第253話 フォルテさんの知名度すげえ……
オレはハク、フィーネ、フォルテ、クリエとともに、まずは森精霊たちが暮らすラテスの森の周辺へと転移する。
「【エリアカプセル】を使わずに創ったと聞いてはいたけれど、実際に見るととても興味を惹かれるわね。植物も、既存のもののようで違うようだし……」
「建築資材として使えるようにしたり、食用の果実が採れるようにしたりと改変を重ねたので、その過程で独自の進化を遂げたのかもしれないですね」
「なぜそんなことを……?」
「いやー、なんというか、あはは」
さすがにこの場でフィーネの実の親に向かって「フィーネが何も教えてくれなかったからです」とは言えない。
フィーネはというと、明後日の方向を見て素知らぬ顔をしていた。
まったく本当にどうしようもないな!
しばらく行くと、オレに気づいた精霊たちが寄って――こようとしたが。
そこでふと動きを止めた。
そして何やらひそひそと話をし始める。
「――フォレス、ハルト様と一緒におられるのって」
「ええ、まさか! 名門家の神族様が我々の目の前に現れるなんて、そんなことあるわけ……。ねえシルヴァ」
「で、でも、本で見たフォルテ様とそっくりですわね……」
長老の孫であるアスタ、食糧管理担当のフォレス、シルヴァ商店の店主シルヴァは、オレに状況を説明しろと言わんばかりの視線を向けてくる。
――まさか精霊たちがフォルテさんを知ってるとは。
オレは改めて、名門神族の力の大きさを思い知る。
「フォルテさん、精霊たちに状況を説明しても?」
「私は構わないけれど、精霊たちを怯えさせてしまわないかしら?」
「……少しここで待っててもらえますか? 話をしてきます」
「ええ、分かったわ」
オレは単身で精霊たちのもとへ行き、すべて説明した。
フィーネが実は名門神族リエンカ家の令嬢であること。
オレとハクもその一員になったこと。
そしてあそこに待機しているのが、リエンカ家の婦人と長女であること。
「そ、そうだったんですか。私はフィーネ様に無礼を働いていなかったでしょうか」
アスタの言葉を皮切りに、フォレスとシルヴァも不安そうに顔を見合わせる。
「ああ、ええと……そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。クリエさん――リエンカ家の長女なんですけど、彼女がラテスを気に入って探索したいっていうので、差支えなければグノー村を散策できたらと思って」
「で、でも今は精霊祭でも何でもないですし、何の用意もなくて……」
オレはアスタと交渉し続け、どうにかグノー村散策の許可を得た。
アスタは、フォレスとシルヴァに至急ほかの精霊にも連絡をと指示を出す。
「ひ、ひとまずうちにいらっしゃいませんか? 差支えなければ長老から挨拶だけでも――ああでも、名門神族様をうちにお呼びするなんて許されるんでしょうか!? というかあんなところでお待たせして――す、すみません、こんなことは初めてで……」
アスタは混乱した様子で慌てふためいている。
その様子を見て何かを察したのか、フィーネがやってきた。
「久しぶりね。突然押しかけてごめんなさい。姉様がラテスを観光したいっていうものだから」
「えっ、い、いえそんな! その、今までの非礼、どうかお許しください。まさか名門神族様だったとはつゆ知らず……」
「べつに構わないわ。気にしてないし、黙ってたのは私だし。母様も姉様も、そんな細かいことを気にするタイプじゃないから安心なさい」
「お、恐れ入ります」
――ああ本当。
こういう場面に出くわすといつも思うけど。
オレ、よく名門神族という立場になれたな……。
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