第261話 聞けるわけがない!
フォルテに言われたことを考えながら、オレはラテスの神殿へと帰宅した。
「おかえりなさいっ。ちょうど晩ごはんができたところですっ」
「ただいまハク。いつもありがとな。今日のおかずはなんだ?」
「煮込みハンバーグを作りました」
「おお、それは楽しみだ」
ダイニングスペースへ向かうと、そこには既にフィーネがいた。
「おかえり神乃悠斗」
「おう、ただいま。うお、トマトソース系か。めちゃくちゃうまそう!」
「えへへ。今日ラテスの森の偵察に行ったときに、フォレスさんがおいしいトマトをたくさん分けてくださったんです」
「へえ、今度お礼言っておかなきゃな」
オレは手洗いうがいをすませ、早速席に着く。
「それじゃ、いただきます!」
「いただきますっ」
ハンバーグにナイフを入れると、肉汁が程よくじゅわっと染み出てくる。
しっかりと煮込まれたトマトとハンバーグから流れる肉汁が合わさって、食べる前から涎が出そうだ。
「――うお、うっま!!!」
生のトマトから作っているため、爽やかな甘さとフルーティーさが際立っている。
それでいてしっかりと煮込まれているため水っぽさはなく、トマトが持つおいしさがぎゅっと凝縮されていて――
なんかもう、こいつプロとして料理屋でもやったらいいんじゃないか?
思わずそう思ってしまいそうなほどにうまい。
「ハクの料理、本当に上達したわよね。初めてここで食事をともにした時もおいしいって思ったけど。でも今はそれの比じゃないわ」
「そ、そんなに褒められると照れます……。でも、ありがとうございます」
「――ああ、そうだ。そういえば、エリア様から君にパーティーへのお誘いが来てたわ。あれ、本気だったのね……。どうする?」
「お、おう。そうなのか。オレはおまえらの決定に従うよ」
「母様に聞いたら、お任せするわ、ですって。断ってもしつこそうだし、そろそろ思い切って行ってみる?」
「あー、そうだな。おまえも行くなら」
「もちろん私も一緒よ。君1人で行かせるほど薄情じゃないわ」
フィーネは、エリアと話した諸々のことは恐らく知らない。
聞いたらどう思うんだろう?
考えてみればフィーネだって生まれながらの神族なわけで。
こいつにとっては、子どもを作るくらいどうでもいいことなのかもしれない。
……そうだったらどうしよう?
「――あ、あの、フィーネ」
「うん?」
「いや、その――」
いや待て。
よく考えたら何て切り出すつもりだ?
そんな、「おまえエリア様との間に子ども作れって言われたらどう思う?」なんて聞けるわけがない。
「あー、いや、ごめん。やっぱいいや」
「なによ気になるじゃない。そこまで言ったなら言いなさいよっ」
「ま、まあおいおい。ちょっと考えさせてくれ」
「はあ? ――まあいいけど。変な子ね」
まるで可哀想な子を見るような目を向けられてしまった。
まあうん。今回はオレが悪い。
くっそ。
ただでさえ恋愛経験乏しくて必死なのに!
最初からこんなややこしい状況どうしたらいいんだあああああああ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます