第271話 何も知らない
こうして結託したオレとフォルテ、エリアは、急遽作戦会議を開くこととなった。
「エリアは、家のどこかに怪しい場所がないか調べてちょうだい。フィーネを監禁するのにわざわざ空間を展開する、というのは、可能性としてはあるけれど少しやりすぎな気がするの。表沙汰になったときにどうにも言い訳できないもの」
「……分かりました。たしかに家のどこかに監禁されているならば、見張りを置いているとか、何かしらの違和感はあるかもしれませんね」
フォルテによると、何かしらの証拠さえ掴めれば、ランクSの監査担当に調査申請ができるらしい。
「私はリエンカ領およびリエンカ家所有の星の調査を行ないます」
「あの、オレは――」
「悠斗くんにはのちほど指示するわ」
なるほど。念には念を、ということか。
フォルテは、実はエリアがすべてを知りながら動いている可能性もある、と思っているのだろう。
「この話は、ここにいる私と悠斗、それからエリアの秘密ということでいいわね」
「もちろんです。誰にも話さないと誓います」
「それからエリア、ほかにも何か得られそうな、解決に繋がりそうな情報があれば手に入れておいてちょうだい。もちろんすべてを私たちに話す必要はないわ。門外不出の事項もあるでしょうから」
「分かりました。2日後、バース殿との約束でまたこちらにお伺いする予定があります。その際にご報告します」
◇ ◇ ◇
2日後の午後。
オレとフォルテ、エリアは、再びフォルテの執務室へと集まった。
「――それで、どうだったかしら」
「私が普段出入りしている範囲には、特に変化はありませんでした。ただ、うちには父上と母上以外入ることのできない領域があちこちにありまして……」
「それはまあ、そうよね。うちだってそうだわ」
「……でも、神殿を守っている天使がいつもと違いまして。いつもの天使はどうしたのかと聞いてみたところ、別の任務があるからと交代を命じられた、と話していて」
めちゃくちゃ怪しいじゃねえか……。
でも立ち入り禁止の領域、か。
そんな場所に隠されたら、いったいどうやって――
「――一応、こちらがスペース家神殿の全間取り図です」
エリアは、テーブルに数枚の紙を出す。
そこには、一般公開されていない、スペース家の者しか知らない神殿の全てが記されていた。
「……こんなもの、よそに渡して大丈夫なの?」
「本当はダメですが……私にできることはこれくらいしかありませんので。ただ、他言無用でお願いします」
「それはもちろん」
「このグレーの部分は一般公開されていない領域、黒く塗られている部分は父上と母上以外は入ることのできない領域です。黒い部分に関しては、私も何があるのか知らされていません」
――そういえば、リエンカ家の神殿内にも行ったことない場所たくさんあるな。
決まったルート以外を通ろうと思ったことがなくて気づかなかったけど、ここにもこうした立ち入り禁止の領域があるのか……。
そこにはきっと、オレの知らない世界が広がっているのだろう。
そう思うと、何となくぞわっと恐怖心が湧きあがってくる。
ここはただの貴族の屋敷ではない。
生と死を司る神様の神殿なのだ。
2人の話を聞きながら、オレはリエンカ家のことを何も知らないのだと改めて思い知らされた。
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