第11章 ランクA それぞれの責務と守るもの

第257話 噂広まりすぎだろおおおおお!

 今日は授業と訓練の日。

 一通りやるべきことを終え、ラテスへ戻ろうとしていたのだが。


「おや、ハルト殿ではないですか」


 廊下でふいに誰かに声をかけられ振り返ると、そこにはエリア・スペースがいた。

 以前も一度廊下で出くわした、空間を司る一族のご子息だ。


「え、ええと……こんにちはエリア様」

「あはは、そんな身構えなくても大丈夫ですよ。同じ名門家じゃないですか。今日はお1人ですか?」

「ええ、まあ。エリア様は、バースさんに会いに?」

「いえ、今日は仕事絡みでリエンカ夫人と話があって。でももう終わりました。ハルト殿は用事はお済みで?」


 ――ええと。これは何て言うのが正解なんだ?

 適当に逃げるか?

 でも追及されたら面倒だしな……。


「……そろそろ帰ろうかな、と」

「そうでしたか。……そうだ。もしよろしければ、少しお話しませんか? 同じ名門神族同士、交流を深めておきたいですし」

「え――」

「何か用事でも?」

「あ、いえ。そうですね。せっかくですし、フィーネも呼びますか?」

「いえ。今日はあなたとお話したいと思いまして」


 えええ……。

 前回会ったとき何となく思ってたけど、こいつ結構ぐいぐいくるタイプだな。

 というかオレは話すことなんてないんだが!?


「……す、少しお待ちいただいても? すぐ戻ります」

「ええ、構いませんよ」


 オレは急いでフォルテの元へ行き、状況を説明する。


「あら、会ったのね。応接室が空いてるからそこを使ってちょうだい」

「――え。あの、2人で話しても大丈夫でしょうか?」

「ラテスに関することと、あなたの能力に関することは話してはだめよ。私に口止めされてると言えばそれ以上は聞いてこないと思うわ。どこの家にだって、よそに言えない秘密の1つや2つはあるものだから」


 ま、まじか。

 そんなふうに言われるとなんか怖いな……。


「ありがとうございます……」


 フォルテと分かれ、エリアを応接室へと案内する。

 しばらくすると、天使がお茶を持ってきてくれた。


「ハルト殿は転生者なのですよね。こちらでの生活はいかがですか?」

「おかげさまでだいぶ慣れました。でもまだまだ未熟さを痛感する毎日です」

「あはは、人族と神族ではだいぶ違いますからね。でも短期間でランクAにまで上り詰めるなんて、フィーネ嬢はとても素晴らしい救済召喚をしましたね」


 手違いだけどな!!!


「とんでもないです。周囲のフォローあってこそですよ。オレだけではどうすることもできなかったです。だから、リエンカ家には本当に感謝してます」

「ご関係も良好そうで何よりです。いずれフィーネ嬢とご婚約なされる予定とか」


 ――うん?

 え、いやオレが勝手に言ってるだけでそんな話はなかったはずだが!?

 なんだこれ。ブラフか???


 チラッとエリアを見ると、笑顔の奥から鋭く突き刺さるようなまなざしを感じる。

 こ、こええ……。


「現状、オレが勝手に好意を抱いてるだけですよ。いったいどこでその話を?」

「風の噂で、街中でフィーネ嬢に告白したと耳にしまして。てっきり話が進んでいて、何か意味があって行なったことなのかと」

「…………ええと、すみません。ただ勢いで言ってしまっただけでして。それ以上の意味は本当にないんです」

「――え。い、勢い、ですか」


 というか噂広まりすぎだろ!!!

 恥ずかしくて死にたい!!!!!

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