第276話 神界と世界のための判断


「――あ、あなたなんて無謀なことをっ。万が一見つかったらどうするのっ。しかも立ち入り禁止領域を隠し撮りだなんて、表沙汰になったら大問題よ!?」


 オレは、フィーネを見つけるまでの一部始終をフィーネに打ち明けた。

 机の上には、【記憶SHOT】で撮影した写真をプリントしたものが並べてある。


「すみません……」

「……はあ。まあでも、これで現状フィーネが無事であること、この位置に捕らわれていることがはっきりとしたわね」

「この件、エリアにはどうしますか? 一応、上位神鉱石の粉末を壁に付着させる手伝いをしてもらってるので、どこかのタイミングで何かしらの報告は必要かなと思うんですが」

「……そうね。今すぐ呼んでもらえる?」

「分かりました」


 オレはエリアへ連絡し、今すぐに来てほしいと伝える。


「何です? 先日も言いましたが、あまり私を安易に呼ばない方が――」

「エリア、大事な話があるから、執務室まできてちょうだい」

「――リエンカ夫人。わ、分かりました」


 オレとエリアが執務室へ入ると、フォルテは入り口付近で天使と何か話をし、それから中へ入ってきた。


「――この写真を見てもらえるかしら」

「? ――っ!? え、こ、これは!?」

「これは、先日あなたに頼んだ粉末を使って悠斗が撮影したものよ」

「粉末を!? というか、じゃあここって」

「そう。スペース家の立ち入り禁止領域内よ」

「…………」


 エリア自身も見たことのない、スペース家の秘密の領域。

 そしてその先にある一室に映るフィーネの姿。


「――ここでフィーネと何か言い合っている誰かに心当たりはない?」

「……父上の右腕として働いている男です。ルームという名前で、たしか名門家出身ではないですが、ランクAの神族だったと思います」

「そう。ありがとう」

「……でもそうですか。本当に、本当に父上はフィーネ嬢を」


 エリアはうつむき、悔しそうに唇をかむ。

 ずっと家のために頑張ってきたエリアにとって、この現実はどれだけ受け入れがたいことだろう。


「そうね、残念だけれど。……エリア、これから大事な話をするわね」

「…………はい」

「スペース家当主であるランジは、リエンカ家の娘、しかも跡継ぎを監禁した。これは神界の、そしてこの世に存在する全ての世界の未来を脅かす重罪よ。彼がスペース家当主である以上、スペース家は相応の処罰を受けることになるわ」

「……はい」

「でも、そうは言ってもスペース家は仮にも名門中の名門。管理領域が膨大なうえ代わりもきかないでしょうから、うちがそれをよしとすれば取り潰しは免れるわ。私は、フィーネが無事に戻ってくればそれを承諾するつもり。これはランジのためでもスペース家のためでもなく、神界を含めた世界のためよ」


 ……フォルテさんすげえな。

 自分の娘が監禁されてるのに、それでも一番に考えるのは世界のことなのか。

 こんなことされて、腹が立たないわけがないのに。


「だからこの件は、一応ランクS神族に入ってもらったうえで記録としては残すけれど、表沙汰にはせずうちとスペース家の間で隠蔽という形に収まると思うわ。もちろん、その分ランジとルームを始めとした関係者にはきつい罰を受けてもらうし、スペース家としてもそれなりの代償を支払ってもらうけれど」

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