第262話 スペース家主催のパーティーへ

 エリアに誘われて、オレはスペース家主催のパーティーへ参加することになった。

 その当日。

 会場であるスペース家へと向かうと、そこにはリエンカ家に負けず劣らずな広大な敷地、それから立派な神殿があった。


「すげえな。さすが3大名門神族と言われてるだけある」

「そうね。……気をつけなさいよ。空間を司るスペース家があなたの力を知れば、喉から手が出るほどほしくなるでしょうから」

「いやいや狙われてんのはおまえだろ……人の心配してる場合か?」

「エリア様はべつに私に惚れてるわけじゃないわ。家のためにうちと繋がりたいだけ。だから君の力が知られれば、私への興味なんて一瞬で失せるわよ」


 フィーネは呆れた様子でため息をつく。

 えっと、それはどういう意味だ?

 つまりオレを欲してBL展開まっしぐら――ということ?

 冗談じゃないぞ!?


「と、とにかく余計なことを言わなきゃいいんだよな。大丈夫、前世のおかげで意見を押し殺すのは得意だ」

「…………それ全然かっこよくないわ。助かるけど」

「うるせえ! 世の中かっこいいだけじゃ生きていけないんだよっ」


 オレとフィーネがそんなくだらない会話を繰り広げていると。

 それに気づいた執事らしき格好をした天使が近づいてきた。

 天使は頭の上に金色の輪っかがあるため、分かりやすくて非常に助かる。


「フィーネ・リエンカ様とハルト・リエンカ様ですね。エリア様よりお伺いしております。どうぞこちらへ」


 執事天使に案内してもらい、パーティー会場へと足を踏み入れる。

 会場内では、既に多くの神族たちが談笑を交わしていた。


「エリア様はあちらに」

「ありがとう。行くわよ、か――悠斗」

「お、おう」


 突然呼び捨てにされ、うっかりドキッとしてしまう。

 いやまあ普段からフルネーム呼び捨てっていう謎の呼び方されてるけど。

 でも下の名前だけだとやっぱり違う。

 なんかこう――まるで本物のカップルみたいだ。


「――あ、フィーネ嬢! それからハルト殿も! 来てくださったんですね」


 途中でエリアがこちらに気づき、会話を止めてこちらへ向かってきた。

 よかったんだろうか?


「今日はお招きありがとうございます、エリア様」

「いえそんな。こちらこそ来てくださってありがとうございます。ハルト殿も、ありがとうございます。今日は楽しんでいってくださいね。おいしい食事もたくさん用意していますから。よければ後ほどゆっくりお話しましょう」

「――え、ええ」


 エリアは、そこまで話すと軽く会釈して去っていった。


「ちょっと、君も何か一言くらい言いなさいよっ」

「悪い、入るタイミングが分からなくて」

「まったく本当、変なところで気が弱いんだから……」


 ――ぐ。

 返す言葉もないです……。

 でもちょっとくらいこっちに振ってくれてもいいのでは!?


「これから知り合いへの挨拶まわりに行くけど、君はどうする?」

「せっかくだし、行くよ」


 1人でいて話しかけられても厄介だしな!

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