第264話 こいつ実はいいヤツなのか?

「……これは私の推測ですが、ハルト殿の能力は、リエンカ家でよりもスペース家での方が活かされるんじゃないでしょうか?」

「――え」

「リエンカ家は生と死を司る一族で、否が応でも命を選別しなくてはならない。転生者であるあなたには荷が重すぎるのではと思うんです。だってあなたは本来、選別される側だったわけですから」


 ――――ぐ。

 正論すぎて何も言えねえ!

 そういえば、フォルテさんもフィーネも似たようなこと言ってたな。


「うちは空間を司る一族ですから、空間の管理と創造が主な仕事です。人族は元々想像力が豊かですし、神様活動へのコンサル能力を見ても、どう考えても――」

「――つまり何が言いたいんです?」

「リエンカ家ではなく、うちの養子になりませんか? ハルト殿がうちの一員になってくれれば、フィーネ嬢との結婚も大歓迎なんですけど」

「はあっ!?」

「あのあと、私なりに考えたんです。あなたがいた地球という星の日本という国についても調べました。調べて、私の提案はハルト殿には到底受け入れられないことだと気づきました」


 こ、こいつ――。

 悪意がないどころか実はけっこう良いヤツなのでは!?

 逆に困る!!!


「あなたがいた場所では、子どもを作るというのは愛する人との大事な行為なんですよね。私の発言は、神族側の考えとうちの事情を押しつけるとても失礼なものだったと反省しました。申し訳ありません」

「い、いや、まあ考え方が違うのは仕方がない、というか……むしろここではオレが異端なわけで……」


 まあだからって受け入れるわけにはいかないけど。

 それにフィーネだって、それをすんなり受け入れるような性格とは思えない。


「私個人としては、あなたのような強い思いありきの婚姻の邪魔をしたくはありません。でもスペース家としては、やはりフィーネ嬢――というかリエンカ家との関係性は捨てがたい。そこで先ほどの提案です。リンネ嬢がいる以上、フィーネ嬢がうちに嫁ぐ形であっても後継ぎに困ることはないでしょう?」


 ――あ、そうだった。

 こいつリンネさんの婚約のこと知らないのか……。


「あー、そこまでのことはオレはちょっと。でも、エリア様がオレやフィーネのことも考えてくださっていることは分かりました。ありがとうございます。一度持ち帰って話し合ってもいいでしょうか」

「一度、あなただけの意見を聞かせてほしいです」


 正直、オレはリエンカ家を離れるつもりはない。

 だから今回の提案については断るしかない。

 そもそもリンネさんの件もあるし!


 でも、こいつにはこいつの事情があるのも分かる。

 まだ若いのに家のために頑張ってるのをただ断るってのもな。

 こちらからも何か代替案を出せればいいんだが……。

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