第260話 頭では分かってるつもりだけど。
「実のところ、私としては悠斗くんがフィーネと結ばれてくれるととても有難いと思っているの」
「――え? でもオレじゃ家という後ろ盾も何もないし、転生者だし、どちらかというと厳しいかなと思ってたんですが」
オレみたいなぽっと出のヤツがリエンカ家に入ったこと自体、名門神族としては隙を作ったようなものだと思っている。
ましてやフィーネと結ばれて当主になるなんて、よほど有無を言わせない実力をつけないと――
「悠斗くんは自分の価値をもっと自覚すべきよ。こんな言い方をすると良くないけれど、あなたは他にない特別な力を持っているし、家のこともないから権力争いも起こらない。そもそもあなたの実力があれば、いずれ家の力なんて必要なくなるわ」
「あ、ありがとうございます」
まあその特別な力のせいで、あの謎の上位神鉱石が爆誕したわけだけど!
今のところ言われたとおり放置してるけど、あれどうなるんだろうな?
どうか有益な使い方ができる代物でありますように……。
「バースもだいたいは同じ意見だけれど、彼はスペース家との繋がりもあるに越したことはないとは思ってるのよねえ」
「まあ、そうですよね……」
たしか以前、「スペース家が力を持っているのもまた事実だ。だからハルトも、リエンカ家の一員として、そしてフィーネの伴侶候補として、彼との付き合い方をしっかりと判断していってほしい」と言っていた。
オレは既にリエンカ家の一員なわけだから、とすると――
「もしかして、バースさんはフィーネとエリアの間に子どもを作ることに賛成、ということでしょうか……」
「恐らくは。もちろん今聞いたばかりだし、実際バースと話したわけではないけれど。ただこれは、あなたにとってはとても認めがたいことなのでしょうけど、神族としてはいたって普通の意見なの。だから悪く思わないでちょうだいね。バースも、あなたのこと本当に大事に思っているのよ」
「それはもちろん。でも――」
心がついていかない。
フィーネとエリアの間に生まれた子を愛せる自信がない。
オレはそんなできた人間じゃないし、嫉妬心も独占欲も人並みにある。
エリアのことも子どものことも、きっと疎ましく思ってしまう。
でも、バースの言うことも理解はできる。
いくらオレに特殊な力があっても、スペース家と繋がるメリットをカバーできるわけではないし、オレがスペース家に対しての抑止力になるわけでもない。
オレを既に手に入れている今、そしてフィーネが嫁ぐわけにはいかない今、エリアからの申し出を断る理由なんてない。
――エリア様、優秀だっていうしな。
それに真面目で家のことを最優先に考える、名門神族の鏡のようなヤツだし。
「……とは言っても、まだクリエの話も完全にまとまったわけではないし、あなたが当主になる必要が出てくるのは少なくても数千年は先の話よ。だから今すぐに答えを出す必要はまったくないわ。あなたはまだ、神族になって年数も浅いのだし」
「……はい。じっくり考えてみます」
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