第267話 フィーネの失踪

 夜、ラテスの家に帰っても、フィーネはいなかった。


「ハク、フィーネ見てないか?」

「いえ。ご一緒ではなかったんですか?」

「ちょっといろいろあって……」


 スキル【探索】で探してみたが、フィーネの姿は見つけられなかった。

 ということは、まだ神界にいるってことか?

 まあ意図的に隠れられれば、オレには見つけられないだろうけど。


「……ケンカでもしましたか?」

「まあ。謝ろうと思ったんだけど、見つからないんじゃどうにも」

「ご自宅に戻られたのでは?」

「――はあ。そうかもな。明日まで待って帰ってこなかったら、リエンカ家とリエンカ領内を探してみるよ。金はあるわけだし寝る場所は確保してるだろ」

「そうですね。見つからないようなら、僕も一緒に探します」

「ありがとう」


 この日、オレはハクと2人で夕食を取り、そのまま眠りについた。


 ◇ ◇ ◇


「――やっぱ帰ってきてない、か」


 翌日。

 フィーネはまだ帰っていなかった。


 ――はあ。

 まあたしかにオレも悪かった。悪かったけど。

 でも失踪することないだろ……。

 子どもかよまったく!


「ハク、ちょっとリエンカ家に戻ってないか見てくるよ」

「分かりました」


 オレはリエンカ家へ赴き、すれ違った天使たちに聞いてみる。

 しかし、フィーネの居場所を知る者はいなかった。

 フィーネの側仕えをしている天使にも声をかけたが、昨日から戻っていないらしい。

 フォルテもバースも知らなかった。


「――リエンカ領内にはいないわね。どこか別の領地へ行ったか、ラテスか、もしくはほかの星にいるのじゃないかしら……」

「そう、ですか……。あいつまさか、スペース家に文句言いに乗り込んだとか、そういうんじゃないですよね?」

「まさか。あの子も一応、名門家の教育を受けた令嬢よ。さすがにそこまでのことはしないと思うわ」

「そうですか……。分かりました。ありがとうございます」


 ――とすると。

 やっぱりラテスにいる可能性が高いのか?

 いやでも、この状況でラテスに隠れようなんて思うか?

 前回とは事情が違うし、そんなことをする意図が分からなすぎる。


 万が一ほかの星に逃げられたら、それは探しようがないな……。

 フィーネが管理してる星でオレが知ってるのは、このラテスだけだ。


 …………。

 フォルテさんはさすがにないって言ってたけど――


 ――と、その時。

 廊下の先にエリアの姿が見えた。


「――あ」

「ハルト殿。またお会いしましたね。れいの件、考えてくださいました?」

「あー、ええと……申し訳ありませんが、その件は承諾しかねます」

「……そうですか。まあさすがにそこまで愚かではないですよね」


 エリアは残念そうにため息をつく。

 こいつ! せめて心の内に秘めとけよ!!!


「――あの、それよりフィーネ見ませんでした?」

「……はい? フィーネ嬢ですか? 今日は見てませんけど」

「そうですか。ちなみに昨日の夜は……」

「パーティー後は見てませんね。昨日はリエンカ家へは来ていませんし。何かあったんですか?」

「……その、昨日ちょっとケンカしまして。そのあと飛び出していったっきり帰ってきてないんですよ」

「……それでなぜ私が知ってると思うんですか。残念ですが、私とフィーネ嬢はケンカ後の行き先にしてもらえるほど親しくありませんよ」

「あはは、ですよね」

「何ですか、ケンカ売ってるんですか?」


 ケンカの原因がおまえだからだよ!!!

 ……とはさすがに言えない、よな。はあ。

 いったいどうしたものか。

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