第265話 騙されたオレも悪いけど!

 パーティー会場へ戻ると、フィーネがハッとした様子でこちらへと向かってきた。


「ちょっとどこ行ってたのよ!」

「悪い、緊張して疲れたから外の空気を吸いに行ってた」

「……本当? どうしてエリア様が一緒なのかしら」

「廊下に出たところで出くわしたんだよ」

「……そう。ならいいけど」


 プラネたちと楽しく話してたし、むしろ邪魔かと思ったんだが……。

 なんか悪いことしたな。


 このあとは、スペース家当主からの挨拶やもてなし、ゲストによるショーやイベントなどが行なわれ、パーティーは解散となった。


「スペース家の演出、すごかったな。突然異空間に転移させられたときは何事かと思ったよ。さすが空間を司る一族だな」

「そうね。イベントに強い力よね。それもあって、スペース家は横のつながりも強いし多いの。彼らがいるとパーティーが盛り上がるから」


 神の力ってそんなパーティーとかでほいほい使われるもんなのか、と正直戸惑いもあるが、まあ神族にとっては普通のことなのかもしれない。

 誰に迷惑かけるわけでもないしな。

 むしろそれでみんなが楽しめるならいいことか。


「あー、そうだフィーネ、ちょっと真剣な話があるんだけど、これからフォルテさんと3人で話せるかな」

「……べつに私は構わないけど、どうしたのよ。エリア様に何か言われた?」

「あとで全部話すよ」

「分かったわ。ならうちに寄っていくわよ」


 ◇ ◇ ◇


「――と言われまして」


 オレはフィーネとともにリエンカ家へ向かい、フォルテに先ほどのエリアの話を聞いてもらうことにした。

 結論はどうせ変わらないし、オレ1人で考えるより何か案が浮かべば、と思ったのだ。しかし。


「…………。それで、悠斗くんは何て答えたのかしら」

「フォルテさんやバースさんと相談したい、と。オレはリエンカ家が好きですし、追い出されない限りはこの家の一員でいたいと思ってます。でも、何か提案できないかなと」

「なるほどね。……正直に言うけれど、その提案はうちにとって百害あって一利なしの提案よね。よくもまあそんなことが言えたものだわ。しかもうちを通さず悠斗くんに直接言うなんて、あまりに失礼じゃないかしら」


 ――え。

 な、なんかフォルテさんめちゃくちゃ怒ってる?


「いや、その……多分エリア様としては、いろいろ考えた結果で」

「悠斗くん、あなた元人族の転生者なら丸め込めるかもって馬鹿にされたのよ?」

「――え」

「とにかく、あなたにリエンカ家の一員としての自覚があるのなら、その件はきっちりとお断りしてちょうだい。代案は出さなくて結構よ」

「わ、分かりました……すみません……」


「本っっっっ当、許しがたい提案ね。うちのことも、神乃悠斗のことも、私のことも馬鹿にしてるとしか思えないっ!」


 フィーネは黙って下を向いていたかと思えば、突然バンッとテーブルを叩いて立ち上がり、怒りに震えながら気持ちをぶちまける。


「神乃悠斗」

「え、は、はい」

「君がスペース家に入った時点で、私は君とは縁を切るわ。もちろんラテスも没収よ。あの星はうちの所有物だもの。もし向こうにつくことを考えてるんなら、それを覚悟のうえで決めることね」

「な――っ! おまえそれはちょっと卑怯じゃないか? べつにオレはスペース家に入る気なんて微塵もないけど。でもそんなんただの脅迫じゃねえか」

「だったら何? 私はリエンカ家の娘よ。家を守ろうとするのは当然じゃない。あんなヤツの思惑通りになんて絶対ならないわ」

「…………家を守るためなら何でもするなら、エリア様と一緒だな。おまえはそういうことはしないと思ってた」

「たった数年の付き合いでしかない転生者が知ったようなこと言わないで。君に何が分かるっていうのよっ」

「悪かったな生まれながらの名門神族様じゃなくて!」


 ああ、違う。

 こんなことが言いたいんじゃないのに。


「ちょっと2人ともやめなさい。あなたたちが喧嘩してどうするの」

「…………はあ。しばらく1人にして」


 フィーネはそれだけ言って、転移でその場から去ってしまった。

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