第277話 調査申請のため大神殿へ
「……この度は、うちの父が本当に申し訳ありませんでした。父上は、フィーネ嬢とうちとの間に子どもがほしいと思っているのです。ですので、監禁して説得しようと思ったのだと……」
「それは分かっているわ。でも頑張ってきたあなたには悪いけれど、世の中うまくいかないこともあるの。ランジも子どもじゃないのだから、弁えてもらわないと困るわ。私にとって、フィーネは跡継ぎ以前に娘なの。本当なら、今すぐ表沙汰にしてスペース家を神界追放にしたいくらいよ」
「…………」
エリアは無言のまま、深く頭を下げる。
フォルテは表向きは、いつもの冷静さを保ってはいるが。
しかしその奥からは強い怒りの感情がひしひしと伝わってくる。
「……私はこれから、どうしたらいいでしょうか?」
「あなたには、これから私と一緒に大神殿へきてもらいます。そこですべてを話して、それから調査担当とスペース家へ向かうことになるわ」
「分かりました」
「悠斗くん、あなたも来てもらえるかしら」
「もちろんです。……この件、バースさんには伝えなくていいんですか?」
「バースに話せば、立場上厳正な対処をせざるを得なくなるわ。そうなったらスペース家はおしまいよ」
な、なるほど……。
フォルテさんだって、本当は1人で不安なはずだ。
娘を、フィーネを人質に取られているようなものなんだし。
……オレもしっかりしないとな。
◆◆◆
大神殿へと向かうと。
待ち合わせていたのか、クリエ、そしてハクが出迎えてくれた。
「悠斗様っ! フィーネ様は……フィーネ様はご無事なんでしょうかっ」
「ハク、来てたのか。一応、今のところは多分無事なはずだ」
「そう、ですか。よかった……」
ハクはそうホッとした様子でため息をつき、そしてエリアに気づくと警戒心をあらわにキッと睨みつける。
ハクがこんなに怒ってるの、初めて見た気がするな……。
「ハク、やめなさい。エリアに怒っても仕方がないわ」
「………はい。申し訳ありません」
フォルテに諭され、耳をペタッとさせてしゅんとうつむくハク。
その目には、うっすらと涙がにじんでいた。
ハクも、フィーネが心配でたまらないのだろう。
「ハク、あんまり報告できてなくてごめんな。フィーネはちゃんと助けるから、心配しなくても大丈夫だ」
「……はい」
ハクの頭をなでてやると、少しだけ落ち着きを取り戻したようだった。
「……それで母様。とにかくフィーネは無事なのね?」
「ええ。おそらくは」
「……世界を育て守る立場である神族が、しかも名門家がこんな事件を起こすなんて、決して許されることじゃないわ。こっちよ。ついてきて」
オレ、ハク、エリア、フォルテは、クリエ案内のもと大きな部屋に通された。
そこには長いテーブルとたくさんの椅子がある。会議室か何かのようだ。
オレたちが席についてすぐ、3人の神族が入ってきた。
クリエが、調査担当のランクS神族だと説明してくれた。
エリアはうつむき震えている。当然だろう。
それでも必死で現状を受け入れ立ち向かおうとする姿勢は痛々しく、見ているこちらの方が苦しくなってくる。
――実際年齢は知らないけど、まだ子ども、だよな。たぶん。
こんなところに犯罪者の息子として1人で連れてこられて、話をしないといけなくて、どれだけ心細いだろう?
フォルテはオレが渡した【記憶SHOT】写真を机に並べ、説明を始める。
エリアも、スペース家の事情や天使から聞いた内容を始めとした関係事項を正直に打ち明ける。
「……ちなみに確認です。この【記憶SHOT】はどうやって撮ったんですか? 話によると、ここはスペース家の立ち入り禁止領域のようですが」
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