第273話 居場所を掴む糸口は
夜、憑依中の天使が寝静まったあと。
オレは自室で1人、フィーネ奪還について考えていた。
――にしても、上位神鉱石にこんな使い方があったとは驚いたな。
まあ上位神鉱石はオレの神力とラテスの鉱石力の結晶なわけで。
言ってしまえばオレの分身とも言えなくもない。多分。
だから理屈的には――まああり得ない話じゃないけど。
フォルテいわく、この手法は精製された一般的な神鉱石でもできなくはないらしい。
しかし塊を飲ませるかしっかり埋め込む必要があり、さらに対象者に対して「契約」を行なう必要があるため、力のある相手であれば簡単に見破れてしまう。
一方で上位神鉱石は、オレの圧縮された特殊な神力で構成されているため契約の必要がなく、感づかれるリスクを最小限に力を行使できる、と話していた。
基本的に、契約がなければ誰の神力かまでは見分ける術がない。
ちなみになぜ共感ポイントを視覚に特化できたのかと聞いたところ、「ドリンクを飲ませたタイミングで、天使の魂に少しだけ仕掛けを施した」とのことだ。
――自分で言うのもなんだけど、これってけっこうヤバい能力だよな。
スパイし放題とか怖すぎるだろ……。
道徳心と良識だけは失わないように気をつけよう。うん。
……あれ、上位神鉱石の効力を発揮するには魂がなきゃダメなのかな?
例えば――
◇ ◇ ◇
翌日の夕方。
バースとの訓練を終えた後、オレは自室にエリアを呼んだ。
エリアとはフィーネ監禁疑惑が発覚した日に連絡先を交換し、いつでも連絡を取り合えるようにしてある。
「――それで、要件はなんです? すみませんが手短にお願いします。今必要以上にリエンカ家と接触するのは」
「突然お呼びしてすみません。ちょっと実験したいことがあるんです。この粉末を、スペース家の神殿の壁に振りかけてほしいんです」
「…………はい? え、ええと、これはいったい何ですか?」
エリアは困惑した様子で粉末の入った袋を受け取り、訝しげな目で見る。
突然こんな不審な頼みごとをされれば、当然の反応だろう。
上位神鉱石の粉末は、粉末自体に色はないが全体が淡く黄緑色に発光している。
「すみません、今は詳細は言えないんですが、できれば極力人目につかない、風で飛ばないところだと有難いです」
「……これはリエンカ夫人の了承を得てのことですか?」
「あー、いや……」
「ハルト殿は今やリエンカ家の子息なのですよ。うちに対してそんな勝手なことをして大丈夫なんですか? 怒られても知りませんよ」
「フォルテさんの公認、ということになると、それはそれで問題がありませんか?」
「そ、それはまあ、そうですけど……。では万が一スペース家とのトラブルに発展した場合、1人で責任を取る、ということで間違いないですか?」
――ぐ。
そうはっきりと言われると怖くなるな。
でも、ドリンクとして飲ませるのとは違って証拠も残りやすくなるし。
オレの力が関係している以上、フォルテさんに話せば却下されるかもしれない。
「それで間違いないです」
「――分かりました。極力問題が起こらないよう善処します」
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