、その力を借りるに相応しい神族になる必要がある。分かるね?」
「…………はい」
バースは普段、明るくラフに振る舞っているが。
しかし話をすればするほどその偉大さに圧倒されてしまう。
心身の強さはもちろん、機転、柔軟さ、人当たりの良さ、気遣い……そのどれを取っても一流だと感じさせられる。
たしかにこれは、一朝一夕で身につくもんじゃないよな。
オレは、そんなバースさんの後を継ぐのか……。
「――とまあ、少し堅苦しい話をしてしまったが、要はあれだ。どこぞの当主のように、押しつけや決めつけで支配しようとしてはいけないよ、という話だ。驕らずちゃんと相手を見ていれば、自然とやるべきことも取るべき態度も見えてくる」
「父様、気づいてたの!?」
「うん? まあ何のことかは聞かないことにしよう。私はフォルテを信頼しているからね。彼女が言わないと判断したならそれでいい。これからも2人の成長を楽しみにしているよ」
「はい。ありがとうございます」
――半年後、か。
半年後には、オレとフィーネは正式に――
「神乃悠斗、期待してるわよ」
「お、おう」
「はっはっは。あまり思いつめてはいけないよ。ハルトにはハルトの魅力があるんだから、それを大切に育てなさい」
「み、魅力、ですか。頑張ります……」
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