第280話 フィーネ奪還成功! そして……

「エリア様――! そうよ、こんなところに監禁されたのも、母様に叩かれたのも、元はと言えば全部あなたのせいよっ!」

「――え。ええと、はい。その」


 フィーネはエリアの前で取り繕っていたはずの自身のキャラを忘れ、素のテンション全開でエリアの方を指差す。

 そんなフィーネの豹変っぷりに唖然としつつも、エリアはどうにか気持ちを立て直して。


「こ、この度は本当に、本当に申し訳ありませんでした。フィーネ嬢をはじめとしたリエンカ家のご令嬢との婚姻は、きっぱり諦めると誓います」

「当然でしょ! 誰があんな暴君当主のいる家になんて嫁ぐものですかっ」

「フィーネ! あなたいい加減にしなさい!」

「……いえ、いいんです。私も以前から、父上の強引さには疑問を感じていました。ですが私は跡継ぎとしてそれを良しとする教育をされてきたので、自分の感覚に自信が持てなかったんです。それに、父上に見限られるのが怖かった。正直、今もどんな処罰が下されるのかと怖くて仕方がありません。でも今は――」


 エリアはうつむき、ぽつぽつと胸の内を語った。

 今回の件は、エリアの協力がなければ絶対に成し得なかったことだ。

 直近の動向を調べれば、きっとすぐにエリアが関与しているとバレてしまう。


「……お話の途中で申し訳ありませんが、いったん地上へ戻りましょう。これから、ランジ様ともお話をしなければなりませんので」

「ええ、そうね」


 調査官であるランクS神族は、いつの間にかフィーネを監視していた男を拘束し終え、事情聴取へと入っていた。

 地上へ戻ると、1階の広間には拘束されたランジとルーム、それから見張りのために待機していた1人の調査官がいた。


「フィーネ様、ご無事で何よりです」

「……この度は私の身勝手な行動でご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」


 フィーネは、同行してくれた3人の調査官に向けて頭を下げる。

 さっきまでの我儘姫な性分は一切垣間見せない見事な対応に、オレもエリアも思わず固まってしまった。

 ちなみにどちらも見ている調査官2人は、何でもない様子で受け入れている。

 職業柄、こういう二面性を見てしまうのは日常茶飯事なのかもしれない。


「フォルテ様のご意向により、これから話し合いの場を設けます。ここでは何ですので、一度大神殿へ向かいましょう」


 調査官の1人が転移の神力を展開すると、一瞬にして全員が大神殿へと送られる。

 大神殿へ戻ると、待機していたクリエとハクが迎えてくれた。


「フィーネ! 無事でよかったわ~。まったく、なんて無茶なことするのっ」

「ごめんなさい。だって許せなかったんだもの」


 クリエはフィーネをぎゅっと抱きしめ、背中や頭を優しくなでる。

 ハクは、その様子を半泣き状態で、またほっとした様子で見守っていた。


「ランジ様とフォルテ様はどうぞこちらへ。ほかの皆さまは別室で待機していてください。必要があればお呼びいたします」


 調査官に促されて、オレとフィーネ、ハク、クリエ、エリアは、別室で話し合いが終わるのを待つことになった。

 拘束されていたルームと監視役だった男は、さらに別の部屋へと連れていかれる。


 待機中、エリアは1人怯えた様子で無言を貫いていた。

 この怯えは、オレらリエンカ家へ対するものなのか、それとも――

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