第278話 名門家の裏の顔

 ――あ。しまった。

 え、というかこれどうすんだ?

 フォルテさんは何か考えて証拠を提出したはずだと思うけど。


「……え、ええと。この質問には絶対に答えなければならないかしら。リエンカ家の能力に関わることだから、あまり言いたくはないのだけど」

「失礼いたしました。それならば結構です。スペース家へ実際に行って調べれば分かることですから。ただしこれが虚偽の報告だった場合、処罰されるのはリエンカ家ということになりますが」

「それは構わないわ。悠斗がそんなくだらない嘘をつくとは思えないし、フィーネが行方不明なのも事実だもの」


 フォルテは、ほっとした様子で胸をなでおろす。


 あれ、たぶんこれ何も考えてなかったやつだ……。

 フォルテさんも、やっぱり内心はかなり動揺してるんだな。


「――それではフィーネ様の身も心配ですから、これから調査へと向かいましょう。皆さまにも同行していただきます。身の安全はセキュリ家に護衛を依頼しますのでご心配なく」

「それは助かるわ」


 セキュリ家というのは、過去にバースが弟子入りしたという神界守護を司る一族のことだ。

 戦闘や護衛でセキュリ家の右に出る者はいない。


 ◆◆◆


「フィーネ・リエンカ様監禁の調査依頼を受け、大神殿より参りました。証拠も出ていますので、調査は強制的に執行されます」

「なっ――何をでたらめなことをっ! うちは由緒正しい名門家だ。そんな勝手なことをされては困る。エリア、これはいったいどういうことだ!?」


 ランジは突然の調査に驚き、憔悴した様子でエリアを睨む。

 エリアはびくっと身をすくませ、何か言おうとするもうまく言葉が出ない様子だ。


「ランジ、うちの娘を返してちょうだい。あなた自分が何をしたか分かっているのかしら?」

「だ、だから私は何も――っ」


 ランジはそう言いながら何か術を展開しようとしたが、しかし。

 何度やってもうまくいかない。


「な、なぜ――」

「今、ここは聖神様の力で一時的に神術が発動できなくなっています。ランジ様、あなたいったい何をしようとしたんですか? まさか、フィーネ様を異空間に隠そうなんて考えてませんよね?」

「――っ」


 結局、ランジ、そして様子を見に来たルームは、調査役の1人によってあっさりと結界に封じ込められてしまった。

 由緒正しい名門家の当主も、ランクA神族も、ランクS神族には敵わない。


「エリア様、フィーネ様がいるとされている場所に案内していただけますか?」

「は、はい……」


 結界の中でランジが何やら訴えているが、声を通さない結界に遮られて何を言っているのかまでは分からなかった。


 ――ランジ様、あのパーティーのときは、本当に朗らかでみんなを楽しませようとする魅力的な当主に見えたんだけどな。

 神族にもこんな裏表のあるヤツがいるのか……。

 オレを救済召喚したのがフィーネで、リエンカ家の娘で本当に良かった……。

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